英語

#155 伊東先生の英熟語教室➀(前半)

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2025/4/22

今回みんなには、熟語を含む文を訳してもらってきた。

⑴と⑵のshow upは「姿を見せる」という意味の熟語。

で、ポイントは、⑴のat onceと、⑵のall at onceの訳し分けだ。

まずat onceは「すぐに」という意味で、immediatelyと同じです。⑴は、たとえば「彼」に遊びに来るように電話したら、5分ほどですぐにやって来た、といった感じだ。

でもall at onceになると意味が変わって、こちらは「突然」となる。suddenlyと同じ意味だ。⑵では、「彼」が何の前触れもなく突然姿を現したということになる。

どちらの熟語も、それ以外の意味もあるので、自分の持っている辞書でチェックしておこう。


⑶は難しい。僕自身、受験生時代にこの熟語がいまひとつピンと来なかった記憶がある。当時使っていた熟語集では、「きっぱりとこれを最後に」という訳が載っていた。⑶には「きっぱりと」という意味はどう考えてもしっくりこないね。じゃあ「これを最後に」を当てはめるとどうだろう?「これを最後に彼らを手伝うつもりだ」、これならなんとか分かるかな。つまり、言おうとしているのは「彼らを手伝うのはこれが最後だ」ということだろう。once and for allのニュアンスとしては、「これで決着を付ける」と考えておくといい。

”Will you lend me some money?” “Once and for all, the answer is no!”

単に”The answer is no!”と答えただけでは、今は嫌だと言っているけど、今後考えがyesに変わる可能性がゼロとは言えない。

でも、“Once and for all, the answer is no!”だと、noという返事がこの人の最終結論で、今後どんなことがあってもその返事が変わることはない、というニュアンスが含まれることになるんだ。この人の中では、もう決着が付いていることになるんだな。


じゃあ⑷に行こう。これも結構難しい熟語だけど、仮定法の勉強の時に熟語として紹介されることがある。というのも、このwereは仮定法だからね。

as it wereso to speakという熟語と同じで、「いわば」という意味を表します。

この熟語を覚える時に注意してほしいのは、実はこの「いわば」という日本語の意味を自分が正しく分かっているかどうかを確認することなんだ!というのも、そもそも「いわば」ということばは僕たちがふだん使うものではないし、この言葉の意味を誤解している日本人が結構いるからなんだ。

ⓑ彼はいわば現代のアインシュタインだ。

この日本文は一体どういう意味だろうか?「いわば」という表現があることで、この文の内容が「比喩」的であることが表されている。もちろん「彼」は、あの相対性理論を唱えた、今は亡き「アインシュタイン」本人ではない。でも、「彼」という人物が、アインシュタインに匹敵する独創的で天才的な科学者であることを、この文は言おうとしているわけだ。

ⓑ’彼はたとえて言えば現代のアインシュタインだ。

できたらみんなも、国語辞典で「いわば」を引いて、語釈や例文を確認しておいてね。

英語のas it wereやso to speakも同じく文内容が「比喩」的であることを示す役割がある。

⑷で言うと、「彼=私の先生」と言っているんだけど、でも本当に「彼」が「私」の学校の先生であると言っているわけじゃないんだ。あくまでも「比喩」であるということを示してくれるのがas it wereなんだね。「私」は「彼」という人間からいろいろと学ぶことが多い、そういったことを言おうとしているんだよ。

ちなみになんだけど、高校生を教えていてよくあるのは、

・「いわば」=as it were=so to speak

・「いわゆる」=what is called=what you [they] call

の混同だ。日本語の「いわば」と「いわゆる」は確かに見た目が似ていて紛らわしいんだけど、これを混同してしまうと、それぞれに対応する英語の熟語の意味ももちろん誤解することになってしまう。

「いわば」はもう説明したけど、ここで「いわゆる」と併せて語源を確認しておこう。いきなり古文の授業になっちゃうけど、

「いわば」←「いはば」=言は(「言ふ」の未然形)+ば(条件の接続助詞)

「いわゆる」←「いはゆる」=言は(「言ふ」の未然形)+ゆる(受け身の助動詞「ゆ」の連体形)

いはば」は、現代語的に言うと「もし言うとすれば」ということ。そこから、「たとえて言うならば」という比喩表現の合図になったわけだ。

「いはゆる」の「ゆ」という助動詞は古文の勉強であまり出てこないと思うけど、それはこの助動詞が上代、つまり奈良時代に使われていたものだったかららしい。僕たちが古文で読む文章は、ふつうは平安時代以降のものなんだよね。平安期以降は、おなじみの「る・らる」が使われていきます。というわけで、語源的に見ると、「いはゆる」は「世間で言われている」ということで、いまでもその意味で使われているんだ。

ⓒこれがいわゆる霞が関文学だ。

「いわゆる」が付くことで、「霞が関文学」ということばが世間一般で言われているものであることが強調されている。

ところで、「霞が関文学」って何のことか知ってる?「霞が関」は、省庁が集まっているところとして有名だけど、そこの官僚がよく使う言い回しのことを、俗に「霞が関文学」と言うんだ。たとえば、「前向きに善処します」なんていう言い回しは典型的だな。実際は何も対処するつもりはないんだけど、まさかそんなことを公に言うわけにはいかないから、いかにも私たち官僚はその問題に真摯に取り組みますというポーズを示しているだけなんだ。こうした、曖昧模糊としてどうとでも解釈できる、官僚的答弁のことを揶揄して「霞が関文学」と言ったりする。まあ官僚だけじゃなくて、官僚の用意したペーパーを読むだけの大臣も、いわば(!)霞が関文学の文豪かもしれないけどね(笑)。

みんなには、国語や英語の勉強でことばと格闘して、空疎な霞が関文学ではない、心のこもった、相手の心に響くことばを紡ぎ出せる人になってほしい。

Terry’s what is called [what you call; what they call] an anime geek.「テリーはいわゆるアニメオタクだ」

ちなみに、「世間一般で言われている」というニュアンスは、この熟語を使わなくても、引用符でも表現できます。これは日本語でも同じだね。

ⓓ’ Terry’s an anime geek.

ⓓ” テリーはアニメオタクだ。


⑸は最初見た時びっくりしたんじゃないかな?made believe!なぜmakeの後ろに原形のbelieveが!?英文法的には実に珍妙な表現だけど、これが許されるのはmake believeが熟語だからなんだ。

僕自身、受験生の頃は「変な熟語だなー」と思いながら、とにかく「make believe=ふりをする」と暗記していた。この変てこな熟語の謎が解けたのは、大学に入ってフランス語を勉強した時だった。フランス語では、英語のmakeに当たる動詞(=faire)の後ろで、動詞の原形が使われることが普通にある。実は、英語のmake believeという熟語は、フランス語の表現(faire croire)をそのまま移し替えたものらしい。だから英語としては違和感がある熟語になっているんだね。

英語として自然にするには、make people believe ~と考えてみるといい。これだと「使役動詞+目的語+動詞の原形(原形不定詞)」となるから。つまりこの熟語は「人々に~と信じさせる」ということから、「~のふりをする(pretend)」という意味を表すようになった。

⑸も

She made people believe she was asleep.

と考えると、何も違和感は無いはず。「彼女は人々に、自分は眠っていると信じさせた」ということ。あっさりと「彼女は寝ているふりをした」と訳せればOK。

このmake believeは、子供がよくやる「ごっこ遊び」の意味でもよく使われるみたいだ。

Let’s make believe we are elves.「妖精ごっこをしよう」

elvesはelf「妖精」の複数形。僕は子供の時に「ゼルダの伝説」というテレビゲームをやったことがあるんだけど、その主人公の「リンク」は人間ではなくて「エルフ」みたいなんだ。elfを見ると、僕は「リンク」を思い出す(笑)。

また、makeとbelieveをハイフンでつなげると、品詞が変わって名詞や形容詞になります。

The children played make-believe.「子供たちはごっこ遊びをした」

The little boy told make-believe stories to his sister.「その小さな男の子はお姉さんに架空のお話を聞かせてあげた」

ついでに、make believeと同じく英語的に違和感のある熟語としてmake do with ~も紹介しておこう。

When we got married, we didn’t have any cupboards. We had to make do with wooden boxes.「結婚した頃は食器棚が無かったので、木でできた箱で間に合わせるしかなかった」

この熟語は、「with以下の物で何とか間に合わせる」といったニュアンスです。この例文は、結婚したばかりの頃は食器棚が無かったので、仕方なく木製の箱を食器棚代わりに使うしかなかった、という状況を言っています。ここのdoは、多分みんなも知っているはずの「間に合う」という自動詞のdoだね。with以下の物で間に合わせるということになります。

ちなみに、cupboardは発音に注意しよう。「カップボード」じゃないぞ!正しい発音は辞書で確認を!

 

 

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