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#126 『ライトハウス英和辞典』最新版のお薦めポイント➁~対話のスキル~

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2023/11/10

先日発売された『ライトハウス英和辞典』の第7版の特徴を引き続き見ていきましょう。

2012年に刊行された1つ前の第6版で、「コミュニケーションの鍵―ポライトネス」という新コラムが本文に追加されました。

第6版の見出し語guessにあるコラム『コミュニケーションの鍵―ポライトネス』

「ポライトネス」は言語学の用語ですが、簡単に言うと「具体的な対話の場面での言葉遣いの適切さ」のことです。

・フォーマルな場面かくだけた場面か

・相手が目上か目下か、自分と親しいかどうか

・自分のお願いが相手にどれくらい負担をかけそうか

などといったいろいろな要因によって、その場でのふさわしい言葉遣いが変わってきます。

たとえば日本語で、店員が客に対して

「この用紙に記入しなさい」

と言うのはふつうは適切な言葉遣いではありません。

「この用紙にご記入をお願いいたします」

などのような、より丁寧な言い方をするはずです。

日本人であれば、どういう場面でどういう言い方をすればいいかは、成長する中で自然に身に付けていきます。

ですが、英語における場面に応じた適切な言葉遣い(=ポライトネス)を習得する機会は、日本の英語教育ではなかなか無いかもしれません。

豊富な会話の例を示しながら、分かりやすく「コミュニケーションを円滑にするための言葉遣い」を教えてくれたのが、第6版の「コミュニケーションの鍵―ポライトネス」でした。

最新の第7版では「対話のスキル」と名称を変えてはいますが、ポライトネスに焦点を当てた旧版の「コミュニケーションの鍵―ポライトネス」が継承されています。

いくつか具体例を見てみましょう。

見出し語pleaseにある「対話のスキル」

pleaseを使って「依頼」をするのは中学英語で学ぶ知識ですが、「依頼」と言うと「丁寧にお願いしている」というイメージを持つかもしれません。

しかし実は、pleaseが付いた命令文は、やはり本質的には「命令」を表していて、相手に選択の余地はほぼ無いということがここの説明で分かります。ここでの対話例のように、客が店員に「ドアを閉める」ことを依頼する場面では、pleaseの付いた命令文は適切ですが、たまたま同じ部屋にいる知らない人に対してClose the door, please.と言ってお願いするのは適切ではないことが推測できます。この場合はCould you close the door?などのような依頼表現が適切であることが、見出し語couldの「対話のスキル」を読むことで分かります。

では次に、shouldとmustにある「対話のスキル」を見てみましょう。

shouldは「~すべきだ」、mustは「~しなければならない」と習うので、私たち日本人は

You should try this cake.「あなたはこのケーキを試しに食べるべきだ」

You must come visit me next time.「今度はあなたが私の家に遊びに来なければならない」

と機械的に訳してしまいがちです。ケーキを食べたり、人の家に遊びに行くのが「義務」だなんて、おかしいですよね。

見出し語shouldにある「対話のスキル」

見出し語mustにある「対話のスキル」

shouldやmustを「勧誘」に使えるなんてびっくりですが、対話の例でこうした表現が使われる文脈も分かりやすく示されています。

では最後に、見出し語thinkにある3つの「対話のスキル」を読んでみます。

 

最初の「意見」を述べるI thinkが、「主張の強さを和らげる緩和表現」であることはなかなかこうして指摘されないと気付かないポイントかもしれません。

ましてや、次の「thinkを敢えて過去形にすることで、依頼を控え目にする」なんかは、かなり英語のできる人でも知らないワザなのではないでしょうか?

最後のDo you think you could ~?も、日本語の直訳「あなたは自分が~できると思いますか?」の不自然さから、こうして教えてもらわない限りはとても自分で発想できない表現ですよね。「英語ではこういう時にこういう表現を使うんだ!」という思わぬ発見が、「対話のスキル」を拾い読みしていく中にたくさんあると思います!

英語を使って自然なコミュニケーションを取りたいと願っている人にとって、『ライトハウス英和辞典』の「対話のスキル」は大きな力になってくれるでしょう。

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次回は、『ライトハウス英和辞典』最新版の新機軸である「トピック別論述フレーズ」を見ていきたいと思います!

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