#73 不思議な発音記号⑥[ʃ]
前回に引き続いて、不思議な見た目の発音記号で子音を表すものを見ていきましょう。
今回取り上げるのは[ʃ]という無声音の子音です。
なんかsを縦にビヨーンと伸ばしたような見た目の発音記号ですね。専門的にはeshという名前が付いているそうです。eshのshはまさに[ʃ]を表しています!
この音は私たち日本人も簡単に出すことができます。よく「静かにして!」と言いたい時に「シー」と言ったりしますよね。あの息の漏れるような「シー」が[ʃ]の音だと思ってください。
英語のスペリングではshがこの音で発音されます。
shop
fish
のshは[ʃ]の音を表しています。


他にも、stationのtiや、sureのsも[ʃ]の音です。


私たち日本人が注意しなくてはいけないのは、
she
see/sea
の音の区別です。
上のshは[ʃ]の音、下のsは[s]の音なので、同じように発音してはいけないということになります。



日本語の「さ行」の「し」と同じ音で発音してよいのがsheの方です。私たちが普段発している「し」の音は、音声学的には[ʃi]と表記されます。なので私たちにとってはsheの発音はとても簡単なのです。
ただし、see/seaは日本語の「し」のように発音してはいけません。なぜならこれらの単語の最初の子音は[ʃ]ではなくて[s]だからです。
ところで、小学校で「ローマ字」を習った時に、不思議に思ったことはないでしょうか?
さ sa
し shi
す su
せ se
そ so
なんで「し」の時だけはhが入るのだろうって、私はずっと不思議に思っていました。この疑問が解けたのは、英語のスペリングと音の関係を学んだ時でした。
日本語の「さ」「す」「せ」「そ」に含まれる子音は[s]です。そして英語のスペリングのsは[s]の音を表せます。なので、「さ」「す」「せ」「そ」はsa、su、se、so、とローマ字で表記されるわけです。
一方で、日本語の「し」に含まれる子音は[s]ではなく[ʃ]でしたね。英語のスペリングで[ʃ]の音を表すのはshです。だから「し」をローマ字表記する時は、その音を正確に表すためにsiではなくshiと書くわけですね。
一度、ゆっくりと「さ」「し」「す」「せ」「そ」を声に出してみてください。その時に、舌が「し」の時だけ後ろに引っ込むことに意識を集中してください。私たち日本人は「さ行」に含まれる子音は全部同じだと思っていますが、「さ・す・せ・そ」と「し」を発音する時に舌の位置が変わることから分かるように、音声学的には「し」だけは仲間外れ(?)なのです。つまり、私たち日本人は意識しないと[si]という音をついつい日本語の「し[ʃi]」と発音してしまいがちなのです。seeやseaを発音する時は、「さ」「す」「せ」「そ」を発音する時の舌の位置で[s]を発音するように心掛ける必要があります。

* * *
「生麦生米生卵(なまむぎなまごめなまたまご)」をはじめ、日本語にはいくつもの「早口ことば」がありますが、英語にもあるようです。今回扱った[ʃ]と[s]の違いに注意して読まないといけない早口ことばをご紹介!
She sells seashells by the seashore,
The shells she sells are seashells I’m sure.
For if she sells seashells by the seashore,
then I’m sure she sells seashore shells.
彼女は浜辺で海の貝殻を売っているよ
彼女が売っている貝殻は海の貝殻だと思うよ
だって、もし彼女が浜辺で海の貝殻を売っているなら
きっと彼女は浜辺の貝殻を売っているからだよ
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