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英語

#156 伊東先生の英熟語教室➀(後半)

2025/4/28

⑹の熟語は気付きにくくなっている。ここの比較級betterの原級はgoodではなくてwellなので、元の形に戻すとwell offという熟語が姿を現す。これはrichと同じ意味だと覚えておこう。

His clan is extremely well off.「彼の一族は大変な金持ちだ」

offは「離れている」というイメージだよね。ここでは「世間一般から離れている」とイメージしてみよう。wellはプラスの意味の単語。そうすると、well off全体で「世間一般からプラスの方向に離れている」といった感じになるよね。こうして「お金持ちの」という意味になったと覚えておこう。

問題文に戻ると、比較の文となっていて、「今のあなた」と「10年前のあなた」が経済面から比較されていることになる。

ついでに、これと反対の熟語もチェックしておこうか。

My family has been badly [poorly] off since my father lost his job.「父が失業してから家の暮らしぶりが悪くなってしまった」

wellの反対のbadlyやpoorlyを使うと、反対の意味の熟語になる。1語に書き換えるとpoorということになるね。

well offもbadly offも厄介なのは、このままの形ではなく、比較変化した形(better/best/worse/worst off)で出てきた場合にちゃんと対応できなくちゃいけないこと。もし辞書にそうした例文が出ていないなら、自分で簡単な英文を作ってみることをおすすめするよ。


⑺はat the mercy of ~のところが熟語だ。僕が受験生の時、熟語集に「~のなすがままになって」といった日本語訳が載っていて、いまいち意味がよくのみこめなかった記憶がある。mercyだけだと「慈悲」というプラスの意味なのに、なんでこの熟語は悪い内容の文で使われるのか、というところも分からなかった。

英英辞典で調べてみると、

mercy: a kind or forgiving attitude toward someone that you have the power to harm or right to punish危害を加える力や罰する権利のある相手に対して親切な、あるいは許してあげる態度を取ること」

at the mercy of ~: unable to stop someone or something harming you because they have power or control over you権限や支配権を持つ人や物が危害を加えてくることを止めることができない」

英語を英語で説明している辞書を引くことで、受験生の頃の僕が抱いていた疑問、つまり「プラスの意味のmercyは、なんで熟語になると悪い意味で使われるのか」を考えるヒントを得ることができる。

mercyそのものは、本当だったら相手に危害を加えたり罰したりできるんだけど、敢えてそうはせずに、優しく接してあげる、と言ったニュアンスの単語なんだね。相手より自分の方が優位な立場にあるというニュアンス(定義の下線部)を押さえておこう。

で、熟語の方でも、やっぱりmercyには「一方が他方より優位な立場にある」という関係性は変わっていないんだ。ただ、熟語では「優しく接してあげる」という意味の方は消えてしまって、優位にある方が弱い立場の人に敵意むき出し、ということになってしまっている。この熟語では、ofの後ろに来るのが「お釈迦様」で、主語に来るのが「お釈迦様の掌の上の孫悟空」状態だとイメージしておくといいかもね。


⑻はup to ~が熟語。これで一つの前置詞と捉えるといい。

この熟語には主に3つの意味があるんだけど、

Our store is open up to midnight.「当店は深夜12時まで営業しております」

It is up to us to right a wrong.「不正を正すのは我々の責務だ」

up to ~は確かにいろんな意味があるんだけど、基本的にはtoの「~に至る」というニュアンスで捉えるといい。

ⓒは、「当店が開いている」という状況がup to midnight「深夜12時に至る」ということ。つまり、深夜12時まで営業しているということになるわけだ。

ⓓでは、仮主語Itの内容である不定詞の内容、つまり「不正を正すこと」がto us「私たちに至る」ということなので、つまり不正を正すことは「私たち」がすべきこと、といったようなことが表現されている。

じゃあ問題文に行くよ。up toの目的語は、文頭の疑問詞What。「あなたは何に至るのか?」ということなんだけど、これは会話表現で「何を企んでいるのか?」ということを言っています。「企む」という日本語訳から分かるように、この時のup to良くないことに関わっている(engaged in something bad)、といったニュアンスを表すのがふつうです。


⑼ではin turnがポイントとなる熟語。これは、ある出来事の結果別の出来事が起こることを言う時に使います。

Lucy was very angry with Bob and he in turn was very upset.「ルーシーはボブにすごく腹を立てていて、それでボブはとても戸惑った」

問題文では、「他人の不幸を嗤う他人から嗤われる」という話のつながりの「→」の関係をin turnが示していると考えます。


最後の⑽もなかなか手強い。for goodが熟語で、for ever「永遠に」と同じ意味を表します。

やっぱりこの熟語も、受験生の僕には摩訶不思議な熟語だった。なんでfor goodで「永遠」なんていう意味になるんだろう?もちろん当時はその理由も分からずにただ丸暗記していた。

これまでにも話したことがあると思うけど、基本的に熟語というものはまずは「丸暗記」するのが基本的な取り組み方だ。全ての熟語が理屈できれいに説明できるわけではないし、また一つ一つの熟語の仕組みを解明することは、受験生にとってはあまりに荷の重い作業だからだ。丸暗記で済むものは丸暗記で済ませることは、決して悪いことじゃない。そもそも、僕たちがふだん使っている日本語にも熟語はごまんとあるけど、はたして僕たち日本人はその一つ一つについてちゃんと説明できるだろうか?説明できなければ、熟語を使えないのだろうか?

背水の陣で強敵に立ち向かう。

ⓖこんな時に、へそで茶を沸かすようなことをよく言えるね。

ⓗ最近では猫も杓子もスマホを持っている。

ⓘ彼の失敗に同情するだけでなく、他山の石としなければならない。

ⓕの「背水の陣」は、「一歩も退けない危機的状況で、必死の覚悟で事に臨むこと」という意味であることは、ほとんどの日本人が知っていると思う。ではなぜこの熟語はそうした意味を表すのかと問われれば、これまた多くの日本人は「背水ということは、背中に川とかの水があって、もう後ろには下がれない状況ということだな。陣は、戦いに挑む状況ということか」と考えることだろう。実際はこの成句は中国の故事に基づくものなのだが、そうした歴史的背景を知らなくても、字面を分析すれば成句の意味の成り立ちを正しく推測・説明することができるわけだ。

では、ⓖはどうだろう。「臍で茶を沸かす=おもしろおかしいことorばかばかしいこと」という意味を知っていても、ではなぜこの熟語がそうした意味になるのかを説明できる日本人がどれくらいいるだろうか?多分だけど、ほとんどの人はその理由を説明できないんじゃないかな。

それは、ⓗの「猫も杓子も」がなぜ「だれもかれも」という意味になるのか、ⓘの「他山の石」がどうして「他人のつまらない言行でも自分を高めることに役立てられる」という意味を表すのか、についても同じなんじゃないかと思う。ほとんどの日本人は、もちろん私も含めてだけど、辞書で調べない限り、そうした理由を正しく説明することはできないだろうと思う。

でも、理由を説明できなくて、何かそれで不都合があるだろうか?成句の意味を正しく知っていさえすれば、一般の日本人にはそれで十分じゃないのかな?

僕が言いたかったのは、日本語でも英語でも、熟語についてはとりあえず意味を知っていることが大切で、どうしてそういう意味になるのかということまで知っている必要は必ずしもない、ということなんだ。

だから、受験生にとっては「熟語の意味を丸暗記する」が基本姿勢であってよいとさっき言ったんだけど、でもなんでもかんでも丸暗記できるほど熟語の学習は簡単なものじゃないというのも事実だ。丸暗記しにくいもの、理屈ですっきりと理解できるものについては、理屈でとらえるというのももちろん有効な学習法だ。要は臨機応変にということになる。僕の受験生の頃は、前置詞が付く動詞の熟語はとにかく丸暗記がふつうだったんだけど、今では熟語集にも前置詞の基本イメージを使って、熟語を体系的に整理して覚えさせてくれるものが出てきている。そうしたものの方が自分に合っていると思えば、取り入れてみればいいし、昔の受験生のようにがむしゃらにガリガリ暗記する方が性に合っていると思うならそうすればいい。

ただ、僕は授業では、なるべく理屈で説明できるものはそうするようにしている。その方が覚えやすくなる人もきっといるだろうし、ガリガリ丸暗記型の人にも、記憶を強化する助けになると思うからだ。

まあ、どのように熟語を覚えるにしても、例文はなるべく見るようにした方がいいぞ。日本語訳だけガリガリ丸暗記は、さすがに覚えにくいだろうからね。

おお、脱線しちゃったけど、for goodに話を戻そう。できたら「for good=永遠に」と丸暗記してほしいんだけど、でもそれにしても不思議な熟語だろ。僕も長い間、なんでこの熟語がこんな意味になるのか分からなかったんだけど、調べてみて理由が分かったので、参考までに言っておくよ。

このgoodは名詞で、「良い結論」といった意味だったみたいだ。for goodで「良い結論として」となる。問題文で言うと、「彼は良い結論として故国を去った」となる。でさ、ふつう「良い結論」は後から覆ったりしないで、ずっと変わらないよね。そこから、

「彼は良い結論として故国を去った」→(良い結論はその後も変わることはない)→「彼は永遠に故国を去った」

となったということらしいんだ。もし覚えにくいという人は、参考にはなるんじゃないかな。

 

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