文章題を「読めない」のではない。「区切れない」だけだ。
算数の文章題が苦手な子の親から、こういう相談をよく受ける。
「読解力の問題ですか?国語の勉強が足りないんでしょうか?」
違う。断言する。算数の文章題が解けない原因は、読解力ではない。「区切り方」を知らないだけだ。
文章を丸ごと脳内で処理しようとするから詰まる。長い文章は、読み終わった瞬間に前半を忘れる。それが「分からない」の正体だ。
一文丸ごと読もうとするな
先日の授業で、こんな問題に取り組んだ。
「4でも7でも割り切れる数のうち、500に最も近い数を求めなさい」
これを一文で読もうとすると、「4でも7でも割り切れる数のうち500に最も近い数……えっと何をするんだっけ」となる。よくある失敗パターンだ。
正しい読み方はこうだ。まず最初の句点で止まる。
「4でも7でも割り切れる数のうち」——ここで一度考える。
「割り切れる」という言葉が出てきたら、算数の言葉に翻訳する。「なんとかで割り切れる」とは「なんとかの倍数」のことだ。つまりこの時点で「4の倍数かつ7の倍数」を求める問題だと判断できる。4の倍数でもあり7の倍数でもある数は、28の倍数だと分かる。
ここまで来て初めて、後半の「500に最も近い数」に進む。
一文全体を読んでから考えるのではない。句点や読点ごとに止まって、そこで式や言葉に変換してから次へ進む。これだけで、長い文章題の半分は解けるようになる。
「数字なし」の文節で止まれ
もう一つ、覚えておいてほしいルールがある。
数字や条件が含まれていない文節は、飛ばさず確認だけして進む。問題文の冒頭にある「ある年に行われたオリンピックでは」という部分は、数字がない。ここで式は作れない。「オリンピックの問題だ」と確認したら、次へ。
数字や比較の情報が出てきた文節で、初めて手を止めて式を立てる。
オリンピックのメダル問題で言えば、「ロシアは日本の9倍より6個多かった」という部分が処理対象だ。ここで「日本を丸1とする」と決めれば、ロシアは「丸9 + 6」と書ける。次の文節に進んで「アメリカは日本の7倍より4個少なかった」を「丸7 - 4」にする。これを全部足せば「4カ国の合計は268個」という条件から答えが出る。
文章を読みながら、リアルタイムで式に変換していく。後で読み返して式を立てるのではない。読みながら作る。それが文章題の正しい処理順序だ。
「言葉の定義」は事前に公式ノートへ
ただし、この「読みながら変換」が機能するには前提がある。算数の言葉を知っていることだ。
「割り切れる」が「倍数」の意味だと知らなければ、どんなに丁寧に区切っても詰まる。「原価」と「仕入れ値」が同じものだと知らなければ、売買算の文章を読んでも変換できない。
だから文章題を解く前に、単元ごとの言葉の定義を公式ノートに書き溜めておく必要がある。問題を解いて初めて知る言葉が出てきたとき、その場でノートに書く。
「割り切れる → ○○の倍数」 「原価 = 仕入れ値」 「利益 = 売り値 - 仕入れ値」
これだけだ。難しい解法を覚えるより、こういう「翻訳辞書」を充実させる方が先だ。文章題は日本語で書かれた暗号文であり、算数の言葉への翻訳ができれば、暗号は解ける。
表に落としてから考える
文章題の中でも特に長いのが、複数の条件が絡み合うタイプだ。人数比較、速さと時刻、図形の移動など。
こういう問題では、読みながら表を作る。
先ほどのオリンピック問題なら、国名を縦に並べた表を先に書く。そこに文節ごとに条件を書き込んでいく。「ロシア:丸9 + 6」「アメリカ:丸7 - 4」「中国:丸2」「日本:丸1」。書き終われば、足すだけだ。
時計問題なら、正しい時計と間違った時計の2行を先に書く。「正しい時計:○○」「間違った時計:○○」の箱を先に用意して、文章から情報を拾ってはめ込んでいく。
表の箱を先に作る。そこに情報を入れていく。これが文章題の処理の型だ。
文章を読んで、考えて、解く。ではなく、文章を読みながら表を埋め、埋まった表を計算する。この順序に変えるだけで、長文問題への対処がまるで変わる。
読み方は「型」として練習する
ここまで読んで、「なるほど分かった」という親御さんに一つ注意を言わせてほしい。
この「区切り方」と「表への変換」は、教えれば分かる類のものではない。反復して、手が自然に動くまで練習するものだ。
理解と定着は別物だ。分かった状態と、次に似た問題が来たとき自分で使える状態の間には、相当の練習量が要る。
だから今週の問題でやった型を、来週は数字が変わった問題でもう一度やる。再来週は似た構造の別の問題でやる。これを繰り返すうちに、文章題の前で手が止まらなくなる。
「文章題が苦手な子」というのは実在しない。「文章題の処理型を練習していない子」がいるだけだ。
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