古典

漢文教育の現状と、漢文をどう学ぶか

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2022/11/1

みなさんは、「漢文」に対してどんなイメージをもっていますか?

「漢字だらけで嫌気がさす」

「漢文なんて古臭くて役に立たない」などなど…

あまりよいイメージをもっていない方も多いのではないでしょうか?


受験勉強では、漢文はマイナー科目扱いされ、後回しにされがちです。

マナリンクの科目ごとの先生の人数を見てもらえばわかりますが、英語の先生が191名、高校数学の先生が109名、国語の先生が88名いらっしゃる中で、古典の先生の人数は21名しかいらっしゃいません(2022年10月30日現在)。

古典の先生21名のうち、「漢文」と銘打ってコースを開講している先生となると、さらに少なくなって、たったの6名だけです。

それだけマイナーで、受験生からの需要が少ないのが、大学受験における漢文なのです。


一方で、受験での漢文は、実は得点源である、と言われています。

大学を受験する生徒さんの中で、受験科目に漢文がある生徒さんというのは、

・共通テスト

・私大文系の一部

・国公立大(二次試験)

といった試験を受ける方たちです。

私大や国公立大の試験は、大学によって配点が異なるので割愛しますが、最も多くの方たちが受験する共通テストでは、国語科200点の配点のうち50点が、漢文に割り振られています。

そして、共通テストの漢文は、「満点がねらえる」と言われているのです。


仮に、共通テストの漢文で、配点の半分の25点しか取れない生徒さんが、満点の50点を取れるようになったら、全体の成績が25点アップすることになります。

0点の生徒さんなら50点アップです。

この25点、あるいは50点を他の科目で取ろうとしたら、大変な努力が必要になるのではないでしょうか?

数学や英語の得点に置き換えて想像してみてください。

なかなかハードではないでしょうか?

ですが漢文なら、比較的簡単に「満点がねらえる」わけですから、ねらわなかったら大損です!


受験漢文のこうした現状があるにもかかわらず、「やりたくないなぁ」とか「適当でいいや」とか思っている生徒さんは、大学合格を目指すうえで、とても非効率でもったいない勉強の仕方をしているということになります。

何を身につけたいのかとか、どういった勉強を重視するかといったことは脇に置いて、あくまでも大学受験で合格するという観点からだけ見るならばですが、数学や英語で点数を取ろうが、漢文で点数を取ろうが、目指すべき合計点に到達できればよいのですから、取りやすい科目で点数を稼いだ方が、効率的と言えるでしょう。


さて、このようにして見てみると、漢文は簡単な科目のように感じるでしょう。

しかしながら、他に類を見ない、「満点をねらえる」科目のはずの漢文で、点数が取れない、苦手科目だという生徒さんがいるのは、なぜなのでしょうか?

漢文でつまずく理由はいくつか考えられますが、それについてはまた別の機会に書くこととして、苦手意識を作り出す大きな原因の一つとしては、「高校での漢文教育と大学受験のための漢文教育との間にズレがあること」が挙げられるのではないかと思います。


現行課程の高校教科書(例えば、大修館書店の『古典B』)では、

1、故事成語 2、漢詩 3、史伝 4、文章 5、思想 6、日本の漢詩文 7、小説

といったようにジャンル分けされ、それに沿って漢文を学びます。

2022年度高校入学生からが対象の新学習指導要領に準拠した教科書(『古典探求』)でも、これと同様のジャンル分けがなされています。

新課程のうち、共通テストの対象範囲になっている『言語文化』の教科書でも、

1、漢文に親しむ 2、現代に生きる言葉 3、想いを表す言葉 4、文学と社会

というような分け方にはなりますが、ジャンル分けして学ぶという方向性に違いはないようです。


ところが、大学受験の問題を解くためには、ジャンルより句形(句法=公式)の方が重要になります。

句形というのは、使役形とか否定形といったものです。

大学受験用参考書の多くが句形の解説を軸にして構成されている理由は、どのジャンルを読むにしても必要になるのが句形だからであり、句形さえわかっていれば、どのジャンルを読むにしても応用がきくからです。

ですから、多くの参考書は、句形をまとめて学ぶかたちになっているのです。


もちろん、高校の授業でも句形について勉強するはずですが、体系的には教えられていないのではないでしょうか?

漢文の句形は、細かく分けて、だいたい60~70個くらいあるとされます(教え方・数え方にもよります)。

これをお話のジャンル別に教えるとなった場合、とあるお話の中に句形が三つ登場したら、その三つは教えるけれど、他の句形は教えず、また他の話の時に一つ、また一つと、バラバラに教えていくことになります(各先生方の指導方法にもよるかもしれませんが)。

この方法だと、お話の意味はわかるでしょうが、「漢文が読める」ようになるとは言えないのではないかと思います。


そうした方法で教えられた生徒さんたちは、なんとなくわかったような、わからないような気持になり、ある時には偶然、高得点が取れて、ある時には全然、点数が取れないという事態に陥ります。

その結果、苦手意識が形成されると、漢文の勉強から遠ざかってしまい、余計に点数が取れなくなってしまうのです。

かく言う私も、高校時代、(中国史好きだったこともあって漢文は好きでしたが、)出題される文章によって、得点には大きくバラつきがありました。


出題される文章が決まっている定期テストなら、授業で教えてもらった現代語訳の丸暗記でも、高得点が取れることもあります。

ですが、初見の漢文を読まなくてはならない模試や大学受験では、決して通用しません。

特に、記述問題が出題される国公立大二次試験を受ける生徒さんたちは、しっかり勉強する必要があります。


では、どうしたら、受験漢文の点数を引き上げることができるのでしょうか?

受験漢文では、句形を軸にした体系的な学習をすることをお勧めします。

数学だって公式を習ってから練習問題に挑戦するでしょうし、英語だって文法を習ってから長文問題に挑戦するのが順番ではないでしょうか?

漢文でも同じように、句形をマスターしてから長文を読む練習をする方が、効率的な学習といえるでしょう。


私は、高校の漢文の授業を全否定したいわけではありません。

高校漢文には高校漢文の目的があるのであって、ただ、受験漢文との間にギャップがあるというだけなのです。

漢文をジャンル分けして学ぶことは、漢文作品にふれて教養を育てたり、表現能力を高めたりするためには、役立つと考えられます。

ですが、「漢文を読む技法」を身につけるためなら、句形を軸にして学習し、その後で、様々なジャンルの演習問題を解く方がよいということです。


私は、大学・大学院で中国史を専攻して以来、27年間ほど、漢文で書かれた史料を読んで研究してきました。

といっても、初めから漢文が読めたわけではありませんし、今でも悪戦苦闘しながら史料と対峙しています。

ですから、読めない生徒さんたちの苦労もわかります。

生徒さんと苦労を共有しつつ、専門家としての知識と経験を活かして、漢文読解の実力を養成します。


詳しい学習内容などについては、お問い合わせ・ご相談ください。

基礎の基礎から大学受験対策まで、生徒さんの成績と目的に合わせて授業を行います。

該当するコースがないけれど教えてほしいという場合も、可能な限り対応します。

ぜひ、漢文を苦手科目から得意科目へと変えていきましょう!


・【中国史研究者と学ぶ漢文】基礎の基礎から定期テスト対策まで

  https://manalink.jp/teacher/13168/courses/5289

・【中国史研究者と学ぶ漢文】大学受験直前特訓コース

  https://manalink.jp/teacher/13168/courses/5290

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