【中学受験算数】 過去問演習で成績を伸ばすための基本戦略
受験勉強の中でも、過去問演習は非常に重要なステップです。実際の試験形式や出題傾向を把握し、時間配分や解答力を養うことができるため、効率的な学習には欠かせません。しかし、ただ闇雲に過去問を解くだけでは効果が薄くなるため、効果的に活用するためには注意すべきポイントがいくつかあります。今回はごく基本的な事柄ではありますが、中学受験算数の過去問演習を効果的に行う際のポイントと注意点をまとめました。
1. 制限時間を守る、でも最後まで解く
:過去問演習では本番の試験と同じ制限時間を守ることが大切です。時間配分の感覚を身につけることで、本番でも焦らずに解けるようになります。ただし、時間内に解けなかった問題があっても途中で投げ出すのは避けましょう。最後まで解くことで、自分の弱点やどの部分に時間がかかっているかを客観的に把握することができますし、何より経験を積むことができます。
2. 解答後は必ず見直しと分析をする
:問題を解き終えたら、すぐに答え合わせをし、間違えた問題や時間がかかった問題を確認しましょう。なぜ間違えたのか、どの知識が不足しているのかを分析し、同じミスを繰り返さないように対策を立てることが重要です。
また、分析の中で自分が「もう少しで解けそうな問題や単元」に注目することも重要です。特に、そうした「もう少しで解けそうな問題や単元」が頻繁に出てくるときには、徹底して「解き直し」を行い、類題を解くことで、自分が「解ける問題」に変えていくと点数を引き上げていくことにつながります。算数の場合、「見直し」はただ見直せばよいというわけではなく、時には「解き直し」を行い自分自身で実際に「解く」経験を積むことが重要だということはしっかり認識しておきましょう。
3. 本番を想定した環境で取り組む
:過去問を解く際は、できるだけ試験当日の環境に近い状態で行うことが望ましいです。静かな場所で、スマホや参考書などの余計なものを遠ざけて取り組むことで、集中力が高まり、実力を正確に把握できます。1で紹介した制限時間を守るということとあわせて、本番を想定して取り組むことを意識しましょう。
【例外的に時間を測らない・全問やらないケース】
過去問は、本来は制限時間を守り、本番を想定して取り組むべきものですが、例外的に以下のような場合にはその必要はありません。
① 目指す学校が自分の実力と比べて明らかに格上のチャレンジ校であり、まずは序盤の計算や小問など、基本的な問題に集中して繰り返し解きたい場合
② 上記2で示したような、自分の強化したい問題や単元に集中して取り組みたい場合
こうした場合は、自分の強化したい単元や設問のみ繰り返し演習するなどの対策が効果的なため、必ずしも最初から最後まで通して解く必要はありません。また、制限時間にこだわらず、自分の理解が深まるまでじっくり取り組むということが必要なこともあります。
4. 継続して複数年分を解くこと
:1回だけの過去問演習では、その学校の出題傾向を掴むのは難しいです。できるだけ複数年分を連続して解くことで、出題パターンや苦手分野が浮き彫りになります。特に重要な単元は繰り返し演習し、確実に得点できるようにしましょう。志望校が複数ある場合には、少なくとも3年分程度は連続して同じ学校の過去問を解いた方が出題傾向をつかむという点では効果的です。
◎ 志望校A(2025年)→A(2024年)→A(2023年)→志望校B(2025年)
△ 志望校A(2025年)→志望校B(2025年)→志望校C(2025年)
ただし、学校によっては2年分で十分な学校(出題傾向がほぼ固定であったり、自分の中の優先順位が低い学校など)もあれば、5年分以上解いた方が良い学校(年度ごとの出題傾向の差が大きかったり、自分の中の優先順位が高い学校など)もあります。それぞれの学校の特徴や自分の志望順位、残された時間などをよく検討してアレンジするのが良いでしょう。また、教わっている先生がいれば、先生に相談するのも良いでしょう。
5. 志望校ごとの出題特性をつかむ
:上記4と内容的には重なりますが、意外におろそかになっている場合が少なくありません。「過去問を解いた」ということに満足してしまい、その学校の過去問で「どのような形式の問題が出題されているか」、「どういった単元から問題が出題されているか」といった傾向をつかまないままというのは望ましくありません。自分で出題傾向をつかむことが難しい場合には、教わっている先生から自分が特に力を入れた方が良い問題や単元についてアドバイスをもらうのも良いかと思います。
6. 得点を伸ばすためにどこを強化すべきか「目的意識」をはっきり持つ
:上記2の内容と重なりますが、「自分が目標として定めるべき問題と単元」を意識しましょう。序盤の計算問題で必ず間違えてしまうという場合には、自分の計算のどこに問題があるかを把握し、それを改善する対策を行いましょう。(例:小数と分数の変換に問題がある / 虫食い算の基本的な解法が身についていない、など) また、前半の小問集合や基本問題に解けない問題がある場合にはそうした問題で取りこぼさないための対策を行う、基本問題は解けており後半の問題で得点を伸ばしたい場合には複雑な問題に対処する手順を整理する訓練を積むなど、自分がどの部分で点数を伸ばせるのかを具体的にイメージしながらそれを実現するための対策を行うことが重要です。
大切なことは上記5で述べたように、志望校の出題特性を確認する中で、自分自身が得点源に変えていけそうな問題に注目し、改善すべき点をはっきりさせることです。「この問題は解けなかったけれど、あと少し練習すれば最後まで解けそうだ」、「難しい問題だけれど、この問題なら自分は得意分野だから得点源に変えられる」という問題が見つかった場合にはそれらに特化した対策を積み、着実に点数を伸ばしていくことが大切です。
おわりに
:中学受験算数の過去問演習は、出題傾向の把握や時間配分の習得など、合格に向けた最重要の学習です。ただし、効果を高めるには「どのように取り組むか」が非常に大切です。
「どの問題で点を伸ばしたいか」という目的意識を持ち、「序盤の小問集合を確実に取りたい」のか、「自分の得意分野で後半の得点を伸ばしたい」のかなど、狙いをはっきりさせて学習すると成果につながります。また、チャレンジ校の基礎問題だけを繰り返したい場合など、状況に応じて時間を測らず単元別に練習する方法も適切です。
過去問演習は、点数を測るだけでなく、自分の課題を見つけ、その後の学習を強化するための最良の教材です。意識的に取り組むことで、志望校の算数の得点力を大きく伸ばしていきましょう。