#160 伊東先生の英文解釈教室➆
2025/6/29
今回の英文解釈問題は、それほど難しいというわけじゃないけど、しかし高得点を取れる答案を書くのはそれほど簡単なことじゃない。授業の解説を聞いて、自分の答案のどこがまずかったかを自己チェックしてほしい。
いつも言っていることだけど、英文解釈のアルファにしてオメガは、文の構造を正しく捉えること。大きく言うと、SVといった文の骨格を見抜くことなんだが、それはもちろん骨格以外の修飾要素を見抜くことと表裏の関係だ。
➀はIn Egyptと「前置詞+名詞」で始まっている。つまりSで文が始まっているわけではない。Sはどこで出てくるんだろう、と思いながら読み進めよう。
as in Sumer、これもやっぱりSではない。asは接続詞、そしてまた「前置詞+名詞」。asの後ろでは省略が起こっているんだけど、ここでは何が省略されているかは考えなくていい。このasは、
ⓐIn the 19th century, as in the 17th century, great social changes took place.「17世紀同様、19世紀にも大きな社会変革が起こった」
と同じasの使い方になる。
もちろん、
as they [=great social changes] did [=took place] in the 17th century
のように省略を補うことはできるんだけど、そんなことをしたところで得られるものは何も無いから、いちいち省略を考えずに、「as=~と同じように」と考えて処理できれば十分だ。
ⓑAs with much of Japanese culture, Chinese influences are important in Buddhism.「日本文化の大部分の場合と同じように、仏教においても中国からの影響が大きい」
このas withという言い方も、一つの熟語的な言い方として押さえておくといいよ。with ~には「~の場合には」という意味があるんだけど、それに「~のように」のas ~がくっ付いたものだ。
さて問題文に戻ると、
In Egypt, as in Sumer, ~「シュメールと同じように、エジプトでも~」
と訳せればOK。
the needを見た瞬間に、みんなはホッとしなくちゃいけない。ようやくこの文のSが出てきたわけだから。
と同時に、次はVを探すという新しい課題を抱えて読み進めることになるわけだ。
for a flood control systemはthe needを修飾する前置詞句。needと言ったところで、一体何が「必要」なのか?それを表現しているのがforのところというわけ。
a flood control systemは厳密に分析すると、
a+{(flood+control)+system}
名詞floodは名詞controlを修飾して、flood control「洪水の制御」という名詞的なカタマリになる。
そしてその名詞的カタマリが、直後の名詞systemを修飾して、flood control system「洪水の制御のための仕組み」というさらに大きな名詞的なカタマリを作っている。
で、最初の不定冠詞aは、flood control systemという名詞にくっ付いていることになる。
訳す時は、カタカナ語をなるべく使わないのが原則だ。control systemをそのまま「コントロールシステム」と書いた答案が、入試本番でどのように採点されるのかは不明だけど、大学によっては多少の減点はされるかもしれない。「システム」は日本語として熟している気がするのでカタカナでもいいかもしれないけど、「コントロール」はできたら「制御」などの日本語で表現するのがいいね。
日本語の中でどの程度カタカナ語が許されるのかは、もちろん状況によって変わる。たとえば、ファッション誌の中でなら、
ⓒヘアは韓国っぽさのあるカチモリアレンジをセルフでチャレンジしてみました。モードな印象のコーデに合わせてヘアアクセはあえてつけないのがポイント。前髪もピタッとタイトにするとかっこよくまとまります。
男の僕にはほとんど何が書いてあるか分からない文章なんだけど(笑)、これはファッションを扱ったあるインターネットサイトからの引用です。太字にしてあるのが英語から来た外来語。ファッション誌なら、こうしたカタカナ語の多用は何も不自然じゃないと思う。
でも、入試という環境ではもちろんそうはいかない。受験生の答案では、安易なカタカナ語の使用は減点される危険性があるんだ。そもそも、みんなの答案を採点する大学の先生は、ほとんどが中高年の人だろう。そういう人たちは、概してことばについて保守的な場合が多いということも知っていて損は無いと思うよ。
じゃあまた本文に戻ろう。ledは不規則動詞leadの過去形。ここで、この文のSとVが出たことになる。ただ、leadは自動詞・他動詞両方の使い方があるから、ここではどちらの使い方なのか?というまた新たな疑問が生まれることになる。もちろんすぐ後ろを見れば解決する。the farmersという名詞があるから、これがOで、ここのleadは他動詞用法だと分かる。ただ、他動詞のleadは少し厄介で、
辞書を引けば分かるように、
・lead O 前置詞+名詞
・lead O to do
という2つの使い方があるんだ。前置詞がtoの場合、「to+名詞」なのか「to+動詞の原形(=不定詞)」なのかという点に注意しないといけない。
問題文ではto join ... and co-operateと不定詞が続いている。なのでプリントに引用した辞書で言うと❸の後半「lead A to do」の使い方だと特定できるわけだ。まあ、❸のleadは、後ろが「to+名詞」でも「to+動詞の原形」でも、「S=原因」と考えればいいね。「結果」が「O+to+名詞」や「O+to+動詞の原形」ということになる。
ⓓCuriosity led me to ask her a question.「好奇心から彼女に質問した」
※Curiosityが「原因」で、me to ask her a questionが「結果」。
本文で言うと、
the need for a flood control system=原因
the farmers to join together and co-operate=結果
自分の訳文が、こうした因果関係を表現できているかをチェックしてみよう。因果関係が分かる書き方であれば、訳し方は基本的になんでもOK。別に辞書通りに訳さなくちゃいけないなんてことはない。
「join=参加する」はここの文脈ではおかしいね。だって、ふつう「参加する」と言うからには、「運動会に参加する」のように、「何」に参加するかを言うはずだから。
自分の知っている訳語が通じないなら、辞書を引く。これは英語学習の基本姿勢。「辞書を引くのは面倒くさい」は論外。それだと永遠に英語力は身に付きません。そもそも、調べれば分かることを調べようとさえしないのは、受験生失格だろう。
joinにも自動詞・他動詞両方の使い方がある。本文ではjoinの後ろに副詞togetherはあるけど、Oになれる名詞は無いので、自動詞で使われていると判断できる。なので、辞書の自動詞のjoinの意味を調べればいい。
ただ、残念なことに、ここのjoinにふさわしい意味を載せている英和辞典はあまり多くはなかった。みんなの持っている辞書でも、載っていない可能性は高いと思う。
プリントの辞書で言うと、❷の意味が問題文にピッタリくる。つまり、このjoinは「お互いに協力する」といったニュアンスだ。農民同士が協力し合うということだね。
そのあとのco-operateも「協力する」という意味の動詞。join together「一致団結する」もco-operate「協力する」も類義表現と考えていい。厳密に言うと、join togetherは「それまでバラバラだったものが一つにまとまる」という「(一瞬の)変化」に着目した言い方で、co-operateは「いっしょに事を行なう」という「(一定の時間行なわれる)動作の一部始終」を表しているんだけど、まあそこまで細かい話はどうでもいいかもね。
世界史でも聞いたことがある人はいるかもしれないけど、シュメールならティグリス・ユーフラテス川、エジプトならナイル川だけど、こうした大河川の近くで灌漑農業が発達して文明が起こってくるわけだ。ただ、川というのはもちろん自然の物だから、人間にとっていつも都合のよい顔を見せてくれるわけじゃない。時には氾濫を起こすこともあるだろう。そうした氾濫を防ぐのは、もちろん個人の力でどうにかできる話じゃない。多くの人が集まって、知恵を出し合い、協力して堤防を築いたりする必要があるわけだ。
さあ➁に行こうか。
まず文頭のIndeedだけど、これがまた意外に厄介な単語なんだ。
みんなはきっと単語集とかで「indeed=実際は」と覚えていると思うんだけど、
ⓔThe weather forecast said it would rain a week ago today; indeed, it turned out to be rainy.
この例文のindeedを訳すのであれば、「実際は」ではなく「実際に」の方が適切だ。
ⓔ’ 天気予報では、一週間前の今日は雨になると言っていたが、実際に雨になった。
基本的にindeedという単語は、文の内容が事実であることを強調する役割がある。ⓐの例文では、雨という天気予報を踏まえて、当日の天気は予報通り雨だったことを強調しているので、日本語としては「実際に、本当に、確かに、間違いなく」などと訳すことになります。
では、この例文はどうだろう。
ⓕThe weather forecast said it would rain a week ago today; indeed, it proved to be stormy.
ⓕ’ ×天気予報では、一週間前の今日は雨になると言っていたが、実際に嵐になった。
この日本語訳がおかしいことは直感的に分かると思う。
この英文では、天気予報よりも実際の天気の方がさらに激しいものだったと言っていることになる。こういう場合は、「実際は」などと訳すことになります。
ⓕ’’ 天気予報では、一週間前の今日は雨になると言っていたが、実際は嵐になった。
つまり、indeedをどう訳すかという問題は、文脈次第ということになるんだな。ⓔのように、文の内容が事実であることを強調しているだけなのか、それとも先行する文脈よりも一段と強い内容の文を導入しているのかに応じて、日本語では訳し分けることになる。ただ、結局どちらのindeedも事実の強調という役割は変わらない。ではこの例文のindeedは?
ⓖI thought it’d be difficult, indeed impossible.
difficultよりも一段と意味の強いimpossibleを導入するためにindeedが使われている。
ⓖ’ それは難しいだろう、それどころか不可能だろうと思った。
ということで、問題文のIndeedも、文脈を見なければ適切な日本語訳ができないということになる。
では➁の続きを読んでみると、the banding together of menとあるけど、まずこのbandingは動詞bandの動名詞形。もっと言うと、熟語band togetherが動名詞になってbanding togetherとなり、しかもそれに定冠詞のtheが付いている。
動名詞にtheが付くのは珍しいことではあるけど、一応起こり得るので知っておくといいよ。
ⓗSmoking cigarettes is illegal on the streets of California.
ⓘThe smoking of cigarettes is illegal on the streets of California.
ⓗのsmokingは、動詞smokeの動名詞形。で、このsmokeは他動詞で、後ろに直接Oを置くことができるね。これがお馴染みのいわゆる「動名詞」だ。
ⓘになると、まず動名詞のsmokingにtheが付いている。この時点で、このsmokingはほぼ名詞的に扱われていると言える。theが付く動名詞は、動名詞の名詞的性質が強くなったもの、とイメージしておくといいね。
で、名詞的性質が強くなったⓘのsmokingは、ⓗとは違って、後ろに直接Oを続けることはできない。間に前置詞ofが必要になってくる。
いい?もう一度確認しておくと、
ⓗのsmokingは動詞的性質が強い→theは付かない/Oはすぐ後ろに置ける
ⓘのsmokingは名詞的性質が強い→theが付く/Oはすぐ後ろに置けず、ofが必要
問題文では、
Men band together.→(band togetherを動名詞にする+主語Menを意味上の主語の形Men’sにする)→men’s banding together→(banding togetherの名詞的性質を強めてtheを付ける+意味上の主語をof menとする)→the banding together of men
こうしたイメージで、一見不思議なthe banding together of menという表現ができ上がったと捉えておこう。
じゃあ次は意味を考えるよ。band togetherは熟語といったけど、別にtogetherはあってもなくても意味はほぼ一緒なので、辞書で自動詞bandを調べてみる。
ということで、the banding together of menは「人々が団結すること」と訳すことになります。これはもちろん、問題文①のled以下を受けた表現ということになるからね。そうすると、menを「男」と訳すのはやっぱり文脈上不適切ということになる。このmenは、男も女も含めた「人々」と考えるべきだろう。manには性別を問わない「人」という意味もあることは辞書にちゃんと書いてあるから、後で調べておいてね。
went much furtherのfurtherは「程度がより大きい」という意味の比較級。goは空間的移動の「行く」ではなくて、ここでは「進展する」といった意味で使われています。
ⓙThings went from bad to worse.「事態はますます悪化した」
人々の団結がより高い程度に進んでいった、といった内容が分かればOK。
そうそう、忘れちゃいけないことがあった。➁の文頭のIndeedのここでの訳の問題があったね。
➀・・・洪水防止の目的で、エジプトの農民は一致団結した
➁・・・エジプトの農民の一致団結はさらに進展した
つまり➁の内容は、➀の内容にプラスアルファしたものだと言える。さっきの天気予報の例文のⓔとⓕでいうと、ⓕタイプの話の展開だと言えるはずだ。
ということで、問題文のIndeedは「実際に」ではなく、「(それどころか)実際は、実のところ」などの日本語訳がピッタリ来ることになる。
じゃあ➂に行こう。ここでのポイントは、remainの使い方。
ⓚOne big problem remains.「一つ大きな問題が残っている」
ⓛShe remains silent.「彼女は黙ったままだ」
動詞のremainには自動詞用法しかないんだけど、第1文型(SV)と第2文型(SVC)の両方で使われることを確認しておこう。ⓚが第1文型で、ⓛが第2文型です。
問題文のremainはどっちの使い方だろうか?後ろの名詞a land of small *city-statesはCと考えられるから、第2文型の使い方。
あと、「landになぜaが付いているんだろう?陸地とか土地の意味のlandは不可算名詞のはずなのに…」と思えた人は相当鋭い。そうした鋭い言語感覚を養うことが、受験英語の大きな効用だと僕は思っているんだけどね。こうしたことが気になるようであれば、もう英語学習の上級者と言えると思う。もちろんこうした疑問を解決する唯一の方法は、辞書を引くことだ。単語集なんかには書いてないぞ!と言うか、そもそもlandなんていう中学レベルの単語は、大学受験用の単語集には載ってないし!
aが付いているということは、landは可算名詞として使われているので、辞書の「C」というマークの付いた語義を見るといい。「C」はcountable(可算名詞)の略で、「U」はuncountable(不可算名詞)の略です。
この辞書だと、語義番号➊と❷が不可算名詞の時の意味で、❸が僕たちの求める可算名詞としての意味となる。「国、国土、地方」と3つの訳語が挙がっているけど、シュメールは「国名」ではなく「地名」のようなので、ここでは「地方」がいいだろうね。a land of small city-statesとあるから、「小さい都市国家がいくつかある地方(地域)」と訳すことになります。調べてみると、この地域にはシュメール人が作ったウル・ウルク・ラガシュといった都市国家があったみたいだ。
ではいよいよ最後の➃に行くよ。ここは特に難しいところは無いだろう。エジプト人は一人の王の支配の下で団結した、というのがコンマまでの前半の内容。後半はmake O Cの典型的な第5文型の文。thisはコンマの左を受けている。このこと、つまり王の下でエジプト人が団結したことが、エジプトを人類史上初の国家にした、と結んでいる。➃は②の続きと考える。エジプトでは、人々の団結が一層強まっていった、というのが➁の話だった。その結果として、➃の内容が展開されている。行間を読むと、エジプトほど人々の団結が進まなかったシュメールでは、大規模な「国家」は生まれず、小規模な「都市国家」で終わってしまった、ということだろうね。
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