#64 伊東先生の英文解釈教室②
2022/3/22
さて今回扱う英文は、私たち日本人がテーマになっている。日本史を学べば分かるように、古来日本人は外国の模倣をすることで発展してきた。私たちがふだん使っている「漢字」は中国から取り入れたものだし、古代日本の「律令制」「都城制」も中国の真似をしたもの。「元号」も中国から来たものだけど、本家本元の中国では今では使われなくなっているのに、日本では使われているのは面白いね。近代日本の「文明開化」は「西洋化」のことだよね。では本文を読んでいこう。
➀の最大のポイントは、主語の範囲を正しく特定できたかどうかだ。Whetherは接続詞。peopleまでで節を構成している。続くto what extent they are imitativeはいわゆる間接疑問文。その後のand why they are soを見た段階で、why以下も間接疑問文と判断した上でandの働きを考えないといけない。最初のWhether ~ peopleも間接疑問文なので、このandは
A, B, and C
という形で、3つの要素A、B、Cを結んでいることになる。ここでは3つの要素が全部間接疑問文というわけだ。
さて、いつも言っているように、英文解釈の最大のポイントは「文のSとVを確定する」ことだ。間接疑問文は名詞的に使われる、つまりSやOやCになれるよね。今見たandで結ばれた間接疑問文は文頭に位置していることから、この3つ全体がSであると考えることになる。
こうしてSが確定したということは、当然直後にVが出てくるはずだ。2行目真ん中のareがVだね。
もちろん直後のquestionsがC。
that以下は不完全文だから、thatは関係代名詞。
ここまでの単語の確認をしておくと、1行目のthe Japaneseは「the+国民を表す複数形の名詞」で「国民全体」を表す用法。Japaneseは単複同形名詞だよね。複数扱いされるのでbe動詞はareが使われている。
imitativeはこの文のキーワードで、日本人の特徴を述べる語として使われているね。日本語で模造品のことを「イミテーション」ということがあるけど、あれの形容詞形だ。ここのimitativeはtending to imitate「真似をする傾向がある」という意味。
peopleは「人々」ではなく「国民」が正確な訳。ふつうはpeopleにaは付かないけど、ここでは付いていることに注目しよう。aが付いたり、数詞が付いて複数形の-sが付くpeopleは「国民、民族」と訳します。だから、
two people
two peoples
この2つはかなり意味が違うことになる。もちろん上は「2人の人」という意味だけど、下のpeopleには複数形の-sが付いているね。だから下の方は「2つの民族(国民)」と訳さないといけない。
3行目のboth byを見た瞬間に、both by ... and by ...という表現が後ろに来ることを予想できた人は素晴らしいし、それがboth A and Bをただの暗記すべき熟語で終わらせずに、文章読解に活かす姿勢なんだ。
in defenseとin criticismのinは難しいけど、「擁護の中で」→「擁護(しようと)して」、「批判の中で」→「批判(しようと)して、批判的に」と考える。このinは「目的」を表す特殊な用法だ。
The soldiers died in defense of their country.「その兵士たちは国を守る中で(守ろうとして)命を落とした」
A farewell party was held in honour of the retiring professor.「退職する教授のために送別会が開かれた」
I‘ll buy you lunch in return for your help.「助けてくれたお礼に昼食をおごります」
本文のダッシュの後ろの2つの「in+名詞」はhave been commentedという動詞を修飾している。「批判しようとしてだけでなく擁護しようとして論評されてきた」というように読むのが正しい。
では②に行こう。of equal interestの「of ~ interest」のつながりを、有名なof importanceと同じように考えられた人は素晴らしい。of importance=importantと同じように、of interest=interestingと考えていい。equalを含めると、of equal interest=equally interesting「同様に興味深い」という書き換えができる。
why以下は間接疑問文。
the Westは「西洋、欧米」の意味。ヨーロッパと北アメリカを指す言い方で、the Occidentと言うこともある。この反対がthe Orient「東洋」だ。
soは「それほど」。soをみたら「とても」と機械的に訳す人が多いけど、元は「それほど」という指示語的な意味だよ。
sensitiveを「敏感な」と訳しても試験では減点されないと思うけど、では「この問題に対して敏感」とは一体どういうことを言っているのかをできたら考えてほしい。「敏感」を国語辞典で引くと「敏感=感覚が鋭いこと」のような語釈が載っている。小型の国語辞典1冊と、中型の国語辞典2冊を調べたけど、これ以外の意味は載っていなかった。ちなみに国語辞典の「小型」とは、項目数が10万に届かないものを言うらしい。有名な「新明解国語辞典」をはじめ、本屋さんに置いてある国語辞典のほとんどは「小型国語辞典」に分類される。一方「中型国語辞典」とはどういうものかというと、一番有名なのが「広辞苑」だ。あれなんか、一般の人の感覚だと「大型」だと思うかもしれないけど、専門的には「中型」に分類されるらしい。他にも「大辞林」や「大辞泉」も「中型国語辞典」に分類される。項目数は20万を超える規模を誇る。
話を戻して、では「この問題に対して敏感な」を「この問題に対して感覚が鋭い」と言い換えてみて、一体どういうことを言っているかが分かり易くなったかというと、残念だけどそうじゃないね。
ここでこう考えてほしい。ふつうは「sensitive=敏感な」と訳すけど、もしかしたらsensitiveには他の意味もあるのではないかと。
ある英和辞典ではこのように意味が説明されている。
❶〔他人の感情などに〕気を配る、敏感な
❷神経質な、傷つきやすい、気にする
❸〔刺激などに〕敏感な
❹〈問題などが〉取り扱いに慎重を要する
❺〈計器などが〉感度のよい
本文では「この問題」がsensitiveの対象だ。そうすると、❶と❸の〔 〕内の情報から考えると、どうもこれらの意味で使われているわけではなさそうだ。❹と❺は〈 〉内に、これらの意味の時の主語がどういうものであるかの情報が書かれている。本文のsensitiveの主語はweつまり「人間」なので、❹や❺の意味ではないと判断できる。残ったのは❷で、
She is sensitive about her weight.「彼女は体重のことを気にしている」
という例文が載っている。前置詞はtoも使われると書かれているので、本文のsensitiveはこの意味でよさそうだと考えることになるよ。sensitive to this issueは「この問題のことを気にしている」と訳すのが最も正確だと思う。
ちなみに英英辞典では
sensitive: easily offended or upset
という定義が見つかる。「怒り易い、気にしがちな、動揺し易い」という意味がsensitiveにあると分かる。他の例文も挙げておくと、
She is sensitive to criticism.「彼女は批判に対して敏感だ」→「彼女は批判に動揺し易い」
He is sensitive about a scar on his cheek.「彼は頬の傷跡について敏感だ」→「彼は頬の傷跡のことを気にしている」
and why。andを見たら何と何を結んでいるのかを考える。ここは簡単。andの後ろがwhyで始まる間接疑問文だから、もちろんandの左の同じくwhyで始まる間接疑問文と結ばれている。
copyingは、この文脈では1行目と2行目で出てきたimitativeと関係していると考えなくてはいけない。
このconstituteは難しい。
ⓐIreland is one of the 27 countries that constitute the European Union.「アイルランドは欧州連合を構成する27ヶ国のうちの1つだ」
このconstituteはmake upの意味だけど、次の2つの例文ではそうは考えられない。
ⓑThe Olympic Games constitute an important international event.「オリンピック大会は重要な国際的行事とされている」
ⓒHis remark constitutes a threat.「彼の発言は脅しだ(脅しに等しい)」
ⓑのconstituteはbe considered asに置き換えができるし、ⓒのはamount to ~「~に等しい」の意味と考えていい。be動詞と同じと考えていい場合もある。まあⓑやⓒのconstituteも大雑把に言えばbe動詞に近いからね。本文のconstituteはbe動詞と同じと考えてthat節の中を訳すと、「模倣するという行為は大変に許し難い行為である」のようになります。
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