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東大英語を読もう(2023年) 6

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2023/3/21

英語長文の読解方法について、ベテラン講師の視点から説明していこう。今日用いるのは東大の問題だ。東大は、我が国では一、二を争う最高峰だが、その英文には素直なものが多く、問題の出題のされ方も正統派で、決してひねくれたところはない。しかしながら、正確に読み解かない限り、真の理解には達するのが難しい、といった英文だ。これを解説していこうかと思う。なお著作権の問題もありそうなので、ここでは英文は記さない。下記リンクから問題文を入手されたし。受験生諸君、頑張って見られよ!


https://www.yomiuri.co.jp/nyushi/sokuho/k_mondaitokaitou/tokyo/mondai/img/tokyo_zenki_eigo_mon.pdf


では、私の解説を読みながら、令和5年の東大の英語の問題を見てみよう。大問1のIn the 2010sから始まる長文問題だ。いよいよ第6パラグラフだ。


・倒置

冒頭にはAdd to this the ever…とある。これはadd A to B「AをBに加える」を倒置してadd to B Aとしたもので、何故倒置されているのかといえば、Aが長いからだ。英語の傾向として、長い要素は後置されやすいのだ。


・追加

さらに、Addは動詞の原形なので命令文なので、「AにBを加えてみよう」とでもなりそうだ。すると、ここは「Add to this 名詞」という形になり、意味的にもthisは前パラグラフ内容を指すので、「前パラグラフの内容にBを加えてみよう」という追加の意味となり、意味的にはin addition, moreover, besidesなどとほぼ等しい。つまり、「Add to this 名詞」≒「In addition to this, 名詞」ということだ。ざっと訳せば、「前パラグラフの内容に、今日の経験経済で絶えず増えつつある選択肢を加えてみよう」となる。時間不足の怖れの理由として、第4パラグラフから1つずつ列挙されてあり、ここで3つ目の理由が挙げられているのだ。


・experience economyとは

英語では「名詞+名詞」という形が時に見られる。この場合、前の名詞は後の名詞の目的を表すことが多い。例えば、organ transplantといえば臓器移植だが、これは「transplant an organ」という表現を名詞化したもので、元々はorganという名詞がtransplantという他動詞の目的語だったのだ。Waiting roomなんぞもそうで、このwaitingは動名詞なのだが、room for waiting「待つための部屋」→waiting room「待合室」といった感じだ。そういうふうに考えると、このexperience economyは「経験が経済の目的」といったイメージと理解される。どういうことか。


・反復熟読のススメ

英語長文は、入試日が近づけばできるだけ短時間で、場合によっては必要なところだけを読んで、解法テクニックを駆使して、要領よく解く必要もあるかもしれない。しかし英文を、特にそれが難度の高い英文の場合には、本当に理解するには、その逆に反復熟読するのがよい。英文を読み、理解できないところは繰り返し読む。翌日にまた英文を最初から最後まで読む。すると、前日には理解したつもりになっていたところが、思いのほか深い意味があるとわかることもある。これを翌日も繰り返すのだ。こうやって理解をどんどん深めていくのだ。これは私も採用する方法でもある。こうすることで段落越えの関係性も見えて来ることがある。


話を戻そう。経験経済experience economyとは何かといえば、経験を目的とする経済活動であり、消費者の立場からすれば、モノではなくて経験を買うことだ。自転車を買うことでなくてサイクリングを楽しむことにお金を払うことだ。これは、第1パラグラフのvalue experience over thingsのところに関係し、また第2パラグラフのexperiences are more likely than material goods to deliver happinessとも関係する。まさに段落越えの関係性だ。こういった経験経済の選択肢が広がっているのであり、つまりいろんな経験が商品化されて消費者の購買対象となっているのであり、この傾向が拡大中なのだ。モノを買うだけならば短時間ですむ。しかし経験をするほうが幸福につながるので、経験が企業によって商品化され、消費者は経験を買うことになるのだが、経験するというのは時間がかかるのだ。ここから、「時間不足」というテーマに関連することになる。経験経済が拡大すれば、我々は商品化された経験を買うことになるのだが、間違った経験を購入すれば貴重な無駄遣いをすることになり、時間不足に陥るかもしれず、それが怖いのだ。


・for exampleの代用表現

具体例を挙げるにはfor exampleが代表的だが、他にもいろいろある。その一つがImagine, Consider, Think ofなどの動詞の命令文だ。これらは「~を想像してごらん」「~について考えてごらん」といったふうに訳されるが、いずれも具体例の提示をする際に使われることがあるのだ。第6パラグラフのThink ofもそうで、簡単に言えば、ほとんどfor exampleと同じ意味がある、と言える。つまり、「絶えず拡大しつつある今日の経験経済の選択肢(=商品)」の具体例として、all the plays, talks, and workshops you could go to tonightが挙げられているのだ。Playもtalkもworkshopもモノではなくて何らかの経験であり、時間がかかるものなのだ。


つまり、我々はかつてないほど余暇があるにもかかわらず、そうとは感じられない。それにはいくつかの理由がある。1つは、寿命の伸びに比べて購買力があまりにも伸びたからだ。1つは、携帯依存だからだ。そして加えてもう1つは、経験経済の拡大なのだ。

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