[Professional Engineerの仕事 2 ] 強度計算書の作成と維持
北米では、公共の安全に直結する設備の設計・製造・設置・検査等に関して厳しいルールが定められています。たとえばガス配管などの燃料設備、発電や各種の電気設備、圧力容器、さらにはエレベータや遊園地の乗り物まで、さまざまな設備に安全基準が存在します。
これらは業界ごとの安全基準に加え、州や自治体の条例もクリアし、公的な検査機関の審査に合格しなければ設置や稼働ができません。私は圧力容器の設計・製造・品質管理までの過程でP.Eng.として関わってきました。この記事ではこの過程の中から強度計算書の作成について紹介します。
装置の基本仕様(設計圧力・温度・容量など)を決めるのは営業部や設計部ですが、そこから届く基本図面を読み解き、強度計算で裏付けるのはP.Eng.個人の仕事です。
配管や板材であれば材質と寸法が使用圧力・温度に耐えられるか、溶接部やねじ部であれば脚長や寸法に強度不足や規定違反がないか、部材と接合部すべてを一つひとつ確認していきます。単純な形状であればルールブックの公式で計算できますが、複雑な構造では公式が使えないためFEAなどの数値シミュレーションで強度を確認し、計算書とは別に詳細なFEAレポートも作成します。
計算書はASMEやCSAといった、数百ページのルールブックと数千ページにおよぶ材料強度データの中から必要な部分を参照して計算をまとめる、いわば答案作成のような作業です。図面上で規定を満たさない部分があれば図面は設計部に差し戻し、何度もやり取りを重ねてようやく完成します。
私個人が扱っていた計算書は約100機種、短いものは10ページ以下でしたが長いものは50ページ近いものもありました。もし外部のエンジニアリング会社に計算書作成を依頼すれば、大きな1通で確実に100万円を超える金額になります。
すべての技術的な確認が終わると、P.Eng.は計算書にスタンプを押してサインをします。この瞬間から、その内容の正しさに対する責任はすべてP.Eng.個人のものになります。図面と計算書はこのあと公的な検査機関に送られ審査を受けます。設計変更があればそのつど安全性を検証し、場合によっては再審査や再登録も必要になります。
さらに年1回の計算書や設計図面の定期確認、ルール変更時の確認や修正など、計算書周辺の仕事は非常に多いです。
計算そのものは物理・数学・力学の世界です。しかしルールブックの公式には必ず適用条件が細かく定められており、その条件を規定するパラグラフはしばしば難解な英文で書かれています。条件を読み間違えたり見落としたりすれば、計算そのものがいくら正確でも計算書としては成立しません。この仕事は技術的な知識と英語の読解力の両方を高いレベルで求められるものです。
↓↓↓ パラグラフの例 こんな文章が何百ページも続きます

次回は「図面の作成と維持」について書く予定です。