商業簿記と工業簿記って何が違う?|社会人のための簿記2級入門
「簿記3級の次は2級に挑戦してみたい」
そう思って調べてみると、突然出てくるのが、
「商業簿記」と「工業簿記」
という言葉です。
「簿記にも種類があるの?」
「3級で勉強した簿記とは違うの?」
「工業簿記という名前だけで難しそう……」
そんな印象を持つ方もいるかもしれません。
今回は、これから日商簿記2級を学ぼうと考えている社会人の方に向けて、商業簿記と工業簿記の違いをできるだけ身近な例から説明します。
まず、商業簿記とは?
商業簿記は簡単にいうと、
会社が外部と行った取引を記録し、会社の財産や利益を把握するための簿記
です。
商品を仕入れた。
商品を販売した。
取引先から代金を受け取った。
銀行からお金を借りた。
備品を購入した。
給料を支払った。
こうした会社の取引を記録し、最終的に「会社はいくら利益を出したのか」「どのくらい財産や負債を持っているのか」を整理します。
簿記3級を勉強したことがある方なら、この辺りは比較的イメージしやすいでしょう。
3級で学ぶ仕訳、売掛金や買掛金、固定資産、決算なども、商業簿記の世界です。
では、工業簿記とは?
一方、工業簿記は、
製品を作るために、いくら費用がかかったのかを把握するための簿記
と考えると分かりやすいでしょう。
たとえば、家具を製造して販売している会社を想像してみます。
机を1台作るためには、
・木材などの材料
・製造する社員の人件費
・工場の電気代
・機械を使用するための費用
など、さまざまなお金がかかります。
では、
「この机を1台作るのに、実際はいくらかかったのか?」
これを計算できなければ、販売価格を決めたり、どの商品が利益を出しているのかを判断したりすることが難しくなります。
そこで登場するのが工業簿記です。
製品を作るためにかかった費用を整理し、「製造にいくらかかったのか」を計算していきます。
この計算を考えるうえで重要になるのが、簿記2級で学ぶ原価計算です。
「買って売る」のが商業簿記、「作って売る」のが工業簿記
最初の段階では、この違いから理解すると分かりやすいと思います。
たとえば、完成した机を10万円で仕入れて15万円で販売する会社を考えてみます。
この場合は、
「10万円で仕入れた」
「15万円で販売した」
という取引を記録します。
これが商業簿記のイメージです。
一方、自社の工場で机を製造している会社では、
「木材はいくら使ったのか」
「作業する人の人件費はいくらかかったのか」
「工場を動かすためにいくらかかったのか」
を考えなければなりません。
そして、それらを集計して、
「この机を作るためにいくらかかったのか」
を求めます。
こちらが工業簿記です。
大まかに整理すると、
商業簿記=会社全体のお金や取引を見る
工業簿記=製品を作る過程のお金を見る
と考えると、最初は理解しやすいでしょう。
なぜ簿記2級では工業簿記を勉強するの?
3級から2級へ進むと、工業簿記が新しく登場します。
ここで、
「自分はメーカーで働いていないから必要ないのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、工業簿記を学ぶと、
「商品やサービスに、どのようにコストがかかっているのか」
という考え方が見えてきます。
会社にとって、売上を増やすことと同じくらい、「その売上を生み出すためにいくら使ったのか」を把握することは重要です。
100万円売り上げても、そこに95万円のコストがかかっていれば、利益は大きくありません。
逆に、売上が同じでも、製造方法を見直してコストを下げられれば、利益が増える可能性があります。
工業簿記を勉強すると、こうした**「コストと利益の関係」**を数字で考える基礎が身についていきます。
工業簿記は難しい?
「工業簿記」という名前を見ると、商業簿記より難しそうに感じるかもしれません。
特に最初は、
「材料費」
「労務費」
「経費」
「製造間接費」
など、新しい言葉が出てきます。
そのため、用語だけを一気に覚えようとすると混乱しやすくなります。
まずは、
製品を作るためにかかったお金を、種類ごとに整理している
と考えてみましょう。
たとえばパンを作る場合なら、
小麦粉やバターは「材料」
パンを作る人の給料は「人にかかる費用」
店舗や工場を動かすための電気代などは「その他の費用」
というように考えることができます。
こうした身近な例と結び付けると、専門用語だけで覚えるよりも理解しやすくなります。
商業簿記と工業簿記は別々の世界ではない
簿記2級を勉強し始めると、
「今日は商業簿記」
「今日は工業簿記」
と別々の科目のように感じることがあります。
しかし、最終的にはどちらも、
会社で起きているお金の動きを数字で表す
という点では共通しています。
工場で製品を作る。
その製品を販売する。
売上が発生する。
費用と売上を比べて利益を計算する。
このように考えると、工業簿記で計算した「製品を作るためのコスト」は、最終的には商業簿記で考える会社全体の利益にもつながっていきます。
商業簿記と工業簿記を完全に別物として暗記するより、
会社の活動のどの部分を見ているのか
を意識すると、知識がつながりやすくなります。
社会人はどちらから勉強すればよい?
簿記2級を始めると、
「商業簿記を全部終えてから工業簿記に進むべきですか?」
という疑問も出てきます。
必ずしも、片方を完全に終えてからもう片方に進まなければならないわけではありません。
ただし、社会人の場合は、仕事や家庭と両立しながら学習する方も多いでしょう。
そのため、
「今日は何となく勉強する」
のではなく、
・どの単元まで学習したか
・どこが理解できていないか
・問題演習が足りないのはどこか
・試験まであとどのくらいあるか
を整理しながら進めることが大切です。
特に簿記2級は学ぶ内容が増えるため、すべてを同じペースで進めるよりも、理解度に応じて重点を変えていく必要があります。
3級から2級になると何が変わる?
簿記3級では、基本的な仕訳や決算までの流れを学びます。
2級になると、その土台の上に、より複雑な商業簿記と、新しく工業簿記が加わります。
そのため、
「3級は暗記で何とか合格したけれど、2級になったら急に分からなくなった」
ということもあります。
そんなときは、一度3級の基本に戻ることも大切です。
特に、
「取引で何が増え、何が減ったのか」
「なぜこの仕訳になるのか」
という基本が曖昧なままだと、2級で扱う内容が増えたときに混乱しやすくなります。
分からないところが出てきたら、単に問題の解き方を覚えるのではなく、
「どこまで理解できていて、どこから分からなくなったのか」
を確認してみましょう。
まとめ|商業簿記と工業簿記は「見る場所」が違う
最後に、シンプルに整理してみます。
商業簿記は、
会社が行う取引を記録し、会社全体の利益や財産の状態を見るための簿記。
工業簿記は、
製品を作るために、材料・人・設備などにいくらかかったのかを見るための簿記。
です。
どちらも最終的には、会社のお金の流れを正しく把握するためにつながっています。
簿記2級を始めたばかりの段階では、専門用語を完璧に覚えようとする必要はありません。
まず、
「今、自分は会社のどの部分のお金を考えているのか?」
と意識してみてください。
商業簿記と工業簿記の位置づけが分かるだけでも、これから学ぶ内容を整理しやすくなるはずです。
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