#153 伊東先生の英単語教室➀
2025/4/11
さて、今日は2つの多義語について勉強しよう。宿題はしてきたかな?みんなには、companyとchargeという2つの多義語の例文を訳すよう宿題を出していたね。辞書を調べてもOKと言ったよね。
最初はcompanyの訳し分けだ。
一番有名な意味が「会社」だよね。⑴のcompanyはその意味で、「東インド会社は1600年に設立された」と訳せていればOK。東インド会社は、世界史で勉強したんじゃないかな。1600年に作られたのはイギリスの東インド会社で、エリザベス1世の頃だ。
「Tiffany & Co.」のように、会社名のCo.という表記は、companyの省略形ということも知っておこう。
⑵はことわざなんだけど、みんなの持っている辞書の中にも、このことわざを載せているものがあったかもしれない。
このcompanyは「仲間」という意味なんだけど、ただこれは集合名詞的な用法で、不可算名詞になる。同じく「仲間」という意味の可算名詞がcompanionで、companyと語源的に同じ単語です。
じゃあここで、companyの語源について説明しておこう。
companyという単語は3つの要素に分解できるんだ。
com+pan+y
最初のcomは「いっしょ」という意味。common, communication, communityに見られるcom-もそうだ。
次のpanは何だと思う?なんと、これは、あの食べる「パン」のことなんだ!
で、最後のyは特に具体的な意味は無くて、この語が「名詞」であることを示している。libraryの最後の-yなんかと同じだ。
ということで、companyは語源的には「いっしょにパンを食べる仲間」といったような意味なんだ。日本語的に言うと、「同じ釜の飯を食う仲間」といった感じかな。
そこから、誰もが知っている「会社」の意味も生まれた。「会社」って、いっしょに経済活動をしている仲間の集まりのことだからね。そうそう、さっき「Tiffany & Co.」という例を出したけど、このCo.つまりcompanyはまさに「仲間」というのが元々の意味なんだ。つまりこれは、「Tiffanyとその仲間たち(で作った会社)」ということ。日本には、こうした「個人名+その仲間たち」みたいな感じの会社名は無いと思うけど。
じゃあ、⑵の訳を考えてみよう。まずA man is knownは「人は判断される」といった意味で、byは「基準」を表す特殊な用法。by以下のことによって人は判断されるということだ。the companyとheの間に関係代名詞の省略。keepはまあ「付き合う」と訳すといいかな。
全体では、「人は付き合っている仲間によって判断される」となる。何を言っていることわざかというと、その人がどういう人であるかは、どんな仲間と付き合っているかを見れば分かる、と言っています。日本語でも「類は友を呼ぶ」とか「朱に交われば赤くなる」とか言うよね。そんな感じのことわざだ。
ついでに、もう一つ「仲間」の意味のcompanyが使われていることわざがあるので、紹介しておこう。
Two’s company, three’s none.「二人なら良い連れだが、三人になると仲間割れが起きる」
たとえば、共通の趣味を持つ者同士が二人で旅行したとする。もちろんふつうは仲良く旅をすることになるね。でも、たとえ同じ趣味を持つ仲間であっても、三人で旅行するとどうなるか?A・B・Cの三人のうち、AとBが特にお互いに気心が知れて、旅行中もしょっちゅうこの二人で喋っているんだけど、Cはその二人の会話になかなか入り込めず、のけ者にされていると感じてしまうかもしれない。もちろん絶対にそうなるわけじゃないだろうけど、三人だとどうしても「2対1」という関係性になりがちだということを、このことわざは言っているんだ。また、辞書によると、これは恋人同士を二人きりにしておく時に使われることが多いみたいだ。日本語で言うと、「お邪魔虫はお断り」という感じかな。まあ、いまどき「お邪魔虫」なんて言わないか。
どうでもいい話だけど、今本屋さんで売っている主な学習英和辞典で、この2つのことわざが載っているかどうかを調べてみたんだけどね。調べた16冊のうち、A man is known by the company he keeps.は12冊に、Two’s company, three’s none.の方は11冊に載っていた。だから、みんなの持っている辞書にも出ているかもしれないね。
あと、この2つの英文の違いは分かるかな?
ⓐHe’s bad company.
ⓑHe’s in bad company.
ⓐの方は「彼は悪い仲間だ」ではピンと来ない。「仲間として悪い」とは、つまり「いっしょにいて楽しくない」ということ。「彼は一緒にいても楽しくない人だ」と訳せます。
ⓑは前置詞inがあるので、「彼は悪い仲間の中にいる」が直訳。この場合の「悪い仲間」は「ガラの悪い」といった意味で、「彼は悪い仲間と付き合っている」と言っています。
⑶はもちろん「私は彼らの会社を楽しんだ」では意味不明。このcompanyは「いっしょにいること」といった感じの意味だ。ここでも語源的意味が生きているよね。
「私は彼らと一緒にいることを楽しんだ」、もう少し自然に訳すと「彼らと一緒にいて楽しかった」となるね。
では、この英文の意味は分かるだろうか?このcompanyも「いっしょにいること」という意味だというのがヒント。
ⓒI prefer my own company.
「私は、私自身といっしょにいることの方が好きだ」が直訳。preferは比較の意味を伴う単語だよね。prefer A to B「BよりAが好きだ」でお馴染みのはず。ただ、この例文ではto以下が省略されているね。補ってみると、
ⓒ’I prefer my own company to others’ company.
すると、「私は、他人といっしょにいるよりも私自身といっしょにいることの方が好きだ」ということになる。何を言っているかというと、「人といっしょにいるよりも自分ひとりでいる方が好き」と言っているんだ。
ⓓI prefer being alone to being with others.
と言い換えることができるよ。
⑷のcompanyは「来客」という意味で、⑵のcompanyといっしょで不可算名詞になっている。
最後の⑸のcompanyは、「一団、一行」というニュアンス。つまりは「人の集まり」ということなんだけど、ここは特に「劇団」という意味で使われています。ちなみに、有名な「劇団四季」の英語名はShiki Theater Companyと言うみたいだよ。
ということで、companyには「会社」「仲間」「いっしょにいること」「来客」「一団、一行、劇団」といった色んな意味があったわけだけど、語源の「いっしょにパンを食う仲間」というイメージから派生したと考えればだいぶ覚えやすくなるんじゃないかな。
⑹からは、もう一つの多義語chargeの例文になっているね。こちらは名詞と動詞の両方の使い方があります。これも本当にいろんな意味があって厄介だ。一つずつ見ていこう。
ホテルのchargeということで、これは「料金」の意味になります。この意味のchargeは、熟語free of charge「無料で」で有名かな。あと、レストランで使われる日本語の「テーブルチャージ」もここから来ています。
ところで、「料金」を意味する英単語はいくつかあって、他にprice, cost, rate, fare, fee, tollなどがある。chargeは主に「サービスの利用料」を意味するんだけど、他の単語についても例文を確認しておこう。
The price of these clothes is reasonable.「この服の値段[価格]は手頃だ」
The cost of living is increasing these days.「生活費はこの頃高くなってきている」
What’s the hourly rate for renting this car?「この車の1時間当たりのレンタル料金はいくらですか?」
Do you know what the fare from here to Tokyo Station is?「ここから東京駅までの運賃はいくらか分かりますか?」
There is no entrance fee.「入場は無料です」
I paid a toll of 3,200 yen to travel the expressway.「高速道路を使って移動するのに3,200円の料金を支払った」
priceは「商品の値段・価格」の意味。the price of the pianoなら、楽器屋で売っているピアノの値段のことになる。
costは「何かを作ったり手に入れたり維持したりする時に必要になる費用」のこと。the cost of the pianoと言えば、ピアノの製造にかかる費用のこと。
rateは「単位当たりの料金」のことで、電話料金や郵便料金、レンタカーの使用料、ホテルの料金などに使われます。なので、ホテルの場合はchargeもrateもどちらもOK。
fareは「交通機関の運賃」であることを覚えておこう。
feeは、「専門家への謝礼」と、「入場料」の2つが主な使い方。医者や弁護士から受けたサービスに払う料金、学校に払う授業料とか、遊園地・博物館などの入場料だね。
tollは、「道路や橋の通行料」に使われます。
今言った類義語の細かい使い分けは、最初は気にしなくていいよ。まずは意味が似ているということでまとめて覚えてしまって、慣れてきたら細かい違いもなんとなく頭に入れていけばいい。類義語の中には、入試で問われるから違いを知っていなくちゃいけないものと、入試で訊かれないから違いは分かってなくてもいいものとがある。「料金」を表す類義語は、残念ながら(?)違いをある程度分かっていなくちゃいけないんだけど、まあ最初から神経質にならずに、少しずつ理解を深めていこう。
⑺のchargeは「非難」、⑻の方は「告訴、罪」と訳します。
この2つの訳は、辞書では同じ語義番号の中に含まれていることもあるんだけど、一応区別はしておこう。どう訳し分ければいいかというと、法に触れて逮捕されるような悪事なら「告訴、罪」、法には触れていないけど人の顰蹙を買いそうな悪事なら「非難」と訳すと考えます。
⑺は試験でカンニングをしたという話なんだけど、これは逮捕されるほど重い悪事ではないのでchargeは「非難」と訳せばしっくりくるし、⑻はguilty「有罪の」があるから、charge=「告訴、罪」となります。
⑼のchargeは「責任、担当」といった意味で、熟語in charge ofの形で覚えておくといいよ。
⑽は「充電」の意味のcharge。これは日本語でも「チャージ」と言うかな。
あと、「ICカードなどへのチャージ」も、英語でchargeと言えるみたいだ。
I charged my Suica card with 5,000 yen.「スイカに5千円をチャージした」
最後の⑾は動詞用法のcharge。特に受験生に覚えておいてほしいのは、be charged withという熟語だ。この時のchargeは「告訴する」という意味になります。
ちなみに、同意語のaccuseだと、いっしょに使われる前置詞はwithではなくて他のものになります。知らない人は、復習の時に辞書を引いてチェックしておこう!
The criminal was charged with murder.
=The criminal was accused ( ) murder.☜空欄に入る前置詞を辞書で確認!
改めて、名詞用法のchargeの意味を確認しておくと、
charge=「料金」「非難」「告訴、罪」「責任、担当」「充電」
ある受験単語集では、こうした複数の意味をただ列挙しているだけなので、受験生は訳も分からずひたすら丸暗記することになるだろうね。
一見するとバラバラで、共通点の見当たらないこうした訳語の背景には、何か共通のイメージがあるのではないか?
そう考えて辞書を引いてみると、その「共通のイメージ」について説明があるかもしれない。
特に分かりやすいのは「ライトハウス英和辞典」の図解なので、プリントを見てみて。
もともと、chargeという単語は「重荷を負わせること」といったような意味だった。つまり人になんらかの負担をかけるということだ。そこから色々な意味が派生していったんだ。
「料金」とはつまりは経済的負担のことだね。
じゃあ「非難」は?これは道徳的負担を相手に与えること。
「告訴、罪」は、法的負担ということになるな。
「責任、担当」は、その人が自分の属する組織、たとえば社会とか職場の中で与えられた負担のことで、組織的負担と言っていいんじゃないかな。
「充電」というのは電気的負担を電池にかけること。
という具合に、ぱっと見は何の共通点も無さそうだったchargeのいろいろな意味の背後には、「負荷」という共通要素があったわけだ。
これを知っていると、だいぶ覚えやすくなるんじゃないかな。そして、こうした有益な語源的情報は、単語集ではなく辞書の中に眠っているということも、改めて声を大にして言っておきたいね。単語集だけの単語学習がいかに貧相なものであるか、こういったことからも分かるんじゃないかな。
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