間違えた問題を「言語化」させてみたリアルな感想
2025/6/11
はじめに:「わかったつもり」が一番怖い
算数や数学の指導をしていると、「どうして間違えたの?」と聞いても、子どもが答えられないことがあります。
「うーん、なんか違った」
「途中まで合ってたんだけど…」
「ケアレスミスです」
このような“モヤッとした答え”のまま放置していると、同じミスを何度も繰り返します。
そこで私は、生徒に「間違えた理由を“言葉で説明する”こと」を習慣化させてみました。
数週間続けてみて感じたのは、点数が上がる以上に、“考え方そのもの”が育っていく感覚でした。
今回はその指導内容と、リアルな変化をご紹介します。
指導した生徒について
小学6年生(女子)
中学受験に向けて個別指導中
演習量は多いが、復習の仕方が浅く「間違いの質」を意識していなかった
模試では「あと一歩で正解」な問題が多かったタイプ
指導のねらい:なぜ“言語化”が大事なのか?
間違えた原因が曖昧なままだと、子どもは「なんとなく直した気分」になって、また同じミスをするようになります。
一方、「自分の言葉で説明する」ことで、
自分の思考のどこがズレていたか
問題文をどう誤読していたか
解法のどこに“無意識の選択”があったか
などがクリアになります。
つまり、“解き直し”ではなく“思考の修正”ができるようになるのです。
実際にやったこと
✅ 課題:間違えた問題の原因を「1〜2行で言葉にする」
ノートの余白に書いてもらう or 口頭で答えてもらう
「どこで間違えた?」「なぜそれを選んだ?」とこちらが質問
「思い込み」「図を書かなかった」「式が2つ必要だった」など、自分なりの表現でOK
最初は言葉にするのを嫌がることもありましたが、「うまく説明できなくていいよ」「自分なりでいいよ」と伝えると、少しずつ口を開くようになりました。
1〜2週間後の変化
最初は「たぶんこうかな…」と自信なさげだったのが、徐々に“考えの道筋”を話せるように
自分の間違いを「図を書いてなかったからだ」と分析できる場面が増加
間違い直しがただの“正解の写し”ではなく、考える時間に変わった
この段階で、「復習ノートの質」がガラッと変わります。
3週間後の変化:思考のクセに気づき始める
「またここで“早とちり”してた」と、生徒自身がミスの傾向に気づく
1問解くたびに「この考え方でよかったかな?」と自分に問い返すように
模試の見直しでも、「何を間違えたか」だけでなく「なぜそう考えたか」まで書くように
この頃には、私が何も言わなくても、間違いを“素材”として扱えるようになっていました。
先生として実感したこと
「間違いを言語化する」という行為は、思考の可視化そのもの
ノートや問題集は、“自分のクセ”が現れる場所に変わる
正答率以上に、「考え方の質」に手を入れることができる
特に感じたのは、「わかったふり」で終わらせない指導の重要性です。
保護者の方へのアドバイス
ご家庭でも簡単に取り入れられます。
例えば、間違えた問題に対して、
「どこで間違えたと思う?」
「次はどうすれば防げそう?」
「何がヒントだった?」
と軽く聞くだけでも十分です。
完璧な説明を求める必要はありません。
“自分の頭で説明しようとする”こと自体に価値があります。
最後に:正解よりも、思考の再現性
受験では、正解できるかどうかももちろん大事ですが、実力が本当に伸びるのは、自分の考え方に気づき、修正できるようになったときです。
言語化はその第一歩。
少しずつでいいので、ぜひ取り入れてみてください。
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