もしもこの地球が動いているとしたら?|アニメ『チ。-地球の運動について-』から学ぶ宇宙と物理
2025/6/4
アニメ『チ。』から考える「宇宙」と「物理」の始まり
Netflixなどで話題になったアニメ『チ。―地球の運動について―』。
中世ヨーロッパを舞台に、命がけで「地動説」を広めようとする人々を描いたこの作品、実は物理好きとしては見逃せない“学問の火種”がたくさん詰まっています。
今回はこの『チ。』を入り口に、物理の世界がどのように「宇宙」と結びついていったか、少しだけまじめに考えてみます。
地球が動いていると「信じること」が命がけだった時代
『チ。』では、地球が動いている(=地動説)という考えを証明しようとする若者たちが、宗教や体制から激しい弾圧を受けます。
今となっては「地球が太陽の周りを回っている」なんて当たり前。
でも、当時の常識では「天が動き、地は動かない」が正義でした。
けれどここで重要なのは、この地動説を“物語としてではなく、数式や観測で証明しよう”とする動きが、物理学の夜明けに深く関わっているということです。
宇宙は「見る」から「測る」へ。そして「考える」へ。
地動説は、観察と計算の学問である天文学から生まれましたが、やがて運動や力の学問である「物理学」と手を結ぶようになります。
たとえば:
・「なぜ天体は円ではなく楕円軌道を描くのか?」(ケプラーの法則)
・「なぜ惑星は太陽の引力に引きつけられながらも落ちないのか?」(ニュートンの万有引力)
・「なぜ地球は自転しているとわかるのか?」(遠心力・コリオリの力)
これらはすべて、「物理法則を使って宇宙を説明する」という視点から生まれた問いです。
つまり、物理が宇宙の見方を変えたのです。
物理は「宇宙の使い方ガイド」かもしれない
授業でもたまに話しますが、スペースシャトルの発射地点が赤道付近にあるのも、実は物理の知識がなければ理解できません。
赤道付近では地球の自転速度が最も速く、その遠心力を利用することでロケットはより少ない燃料で軌道に乗れるのです。
「え、そんなことまで計算してるの?」と思うかもしれませんが、現代の宇宙開発は物理学そのものの応用です。
つまり、宇宙を“使いこなす”には物理が必要なんですね。
『チ。』が教えてくれる、「疑うこと」の大切さ
最後に、『チ。』の中でもっとも心を動かされた言葉を紹介させてください。
「この目で見た世界を、どうして信じちゃいけないんですか?」
物理って、公式や数字ばかりの学問に見えがちですが、本質は“目の前の現象を疑い、考え、説明しようとすること”なんです。
それはまさに、『チ。』が描く地動説の戦いと同じ構造。
まとめ
「物理」は、自然現象を“自分で理解する”ための言語です。
宇宙や地球の話は、なんとなく地学っぽいと思われがちですが、そこに「なぜ?」をぶつけて式で説明しようとするのが物理の役割です。
『チ。』は、その出発点を思い出させてくれるアニメでした。
もしこの記事で少しでも物理に親しみが持てたら、次の授業では「なんで?」を一緒に見つけていきましょう。
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