#41 誤解されている英語②~some「いくつかの」~
2021/10/7
I have some books.
この英文を訳すよう言われたら、ほとんどの日本人はこう訳します。
「私はいくつかの(何冊かの)本を持っている」
もちろん完全に間違いではないですが、しかし英文の意味を誤解していると言わざるを得ない訳文です。「some=いくつかの」と訳して一体何が問題なのでしょうか?
ここでsomeの意味を確認しておきます。ある英語の辞書では、someをこのように定義しています。
some=an unspecified amount or number of「不定量または不定数の」
ここで重要なのはunspecifiedです。つまりsomeは、後ろの名詞の数量を不定(特定されていない)であることを示しているわけで、「多いか少ないか」については何も言っていないのです。(もし「多いか少ないか」を言いたい時は、many/much/few/littleなどを使います。)
次に、someの訳語とされている日本語の「いくつかの」の意味を確認しましょう。ある国語辞典は次のように定義しています。
「いくつか」=少しの数
これは私たち日本人の実感とも当然合致しています。「いくつかの(何冊かの)本」と聞くと、私たちは少なくても2・3冊、多くても10冊まではいかない数の本を想像するのではないでしょうか。
上の赤の定義と青の定義を見比べれば、「some=いくつかの」とは言えないことが分かってくると思います。「私はいくつかの本を持っています」という和訳は、むしろI have a few [several] books.に相応しいと言えるのではないでしょうか。
では、I have some books.はどう訳せばいいのか?これはなかなか難しい問題で、おそらく日本語には「不定量または不定数」を表す、日常的に使われる1語のことばは存在しません。むしろ日本語では、こういう時は何も言わない方が「不定量または不定数」を表せるのではないでしょうか。
「私は本を持っている」
この日本文では、「私の持っている本が何冊なのか」は完全に聞き手の想像に委ねられていて、1冊でも10冊でも100冊でもどのような冊数を想像してもいいことになります(まさに「不定数」)。someの訳語はどこにも見当たりませんが、これこそI have some books.の和訳として一番ふさわしいのではないかと思います。(もちろん英和辞典には「some=いくつかの」と書いてありますので、some booksを「いくつかの本」と訳して試験で減点されることはないはずです。)
someにはこのように「ぼんやり」といったイメージがあります。
今見てきたのは「数量がぼんやり」という例でしたが、次の例はどうでしょうか。
He was speaking with some girl when I saw him.
someの後ろのgirlが単数形であることに注意してください。「(何人かの)女の子たち」と訳したら誤訳です。girlが単数形ということは、女の子の数は「1人」なのです。それに「ぼんやり」のイメージのsomeがくっついています。そうすると、このsomeは「数がぼんやり」を表しているのではありません(数は「1人」とはっきりしているのですから)。「女の子自体のイメージがぼんやり」していることを表しているのです。この英文の話し手が「その女の子のことを知らない」つまり「その女の子が話し手にとってぼんやりしている」可能性や、「その女の子のことは知っているが、聞き手にはっきりとは言いたくない」つまり「その女の子のことを聞き手にとってぼんやりさせたい」可能性が考えられます。こうしたsomeの日本語訳としては「ある」が適当です。
He was speaking with some girl when I saw him.「彼を見た時、彼はある女の子と話をしているところだった」
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