鉄は熱いうちに打て!~夏のうちに苦手算数を克服しよう~
2025/8/16
はじめに:「鉄は熱いうちに打て」という学習の真理
「鉄は熱いうちに打て」ということわざは、算数学習においても強いメッセージを持っています。
鉄が柔らかい状態で叩けば自在に形を変えられるように、子どもたちの思考も「柔らかい時期」にこそ大きく伸ばすことができます。
夏休みは、まさに算数学習における“熱いうち”の時間です。学校の授業が一旦止まり、まとまった時間が取れるからこそ、これまでの苦手を整理し、克服していく絶好のチャンスなのです。
逆にここで何もしなければどうなるでしょうか。苦手はそのまま積み重なり、秋以降の新しい単元を理解するときに障害となります。そして「わからない」「もう無理だ」という気持ちが膨らみ、算数に対する苦手意識が決定的になってしまうのです。
この記事では、「夏に苦手を克服する意義」と「そのための具体的な勉強法・心構え」を徹底的に掘り下げていきます。
1.夏に苦手を克服すべき理由
1.1 時間的余裕がある
学校の授業がストップしている夏休みは、普段よりも自分のペースで復習できます。日常的には新しい単元を学ぶことに追われ、過去の復習にじっくり取り組む時間はなかなかありません。夏は「基礎に戻る」またとない機会です。
1.2 定着が早い
夏は毎日ある程度の時間を算数に充てられるので、反復練習がしやすい時期です。算数の理解は「短期間に繰り返し触れる」ことで一気に定着します。秋以降の忙しい時期では、このような集中反復は難しくなります。
1.3 自信を取り戻すタイミング
苦手単元を放置すると「自分は算数ができない」という意識が定着してしまいます。しかし夏の集中学習で「できた!」を積み重ねれば、自信を取り戻し、算数に前向きになれます。
2.苦手分野を放置するとどうなるか
算数は積み木のような学問です。下の段がぐらついているのに、上に新しいブロックを積もうとしても崩れてしまいます。
・分数計算が苦手なまま → 比や割合でつまずく
・割合があやふや → 速さや割合の文章題が理解できない
・図形の基礎公式を忘れている → 面積・体積・相似・証明に歯が立たない
苦手を放置すればするほど、後の学習が「理解不能の領域」に突入してしまいます。ここで子どもが抱く「自分はダメだ」という気持ちは、実は能力不足ではなく、土台の穴を埋めていないだけなのです。
だからこそ、「苦手を放置しない」という心構えが絶対に必要です。
3.苦手克服のための4ステップ
ステップ1:苦手の洗い出し
まずは「何ができていないのか」を明確にしましょう。間違えた問題を集めたり、模試やテストの結果を分析することが第一歩です。
ステップ2:基礎に立ち返る
間違えた問題を、いきなり応用的に解き直す必要はありません。むしろ教科書やドリルに戻り、基礎計算や公式を確認することが近道です。
ステップ3:小さな成功体験を積む
「1日1単元」「10問だけ完璧に解く」など、小さなゴールを設定し、達成感を積み重ねましょう。
ステップ4:説明できるようにする
自分の言葉で解き方を説明できたとき、本当に理解した証拠です。親や先生に口頭で説明するのも効果的です。
4.夏の勉強法 実践編
夏休みは「まとまった時間がある」という点で、他の時期とまったく違います。だからこそ、1日の学習リズムを意識的に設計することが重要です。
▪️午前中は算数に集中
午前中は脳が最もフレッシュで、集中力や思考力が高い時間帯です。
この時間に取り組むべきは「計算練習」や「基礎的な復習」です。
例えば:
9:00〜9:30 計算ドリル(分数や小数など、反復で定着させたいもの)
9:30〜10:30 過去に間違えた単元の復習
10:30〜11:00 間違え直し・ノートまとめ
ここで大事なのは「毎日同じ時間に同じように取り組むこと」。リズムを固定すると、脳が「この時間は算数をやるんだ」と習慣化してくれます。
▪️午後は応用や読書感覚の学習
午後は少し疲れも出てくる時間帯です。だからこそ、頭を柔らかく使える「文章題」や「図形問題」に取り組むのがオススメです。
14:00〜15:00 応用問題(速さや割合の文章題、図形の発展問題)
15:00〜15:30 自分で図を描いたり、説明を声に出してみる
15:30〜16:00 親に説明する/友達に教えるつもりで整理
ここでのポイントは「楽しみながら取り組むこと」。
文章題は一見難しく見えますが、「物語を読んで、状況を頭に思い浮かべる」気持ちで読むと、苦手意識が和らぎます。
▪️夜は振り返りノート
1日の終わりに必ずやってほしいのが「振り返り」です。
内容はシンプルでかまいません。
今日できたこと(例:分数の通分がスムーズにできた)
今日まだ弱いこと(例:速さの問題で距離を出すのに迷った)
明日やること(例:速さの公式を整理する)
これを数行でいいので書き残しておくだけで、次の日の学習にすぐつなげられます。さらに保護者が一言コメントを書いてあげると、子どものモチベーションがぐっと高まります。
5.成功事例と失敗事例
成功例:夏に分数を徹底的にやり直したケース
ある小学生の例です。
4年生の段階で「分数の計算」が大の苦手でした。通分の意味があやふやで、分母をそろえるのも苦労していました。その結果、割合や比の単元ではまったく歯が立たなくなり、「算数が嫌い」という気持ちが強くなっていました。
そこで夏休みに入ってから、1日30分ずつ分数計算だけに集中しました。ドリルを解き直すだけでなく、「なぜ分母をそろえるのか」を図に描いて考え、親に説明する練習も取り入れました。
最初の1週間はミスだらけで嫌になることもありましたが、2週間目には計算スピードがぐんと上がり、正答率も安定しました。8月の終わりには「分数はもう怖くない」と言えるまでに成長し、2学期以降の割合や速さの文章題もスムーズに解けるようになりました。
この子が夏にやったことは特別なことではありません。ただ「毎日少しずつ」「必ず振り返る」という基本を徹底しただけです。それが自信につながり、算数全体に好循環を生み出しました。
失敗例:先送りしてしまったケース
一方、別の子は「分数は苦手だけど、夏は好きな図形をやろう」と思い、分数を後回しにしてしまいました。夏休み中は楽しく勉強できていたのですが、2学期に入り、割合の問題に直面したときに立ち止まりました。
結局、分数の基礎ができていないため、割合の文章題が解けない。速さの公式を使っても、分数の計算でつまずいて答えが出ない。
秋以降は授業スピードが速くなり、苦手を立て直す時間はほとんどなく、冬になってから「やっぱり分数をやらないと…」と焦る羽目になりました。
このように「夏に後回しにした単元」は、必ず後でしっぺ返しが来ます。成功と失敗の差は「嫌いなものに夏のうちに向き合ったかどうか」にあるのです。
ぜひ後悔のないよう、残りの夏休みを有効活用しましょう!
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