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英語

英語の二重構造 - 句動詞 phrasal verb の話 (その2)

2021/11/24

(前回からの続き)

 英語の non-native speakers である我々日本人には、字面からは理解出来ない意味を併せ持つ多義的な句動詞よりは、明確で限定的な意味を持つラテン語起源等の用語を使って貰う方が遙かに理解が容易です。私などガチガチの学術論文を読む - 句動詞は完全に排除されます- のは得意ですが、米国人の小学校低学年の喋る句動詞に満ちた英語は正直なところ理解しずらい場合もありますね。

 

Cambridge Dictionary の下記例文の意味がわかりますか?

What discussion? You weren't talking to me, you were talking at me!

 議論しただと?君は私と遣り取りせずにまくし立てただけじゃないか!

 

 talk at (someone) は phrasal verb ですが、この句動詞を目にする事は実際少なく入試には覚える必要も特にはないと思いますが、to speak to someone without listening to that person or allowing them to speak 相手の言葉に耳を傾けず或いはモノを言わせずに話す、一方的にまくし立てる、の意味です。talk + at の字面の組み合わせではこの意味は想像出来ないでしょう。そもそもが字面通りでは native 自身が意味が取れないゆえに、 phrasal verb として扱われている訳です。慣用的用法として覚える他はありません。

 

 しかし、OED では talk at の意味としては

to make remarks intended for some one but not directly addressed to him.

<本人には直接向けずに、(実は)その者に意図された話をする、当てこする>、の意味しか掲載されておらず、1899年 の用例(これが最新のもの!)として、He had had no intention..of..talking at her, but the words had struck home. 彼は彼女への当てこすりを言ったつもりは全く無かったが、その言葉は彼女をぐさりと突き刺していたのだ、が出ています。talk at の意味用法がどうやら時間の経過に伴い大きく変わって来ているわけです。この前置詞 at の意味の違いを、最近 web などでしばしば目にする様になった<図式法>で説明することも出来ません。因みに home は<核心へ>の意味の副詞です。(短期間の内に、或いはひょっとして地域に拠り)意味の変動する様な類いの会話表現を学術論文、ましてや条約締結文などには使えない事がお判り戴けるでしょう。

 

 youtube 上で、帰国子女の方などが英語表現についての切り売り動画をアップし、そこそこの視聴者数を得ている例を見る様になりました。それらの表現は phrasal verb 以外にも殆ど口語に関する表現、つまりは informal な表現ですので、咄嗟の一言的な英会話習得-北米で老若男女3億人近くが毎日喋っています-には確実に役立つものの、それらを幾ら覚えても、ハイレベルの英文の読み書きには役立ちませんし、informal な表現を迂闊にも硬い文章やスピーチ中に混ぜて利用するのも良くありません。その区別を心得た上で有効活用することをお勧めします。

 

 雑駁な内容になりましたが、英語の使用に当たっては、formal vs. informal を常に意識する事が大切-残念ながら日本人はこれを意識しないしその指導もほとんど行われない-であり、また、いわゆる熟語に加え、そこそこの数の句動詞 (web 上にリストがあります)を知っておくことは日常会話的コミュニケーションには役立ちまた必須ですが、それをラテン語起源等の意味の明確な、<コンパクト>な言葉に常に置き換える脳内訓練をしておくのが英語力の幅を持たせるのに非常に有効である、これを最後に再び強調しておきましょう。

 

-と、また、大学生、社会人向きの内容となってしまいました。

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