[カナダ生活のリアル 1] 医療費は無料って本当? 現地受診の現実
「カナダは医療費が無料」というフレーズを聞いたことがある人も多いかもしれません。お隣のアメリカでは「事故や病気で入院したら数百万円〜数千万円のとんでもない金額の請求書が届いた」という破産リスクつきの医療事情が有名ですが、カナダのシステムは全く異なり、考え方としてはむしろ日本などの公的皆保険制度に近いです。
しかし、実際に暮らしてみると日本の医療アクセスとのギャップに驚かされることばかりです。今回は「カナダの医療制度の仕組み」と「知っておくべきリアルな裏側」を解説します。
1. 公的保険で「コアな医療費」は100%カバー
カナダでは州ごとに公的医療保険(オンタリオ州のOHIPやBC州のMSPなど)が運営されています。カナダ国籍や永住権保持者だけでなくワークパーミットなどでも加入可能です。
この公的保険の最大のメリットは、基本となる医療費が100%カバーされる点です。医師の診察費、検査費用、さらには入院費や手術費まで、いわゆる会計窓口での支払いは一切発生しません。アメリカのように医療費で一発破産するような恐怖がないのは非常に心強いポイントです。
2. 実はカバーされない「処方薬・眼科・歯科」の壁
「医療費無料」と聞いて勘違いしやすいのが病院外でかかる費用です。
処方薬:これは公的保険の対象外です。薬局で受け取る薬代は100%自費となるため、勤務先のグループ保険(民間の任意保険)に入るか、個人で保険を手配して備えるのが一般的です。個人契約保険の場合はカバーされる範囲次第では掛け金も高額になるため、自分の健康状態によっては薬局で100%支払う方が安く済むこともあります。よく調べましょう。
眼科・歯科:こちらも原則として自費または民間保険でカバーします。ただし例外として、ファミリードクターから必要と判断されて眼科や歯科の専門医へ紹介された場合などは公的保険の適用対象となることがあります。
なお近年はカナダ全土で段階的に導入されている「カナダ国民歯科ケアプラン(CDCP)」もあり、低〜中所得世帯を中心に歯科治療の公的支援枠が広がっています。ただし低所得であっても、会社などで民間保険に入っている場合はCDCPの対象外となる可能性があります。
3. ファミリードクターが見つからない問題
カナダの医療の基本は「かかりつけ医(ファミリードクター)」制度です。体調を崩した際はまずファミリードクターに相談し、必要に応じて専門医(Specialist)や精密検査を紹介してもらう仕組みになっています。
しかし特に都市部では深刻なドクター不足が続いています。新規患者の受け入れ枠が全くなく、ウェイトリストに登録して数年待ちというケースも珍しくありません。既にファミリードクターを持っていて長年になる知人がいれば、そこから紹介してもらうことができるかもしれません。
4. Walk-inやERはいつも激混み
ファミリードクターが確保できたとしても、次のハードルは待ち時間です。
アポイントメント:予約を取ろうとしても最低でも2週間先、場合によっては数か月先になることも普通にあります。
Walk-in Clinic(飛び込みの診療所):ファミリードクターがいない人や急病人が集まるため、早朝から並んでも数時間待ちになることがあります。
ER(救急外来):重症度が優先される(トリアージ)ため、軽症や中等症と判断されると待合室で8時間〜10時間以上待たされることもよくあります。
日本の医療制度のすばらしさを痛感
日本では、保険証1枚を持っていけばいつでも好きな病院に駆け込め、専門医の診察も3割負担でスピーディに受けられます。この日本の医療アクセスの良さと質の高さは、カナダで暮らしてみて初めてその凄さに気づかされるポイントと言えます。
「費用負担がかからない」安心感はあるものの、「すぐに診てもらえない」ストレスと隣り合わせなのがカナダの医療事情です。特に「具合の悪い時でもすぐには診てもらえない」というのは深刻で、手遅れになったり逆に診てもらうときにはもう治っていたりということもあります。
旅行の場合は、渡航前に持病の薬の準備や民間保険の選定など、万全の備えをしておくことをおすすめします。
次回は「気候」についてです。
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