入試問題における細かい数値計算は不要か
2023/8/24
言うまでもなく理系教科にとって、計算力は必須です。
いくら正しい式が立てれようとも、それを早く正確に解くことができなければ、理系教科で得点を得ることはできません。特に基礎〜標準レベルまでに関しては理系教科はこの『計算力』が得点力の中で大きなウェイトを占めます。
しかし、とりわけ数学や物理に関しては、難関大入試レベルになると『計算力』のウェイトは下がります。なぜなら、その代わりに難しい条件設定から必要な部分を抜き出し、どうやって式を立てるかという、『立式力』のウェイトが大きくなるからです。
しかし、化学に関しては難関大入試レベルであっても、面倒くさい数値計算をさせられます。つまり、難関大入試レベルであっても『計算力』のウェイトは下がりません。
いわゆる論理至上主義の方には、この化学の数値計算に関しては否定的な意見が多いです。
数値計算の部分は論理的に重要ではない。数値計算は電卓ですれば良い。なので、数値計算は入試問題から撤廃しろ、と。
しかし、私はそう思いません。現状の数値計算がある入試問題に全く不満はありません。
その理由は大きく分けて2つあります。
1つ目は、難関理系入試や、上位の理系出身社会人が社会に出てから必要な能力は、数学的クリエイティビティだけではないからです。確かに、難しい数学や物理、化学の問題を解くために、考えに考え抜いて答えを導き出す能力(発想力)は重要です。大学や仕事でそれを専門として使っていく人であればそれは言うまでもありません。数学的クリエイティビティがない人が、すごい研究結果を出したり、生活に役立つすばらしい製品を生み出す可能性は低いでしょう。しかし、細かいこと・面倒なことを、集中力を切らさず、たとえ精神的・身体的に万全でなくとも平時と同じようにできる能力も同じように大切ではありませんか?細かい数値計算というのは一般的な人にとっては面倒で苦痛なことですが、それをあえて入試で出題し、そのためにたくさん計算練習をさせるのは、上記のトレーニングに繋がっていませんでしょうか。
2つ目は数学的クリエイティビティは、正直に言って生まれつきの能力による差が大きく、努力で差を縮めることも可能ですが、もともと得意の人はさらに伸ばすのでなかなか差が埋まりません。しかし、数値計算の速さや正確性というのものは演習量によって克服でき、これは上記に挙げたことほど生まれつきの能力による差はありません。つまり、数値計算があることで、秀才タイプの人間が天才タイプの人間に勝つ可能性が増えるのです。もともと数学的クリエイティビティが高い人だけが、理系の難関大や医学部に合格できる世の中は私は良いとは思いません。もともと数学的クリエイティビティが低い人が頑張ってお医者さんになっても良いではありませんか。
以上2つが、私が化学の入試問題における細かい数値計算が不要ではないと考える理由です。暗記や真面目にコツコツすることは文系教科でやれば良いだろうという意見もあると思いますが、理系教科である化学でこれをすることに意義があると思います。それは、理系教科=頭が良くないと無理、理系教科=もともとセンスがないと無理、という概念を少しでも減らしてくれると思うからです。
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