#152 伊東先生の英文法教室➁(後半)
2025/3/30
じゃあ次の大問に行こう。同じく学習院の問題だ。
⑴は少し難しい。文頭の否定の副詞littleについて知っているかどうかが問われている。
Little did I dream that I would meet you here.「ここであなたに会うなんて夢にも思わなかった」
まずこのlittleは副詞で、aは付かない。そして意味は「ほとんど~ない」ではなく、「まったく~ない」という完全否定的な意味になることも押さえておこう。
この特殊な意味のlittleは文頭に出ることがよくあるんだけど、その場合倒置が起こることになります。否定の副詞が文頭に出ると、文全体を疑問文の語順にしないといけないという話は、文法の時間でしたはずだ。だからこの例文でも、did I dreamという疑問文的な見た目になっている。
ちなみに問題文の(ロ)のfitは名詞で、「適合」といった意味です。a perfect fit for ~なので「~に完全に適合している」、つまり「~に完全にふさわしい」といった感じで捉えるといい。
⑵は簡単。suffer from ~という基本熟語の知識が問われています。
I suffer from hay fever.「私は花粉症です」
⑶はやや難しい。まずunlessの後ろの省略を補うと、
unless (they are) stating otherwise
接続詞の後ろで「S+be動詞」の省略が起こることがあるというのは、前にどっかで話したことがあると思う。
こうして省略されたところを復元すると、おかしな点に気付けるんじゃないかな。
このtheyは、主節の主語であるThe views「(このサイトで表明されている)見解」を指しているね。そうすると、
unless the views are stating otherwise
と言っていることになるんだけど、おかしなところが2つあることに気付けるかな?
まずは、state「述べる」という行為は「人間」がするものであって、view「見解」がするものではないということ。viewはむしろstateされる立場の単語だよね。
She stated an odd view.「彼女は奇妙な見解を述べた」
この例文では、stateの主語は「人間」で、stateの目的語がviewになっている。何もおかしなところはないね。
あと1つおかしなところは、他動詞stateの目的語が無いということ。otherwiseは副詞だから、もちろん目的語ではない。
本当は、
unless they [=the views] are stated otherwise
とならなくちゃいけないんだ。つまり受け身文にするということだね。こうすれば、「viewはもともとstateの目的語だったが、受け身文なので主語の位置に移動した」ということになるから。
この文を直訳すると、「それとは違うように見解が述べられている場合を除いて」となる。ここで言っているotherwise「それとは違うように」とは、主節で述べられている内容とは違うように、ということ。つまり、「このサイトの見解は完全に筆者のものである」という内容とは違う内容をotherwiseは指していることになる。ストレートに言うと、otherwise=「見解は筆者のものではないというように」ということ。
なので、unless they [=the views] are stated otherwiseは、
「見解は筆者のものではないと述べられている場合を除いて」
と言っていることになります。文全体の意味としては、
「このサイトで述べられている見解は完全に筆者のものであるが、ただしそうではない(=筆者のものではない)と述べられている場合は除く」
となる。自分の見解にはいちいち「これは自分の意見だよ」という断りを入れないで、他人の見解を述べる時にはそうと分かるように、たとえば「〇〇教授が言うには」のように明記しているということ。
otherwiseという単語は実に厄介だから、ここで詳しく扱ってみよう。なぜ厄介かというと、まずは多義語であるということ。そして、otherwiseが具体的にどのような意味を表しているのかは文脈を見て判断しなければいけないということがあるからだ。
ⓐDo as I tell you; otherwise you’ll be sorry later.「私が言うようにしなさい。そうしないと後で後悔することになりますよ」
ⓑThey think he does well at school; I believe otherwise.「彼は学校でよくやっていると彼らは考えているが、私の考えは違う」
ⓒMy house is old, but otherwise satisfactory.「私の家は古いが、その他の点では満足している」
ⓐのような例文が受験生にはなじみのあるものだと思う。「さもなければ、そうしないと」などと訳すotherwiseで、よく仮定法の勉強の時に出てきたりする。
ⓓI’m worn out! Otherwise I would play with you guys.「疲れた!そうじゃなければみんなと遊ぶんだけど」
このotherwiseはif節で書き換えられる。
ⓓ’ I’m worn out! If I weren’t worn out I would play with you guys.
実際は疲れているけど、「もし疲れていなければ」ということなので、if節では仮定法過去のwereが使われている。この「現実とは反対の状況を仮定条件」として簡潔にotherwiseで表すことができるということだ。
でも、こうしたif節の代わりとしてのotherwiseは、必ずしも「現実と反対の状況」というわけではなくて、「実現の可能性のある状況」に対して使うこともできる。それが例文ⓐで、これをif節で書き換えると、
ⓐ’ Do as I tell you; if you don’t do as I tell you, you’ll be sorry later.
if節の中は、仮定法ではなく、ふつうの現在形don’tになっているね。「あなたが私の言うとおりにしない」ということがあり得ることとされているわけだ。
ⓐとⓓを見比べてほしいんだけど、otherwiseが可能性のあることと無いことのどちらを言っているのかは、主節の助動詞の形を見れば分かるようになっていることを確認しておこうね。ⓐではwillが使われている。だからotherwiseの内容は「実現可能性のあること」を言っていると判断できる。それに対してⓓでは過去形のwould、つまりwillの仮定法過去形が使われている。だからotherwiseの内容は仮定法的な内容、すなわち「現実の反対のこと」を言っていると判断できるわけだ。
でも、ⓐとⓓのどちらのotherwiseも、if notで書き換えができるという意味では同じと考えていいよ。
ではⓑに行こう。このotherwiseは「違ったように」という意味で、differentlyに書き換えができます。ではこの例文で「違ったように」とは、具体的にどのような意味なのか?それは文脈を見て考えないといけない。
もちろん、直前の「彼は学校でよくやっているという彼らの考え」とは違う、ということなので、具体的には「彼は学校でよくやっていない」といった内容を言っているはずだ。
ⓐ、ⓓ、ⓑのotherwiseが具体的に何を言おうとしているのかは、ちゃんと文脈から推測しないといけないということが分かってもらえたと思うけど、それは最後のⓒもいっしょ。
このotherwiseは「その他の点では」と訳す場合で、in other waysと書き換えができるよ。
では、「その他の点」の「その」とはいったい何を指しているのか?もちろん文脈を参考にしないと分からない。この例文では、直前の「私の家が古い」ということを指していて、それ以外の点では家に対して満足しているということだね。家の古さには満足していないけど、家の広さとか、立地条件とかには満足しているということ。
もちろん受験生は、多義語otherwiseの複数の訳し方を覚えて、例文を正しく訳せるようにならないといけない。
でもね、単語集的に
otherwise=➀「そうでなければ」 ➁「違う方法で」 ➂「その他の点では」
のように、わけもわからず訳を丸暗記するというのはあまりいい学習法とは言えない。もちろん最初はそういうふうに丸暗記するのも仕方ないとは思うけど、できたらみんなにはもっと知的な英語学習をしてもらいたいと思う。
改めてotherwiseの3つの意味を比べてみると、何か共通点が見えてくるんじゃないだろうか?
3つとも、「何かある事があって、それとは違う事」をotherwiseは表現していると言えるんじゃないかな。
otherwiseにはother-という要素が入っているね。もちろんこれはみんなが知っている「他の」という意味を表す。そして後半の-wiseだけど、これはwayと同じ意味を表す要素なんだ。likewise「同様に」やclockwise「時計回りに」の-wiseも同じだ。そしてwayには「方法」の他に「点」の意味もある。
other(他の)+wise(方法・点)
例文ⓐ、ⓑ、ⓓのotherwiseでは「wise=方法」、ⓒのotherwiseだと「wise=点」ということになる。ⓐやⓓのotherwise「もしそうでなければ」というのは、直前で述べられている状況とは違う他の(other)状況のあり方(wise)を想定すれば、ということ。「何か物事を成し遂げる方法」だけじゃなくて、「状況のあり方(condition)」も英語ではwayで表現できる。
otherwiseについてかなり詳しく説明したけど、問題文のotherwiseはⓑのと同じで、differentlyに書き換えができます。
⑷は簡単。品詞についての問題。
-lyで終わる語は基本的には「副詞」だということは、みんなも知っていると思う。
厳密に言うと、
形容詞+-ly→副詞
ということになる。
名詞+-ly→形容詞
もついでに知っておいてほしい。friend(名詞)+-ly→friendly(形容詞)なんかがそうだ。
dangerousが形容詞だというのは中学英語の範囲。それに-lyがついたdangerouslyはもちろん副詞。
だとすると、(二)のdangerouslyは明らかに使い方が間違っているよね。副詞が名詞moveを修飾できるわけがない。a dangerous moveと形容詞形を使わないといけない。
⑸は受験生の注意力を試す問題。問題文は、「私がふだん買い物に行くショッピングモールは、着いた時にはすでに閉まっていた」といった内容だ。
When I woke up, my parents had already left home.「私が目を覚ました時には、両親はすでに家を出ていた」
これは高校の教科書レベルの基本例文。過去完了形は、「基準となる過去」、この例文では下線を引いた過去形wokeが指している時間だけど、その過去の時間よりもさらに前の時間を表すのが基本的な使い方。
だからもちろん、
When I woke up, my parents have already left home.
は絶対に間違い。現在完了形は、基準となる時間が常に「現在」だからね。基準となる時間が「現在」の現在完了形を使っておきながら、同時に過去形wokeも基準時として使っているのは当然NG。
問題文も、これと同じ過ちを犯している。when I got thereと過去形を使って「過去」を基準時にしているので、現在完了形has ~ closedは使えない。過去完了形had ~ closedに直す必要があります。
この先生の他のブログ
今回は学習院大学の文法問題を見ていこう。熟語の知識もけっこう問われているので、知らなかった熟語は貪欲に覚えていこうね。まず⑴だけど、これは不定代名詞についての問題だ。選択肢のalmost, any, most, muchは、中学生でも知っているような単語だけど、これらの品詞や語法について正確に知って...
全国から多くの受験生が合格祈願に訪れる太宰府天満宮は、梅の名所としても有名です🌸歴史上の人物である菅原道真が、なぜここで「学問の神様」として祀られているのか、また太宰府天満宮のそこここになぜ梅のマークが見られるのか、その理由を読んでみましょう。 Flying apricot &...
早いものでもうクリスマスの時期となりました。今回は、サンタクロースについての記事を読んでみましょう。そもそもクリスマスはイエス・キリストの誕生を祝う日ですが(☞ブログ#103㉕)、「サンタクロース」はそれと何の関係があるのでしょうか?あまりにも当たり前で、だれも疑問に思わないクリスマスとサンタクロー...