『精神的な幼さ』と国語学習
2020/1/31
いよいよ2月の中学受験がはじまりますね。
先日、小4の保護者さんとやりとりしたときに聞いた言葉です。
「塾の国語の先生に『(自分の子どもは)まだ精神的に幼い』と言われた」
精神的に幼い、、、なかなかストレートな物言いだなと思いますが。それでは、「だから打つ手なし」という結論になってしまうのでしょうか?
全てをすぐに解決することはできないにしても、今やるべきことはあると思います。
そもそも、「精神的な成長」が国語の読解に関係するものなのでしょうか。
それは確かに「関係する」でしょう。
小学1年生が中学生の思春期の葛藤を理解することができるでしょうか。表面的な理解すら、できないんじゃないかと思いますね。
ただ、声を大にして言いたいのは、次のことです。
子どもの成長は各人それぞれプロセスが違います
いろいろな小学生を見ていると、小4〜小6のどこかで、グッと中学生らしくなる時期がやってきます。それは成長したあとでないと気づかないものです。「いつ成長する」なんてことは分かりません。そのときに身体の外見的な成長だけでなく、思考力、抽象力も成長したなと実感するときがあります。
ただ、そのタイミングは人それぞれで、大人がどうこうできません。
大事なのはその成長の時期に必要な栄養を、適切な練習を続けながら準備しておくことだと思います。
具体的には、どういう「栄養」か?
国語で言えば、「語彙」と「読解」です。その中でも日々積み重ねが必要で、あとまわしにできないのは、(両方と言いたいところですが)特に「語彙」です。
「読解」の方法というのは小・中・高とずっと同じものです。中学受験での訓練はそのまま大学受験へと使うことができます。これは長期的な視野で育てていくものです。
問題は「語彙」。中学受験では、たくさんの抽象的な語彙が必要になってきます。
以下は、最近のサピックス小学四年の組分けテストで出てきた言葉です。
「自然淘汰」
「形質」(生き物の特徴や性質のこと)
「個体」(生物学的な意味で)
とくに「形質」なんてのはかなり背伸びした言葉です。これを全小学四年生に「知っておくべき」というつもりはありません。
この本文を読む小学4年生は、「なんだこれ?」と思いながら、注意書きの「生き物の特徴や性質」という部分をヒントにイメージしながら読み進めていけば問題はないのです。
でも、逆にいえば、その「特徴」「性質」という言葉の意味は理解しておかなければいけないということです。
そしてむずかしいのは、この本文では「形質」という言葉がやたら出てきます。そのたびに、「形質=生き物の特徴や性質」という言い換えを代入しながら読んでいかなくてはいけない。
一般の小学四年生がやっていることと比べれば、明らかに高度です。
ここで、例えば、「形質」という言葉の意味を追うことができなかったために、失点してしまったとしましょう。
反省すべきは「形質」という言葉が理解できなかったことではありません。
むしろ、「特徴」「性質」という言葉に、どれだけ触れることができていたか、どれだけ意味をわかって使っていたか、その経験量が重要なのです。
大人だったら余裕で知っているであろうこの言葉。しかし、最初に出会ったときは「なんだこれ?」だったはずです。それが何回も文章に出てきてそのたびに覚え直すうちに、いつだったか「あ、そういうことか」と腹落ちするタイミングがあったはずなのです。
お子さんでも同様です。
塾の勉強では多くの「背伸びした語彙」が出てきます。最初はそれらの真意がわからないかもしれない。
でも、少しずつでも、自分が理解可能な語彙を増やしていく中で、自身の身体的な成長していくにつれて、その言葉を理解する土台がいつのまにかできてきます。
その時に、「あ、そういうことか」と腹落ちする経験がいつか起こります。
国語の語彙学習はそのくりかえしです。
最後に
精神的に幼い、早熟である、というのはお子さんによって様々です。
とくに受験勉強のために塾に通い始めたばかりの小学四年生であれば、ある程度子供らしさが残っていて当然です。精神的な幼さから、テストへの向き合い方や勉強の仕方について、もどかしく思ってしまう保護者の方もいらっしゃるかもしれません。
が、先述の通り、子どもの成長は各人それぞれプロセスが違います。これは動かしがたい事実です。
もちろん直近のテストの成績でクラスが上下するという環境で、すぐに成果を出さなければいけないという状況では、悠長なことは言ってられないのかもしれません。
そんな状況下で、やれること、といったら、日々の語彙の積み重ね(と、直近で解いた読解問題の見直し)です。
本人に合ったスタイルで、モチベーションを失わないかたちで、日々の国語の学習に寄り添ってあげること。それが中長期的に必要な国語の学習だと思っています。
・・・
明日、受け持った小6の多くのお子さんは第一志望の受験を迎えます。最初に担当した頃を思い浮かべてみると、「ああ、最初はあんなだったのに、今や過去問ですらここまで読めていた」なんてことを考えたりします。
みんなそれぞれ、明らかに成長していて、なんだか非常に感慨深いです。
これに結果がついてきてくれれば言うことなしなんですけどね。
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