紅葉と和歌をお届けします🍁
皆様いつもお世話になっております。講師の富岡です。
今年も紅葉の季節がやってまいりましたが、皆様は紅葉狩りされましたか?
今回は、「もみぢ」についての和歌(古文で頻出です!)を、私の撮ってきた写真とともに見ていきたいと思います。
古文が入試である受験生や、美しい古語の響きに触れたい方はぜひ和歌を音読してみましょう。
(富岡撮影)
①こんな美しさは…もう、神代にも聞いたことがない…。
ちはやぶる 神代(かみよ)も聞かず 竜田川(たつたがわ)
からくれなゐに 水くくるとは
(『古今集』在原業平朝臣)
【富岡の訳】
不思議なことが多いとされるあの神代でさえも聞いたことがない。竜田川が唐紅色に水をくくり染めにしているとは…。
「ちはやぶる」とは「神」にかかる枕詞です。
不思議なことの多い神代でも聞いたことがない、と、大袈裟に、しかし美しく表現をします。
「からくれなゐ」こそ、竜田川を唐紅色にくくり染めするもみぢの華麗さを表現しています。
ちなみにこの歌は『古今和歌集』に収録されていますが、あの『小倉百人一首』にも収録されている歌です。読み手は『伊勢物語』でもお馴染みの在原業平です。
ちなみに写真は竜田川とは関係ありません(笑)。
(富岡撮影)
②過ぎゆく秋は…この「下もみぢ」を形見に折ろう…。
露時雨(つゆしぐれ) もる山陰(やまかげ)の 下もみぢ
濡(ぬ)るとも折らむ 秋の形見に
(『新古今集』家隆朝臣)
【富岡の訳】
露や時雨が漏れ滴る山陰の下もみぢが、たとえ濡れていたとしても手折っておこう。過ぎゆく秋の形見にするために…。
「露時雨」「下もみぢ」と美しい言葉が踊ります。
「下」という一語がついているのは、ここでは「手の届く下方のもみぢ」を指します。
秋という季節は昨今では一瞬で過ぎ去ってしまいます。
当時はカメラなんてありません。だからこそ下もみぢを手折って、秋の形見としたのです。
ちなみに『新古今和歌集』といえば、おなじみ後鳥羽上皇が編纂を命じた勅撰和歌集です。
『古今和歌集』(醍醐天皇時代の勅撰和歌集)から『新古今和歌集』まで足掛け300年。この間に8つの勅撰和歌集が編纂されました。そのためこれらを「八代集」と呼びます。
国語の文学史や日本史の文化史がある人は覚えましょうね。
(富岡撮影)
③私の秘めた恋心も、顔色に出てしまうのだろうか…。
わが恋も 今は色にや 出でなまし
軒(のき)のしのぶも もみぢしにけり
(『新古今集』花園左大臣)
【富岡の訳】
私の忍んで秘めてきた恋も、今は頬に淡い紅を差した顔色にきっと出てしまうのだろうか。軒に生えているしのぶ草も紅葉してしまったものだよ。
「もみぢしにけり」という表現はとても良いですね。
「もみぢ」を動詞「もみぢす」として使い「紅葉する」と言っているわけです。
「にけり」は古文ではお馴染み「〜してしまったものだ」です。
ちなみに「しのぶ草」がここでは良い味を出しています。
この植物は本来紅葉しません。そのしのぶ草が紅葉してしまったことに自分を重ねているわけです。
「わが恋」に「忍んで秘めてきた恋」と訳を当てた理由がわかりますか?そうです。「しのぶ草」の「しのぶ」を響かせているのです。
とっても奥が深く、美しい恋歌だと思いませんか?
「もみぢ」は恋と大変相性の良い葉なのですね。
また、相手への恋心を秘めた和歌を送るときに、秋の時期にはよく「紅葉襲の薄様(もみぢがさねのうすよう)」という美しい手紙が使われます。時季に合った色「紅葉襲」の高品質な手紙「薄様」に和歌を綴って、もみぢ葉のついた枝とともに想い人に送りました。
ぜひ皆さんも和歌を音読してみてください。
身体の中に和歌が染み込んでいると、四季折々の美しさがもっともっと立体感を伴って浮かび上がってきます。
もしかすると、それが人生を豊かにするということの一つなのかもしれませんね。
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