【世界史・歴史】 覚えにくい事柄をパターン化・ルール化して覚える
2025/4/28
ブラマンテ、ブラマンテ、ブラマンテ。
いきなり何だ、と思われるかもしれませんが、まずは唱えてみてください。
ブラマンテ、ブラマンテ、ブラマンテ。
はい、皆さんご一緒に。
ブラマンテ、ブラマンテ、ブラマンテ。
実は、これは私がはじめて世界史の授業を習った際、当時高校で世界史を教えてくださっていたO先生になんの前触れもなく言われたことと同じものです。当時、我々生徒(たしか高1でした)の側はO先生とまったく面識がなく、入ってくるなり「ブラマンテ」を連呼する天パーのおっさんにたじろぎながらも最終的には唱えさせられたことを覚えています。
ブラマンテ、ブラマンテ、ブラマンテ。
「パルプンテみたいだ」と思っていた我々が3回唱えたのを見たO氏はその後しれっとのたまったものでした。
「はい、みなさんはこれで一生ブラマンテから逃れられません。ブラマンテはサン=ピエトロ大聖堂を設計した人です。」
そして、実際に私はブラマンテを一生忘れることができませんでした。ちなみに、O先生は現在某大学で人文学部長を務めておられます。すごいなぁ。
つまるところ、「暗記の極意とは?」と言われればこれにつきます。イメージ付けです。イメージ付けさえできれば「イクスペクトパトローナム」であろうが「モンキー=D=ルフィ」であろうが覚えることができます。ワンピースの登場キャラが全部覚えられる人間がルイ14世を覚えることができないというのはそもそも原理的に不可能だと思います。よく「情報量が多くて…」という話を聞きますが、冷静に考えてみたときに『詳説世界史研究』一冊の情報量と、「ワンピース全巻+鬼滅の刃全巻+暗殺教室全巻+…」と本棚に並んだマンガ本の情報量を比較すれば、「世界史は情報量が多いから覚えられない」というのは間違いだということに気づくはずです。
それでは、世界史についてどのようにすれば多くのことを記憶としてとどめておくことができるのでしょうか。マンガや小説といったもので印象付けたり、流れやストーリーを把握したりなどで覚えたりといろいろな方法がありますが、今回ご紹介するのは「パターン化による印象付け」です。これは特に、複数のものを一度に覚えなくてはならないときや、複数の類似するものが混じってしまって混乱するときに効果を発揮する覚え方です。やり方は簡単で、要は以下の2点を意識して、自分で定型のルールを作成することです。
① 覚える順を常に一定にしておく
② 特徴のある部分を自分で決めて、おさえる
これだけです。よくわからないとおもうので、具体的な例を紹介します。
(例1)戦国の七雄
:戦国の七雄を覚える際には覚える順を常に一定にしておきます。かつ、そこにある種のルールを自分で設定して意識するとなお効果的です。たとえば、私の場合、授業で教える際には常に「斉・楚・秦・燕・韓・魏・趙」の順で話します。また、これらを斉(山東半島)から初めて東→南→西→北とぐるっとまわってから中央部を下から上に貫く、という意識で覚えるように伝えています。
(例2)南朝4王朝(宋・斉・梁・陳)
:これも全く同じで、ひたすら「そうせいりょうちん」と唱えることです。決して、「そう・せい・りょう・ちん」と区切ってはいけません。「そうせいりょうちん」と一つの塊にして唱えることで、自然にその順が出てくるようになります。ちなみに私は友達の「亮くん」を思い出しながら「そーせい、亮ちん」で覚えていました。
(例3)五代十国の「五代(後梁・後唐・後晋・後漢・後周)」
: これも原理は同じなのですが、先ほどの例2と比べると唱えにくいので、私ははじめから「後」をとってしまっていました。つまり「りょうとうしんかんしゅう(梁唐晋漢周)」と覚えておいて、後から「後」をくっつけるという作業ですね。「りょうとうしんかんしゅう」というと、何となく勅撰和歌集的な語呂の良さも出てくるし、何より順番を間違えることはないので、この方がはるかに楽でした。こうした「一部分だけを取り出して並べる」という作業は他のところでも効果的なことがあるので思いついたら試してみると良いと思います。(デリー=スルタン朝の奴隷王朝以降の王朝をまとめて「ハトサロ」[ハルジー朝、トゥグルク朝、サイイド朝、ロディー朝]とかですね。)
(例4)ジェームズとチャールズが覚えられません…(泣)
:応用編です。よくある受験生の悩みに「日本史は名前が違うから覚えられるのですが、世界史は1世とか2世とかなので意味が分かりません…」というものがあります。正直、私にとっては義義義義言っている日本史の方がよほど煩わしい。おまえはムツゴロウさんかとつっこみたくなります。ただ、イギリス、ステュアート朝の君主は確かに迷いやすいところではありますね。これも2点の特徴を抑えれば一発で解決です。
1、ジェームズ1世、2世と、チャールズ1世、2世がいる。
2、ジェームズにチャールズがはさまれている。
以上です。(もっとも、名誉革命後にウィリアム3世とメアリ1世、アン女王は出て来ますが、紛らわしい部分ではないと思います。) 1と2の約束を守れば
ジェームズ1世
チャールズ1世
チャールズ2世
ジェームズ2世
の順になるのは明白ですから、順番に迷うことはありません。ついでに、それぞれの国王について1点、2点でも特徴のある事柄を結びつけて覚えると良いでしょう。こんな風に。
ジェームズ1世(ステュアート朝の開祖)
チャールズ1世(権利の請願、ピューリタン革命)
[クロムウェルの独裁]
チャールズ2世(王政復古、審査法、人身保護法)
ジェームズ2世(名誉革命)
こうして、国王をベースに骨組みをつくってやれば、あとは少しの肉付けをしてやるだけで17世紀イギリス史をまとめていくことも可能になります。
(例5)ルイルイルイルイ…ムキー!(フランスの君主)
:おそらく世界史の嫌いな受験生がとてもイラつくパートがこのルイルイパートです。たしかに、最終的に18世まで出てくるのでイラつく気持ちもわかりますが、世界史で登場する主要なルイルイはなんと5人しかいません。であれば、はじめからルイルイを抜き出して特徴をおさえておけばよいだけのことです。
ルイ9世(聖王、第6回・第7回十字軍、アルビジョワ十字軍)
ルイ13世(宰相リシュリュー、三部会停止)
ルイ14世(宰相マザラン、財務総監コルベール、絶対王政全盛期)
ルイ16世(フランス革命で首チョンパ)
ルイ18世(ウィーン体制、正統主義)
ちなみに、難関私大クラスになるとルイ1世(ルートヴィヒ1世)がカール大帝の息子でヴェルダン条約の原因を作った人物(ロタール、ルートヴィヒ[ルイ2世]、シャルルの父)であることや、ルイ12世がイタリア戦争を起こしたシャルル8世の後継者であることなどが必要になることもありますが、これらは「必要になってきたな」と感じたら意識すればよいだけのことです。暗記では「優先順位をつける」ことも大切な要素ですね。
以上、いくつかの例を挙げてみましたが、肝心なのは「自分流のルールに従って覚え、それを定型化すること」です。ちょっとした工夫で覚えるのが楽になることもたくさんあるので、普段から意識しておくとよいと思います。何より、ルールを作るのは自分なので、自由にいろいろなルールを作ることができますので、慣れると多くの部分に応用できると思います。
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