英語

no more thanなど

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2021/7/12

【1】はじめに

no more thanなどのパターンは、たいては次のように教わります。

 

1) no more than~「~だけ、~しか~ない」(=only~)
2) no less than~「~も」(=as much as~)
3) not more than~「多くても~、せいぜい~」(=at most~)
4) not less than~「少なくとも~」(=at least~)


だいたいはその通りなのですが、少し不正確です。一つ一つ、検討していきましょう。

 

【2】no more than+数字

no more thanは、次に数字を置いて、数字がいかに小さいかを強調する表現です。その数字が客観的に小さいかどうかは別問題です。これはあくまで話し手の主観的な気持ちを表すものだからです。そして主に「~だけ/~しか~ない」と訳されます。

 

そしてこの数字は、可算名詞も不可算名詞も可能です。なぜなら、moreはmany(可算)とmuch(不可算)の両方の比較級だからです。

 

a) The discussion lasted for no more than 30 minutes.
「その議論は30分しか続かなかった」
b) I earned no more than 50,000 yen this week.
「今週は5万円しか稼がなかった」


a)の例文では、話し手は30 minutes(可算名詞)が短いと思っているのです。そしてb)の例文では、1週間に50,000 yen(不可算名詞)稼ぐのが少ないと思っているのです。

 

【3】no less than+数字

ふつうは、no less thanと教わりますが、no fewer thanという言い回しもあります。no less thanは後ろに不可算名詞も可算名詞も置けますが、no fewer thanの後ろには可算名詞だけが置けます。どちらも後ろには数字が置かれ、そして話し手はこの数字がいかに大きいかを強調しており、「~も」と訳されます。「ボク、300万円も儲けたよ」の「も」です。もっとも、この数字が大きいということは話し手の主観的な気持ちになります。

 

c) He has no less than 12 children.
「彼には12人も子供がいる」
d) She spends no less than 50,000 yen on clothes every week.
「彼女は毎週5万円も衣類に費やす」
e) No fewer than 30 people were present.
「30人も出席した」


c)は、no less than+可算名詞という形ですが、d)はno less than+不可算名詞という形になっています。またe)はno fewer than+可算名詞という形ですね。いずれも、than以下の数字が大きいと話し手が考えています。

 

【4】no 比較級 than=as 原級 as

そもそも、no 比較級 thanはどのように考えればいいのでしょうか。以下の3つの例文を比較してみて下さい。

 

f) Tom is much taller than Jim.〔差は
g) Tom is a bit taller than Jim.〔差は
h) Tom is no taller than Jim. 〔差はゼロ


いずれも比較級 thanという形ですが、どの程度の差があるのかをmuch, a bit, noで表しています。muchならば差は大きく、a bitならば小さいのですが、noならば差はゼロになります。つまり、h)の例文では、TomとJimの身長差はゼロなのです。h)をさらに検討してみましょう。

 

h) Tom is no taller than Jim.


この例文では、noはどの単語を修飾しているのでしょうか。

 

まず、このnoは比較級 thanを修飾しており、両者の優劣関係を否定しています。だから、TomとJimの身長には優劣がないのです。優劣がないのですから、as ~ asを使って言い換えることもできます。

 

次に、このnoはtallも修飾しています。だからno tallは「身長は高くない」=「身長は低い」という意味になり、no tall=shortというふうに考えられます。

 

すると、h)は次のように書き換えられます。

 

h) Tom is no taller than Jim.

=Tom is as short as Jim.


つまり、〔no 比較級 than=as 原級 as〕であり、その際に比較級の語と原級の語とは反意語になるのです。no taller than=as short asであり、あるいはno stronger than=as weak asとなるのです。これを一種の公式として覚えておくといいかもしれません。

 

さて、この公式をno more thanなどに応用すると、次のようになります。「no more than+数字」は、数や量が少ないことを強調するもので、「~しか~ない/~だけ」と訳されます。いずれも「as few[little] as+数字」への書き換えが可能です。そして、いずれも数や量が少ないことを言うのだから、onlyを使っても意味が変わらないのです。

 

no more than+可算名詞=as few as+可算名詞=only+可算名詞

no more than+不可算名詞=as little as+不可算名詞=only+不可算名詞


a) The discussion lasted for no more than 30 minutes.
= The discussion lasted for as few as 30 minutes.
= The discussion lasted for only 30 minutes.
「その議論は30分しか続かなかった」
b) I earned no more than 50,000 yen this week.
=I earned as little as 50,000 yen this week.
= I earned only 50,000 yen this week.
「今週は5万円しか稼がなかった」


また、no less-やno fewer-のほうは、逆に大きいことを強調するもので、「~も」と訳されます。

 

no less than+可算名詞=no fewer than+可算名詞=as many as+可算名詞

no less than+不可算名詞=as much as+不可算名詞


c) He has no less than 12 children.
=He has no fewer than 12 children.
=He has as many as 12 children.
「彼には12人も子供がいる」
d) She spends no less than 50,000 yen on clothes every week.
= She spends as much as 50,000 yen on clothes every week.
「彼女は毎週5万円も衣類に費やす」
e) No fewer than 30 people were present.
= As many as 30 people were present.
「30人も出席した」

 

【5】no more than+数字(付記)

現代英語では、「no more than+数字」を「~だけ/~しか~ない」以外に、「多くても~」という意味でも使うことがあります。

 

i) Summarize the text in no more than 1000 characters.


この例文を、「本文を1000字だけで要約しなさい」と解釈すると、ちょっと妙ですよね。ここでは、「本文を多くても1000字で要約しなさい」=「本文を1000字以内に要約しなさい」という意味になっています。つまり、no more thanが「多くても~」という意味で使われているのです。(現代英語では、not more than~「多くても~」という言い方の代わりに、no more than~を使うことがよくあるのです)

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