まだるっこしい英語表現
2021/12/24
Cambridge dictionary に以下の用例が掲載されていました:
The high cost of legal representation can influence a person's decision about whether to abandon a claim.
法的代理人(=弁護士)の高コストは、申し立てを中止すべきかどうかについての人々の決定に影響する可能性がある。
influence, decision (from decide), abandon と動詞関連語が3つ並び、和訳しても頭の中が上下左右に翻弄されて意味がスンナリとは入って来にくい文章です。
文としては、<弁護士費用が高いので顧客が訴訟を起こすのを止める場合がある>との意味であり、<決定に影響する>などと曖昧な文言で表現せずに、ズバリと表現すれば良いだけの話になります。まぁ、オブラートに包んでマイルド或いは文意としての公平性を担保した積もりの文章が実は只の悪文だった、との評価になるでしょう。
実のところ、<人が~しようかどうかを決定するのに影響する can influence a person's decision about>との英文は、しばしば見られる英語特有のもって回った典型的表現の1つとも言え、明確な意味での記述を求める科学論文等の校閲に関与して来た私としては全く感心出来ません。何が言いたいのかもっと明確に主張せよ、と書き直させるでしょう。似非インテリ表現とでも呼称すべきではと考えます。
和訳文を一度作成して、
<法的代理人(=弁護士)の高コストは、申し立てを中止すべきかどうかについての人々の決定に影響する可能性がある。>
→<法的代理人(=弁護士)の高コストは、申し立てを中止した方が良いだろうと人々を決定させる場合がある。>
→<弁護士費用が高額なので、人は法的申し立てを中止しようとする場合もありえる。>
と、スッキリした日本語に脳内整理するのも良いと思います。
最初の<influence 影響する>なる動詞は排除して文意を明確に把握すると
→ Because of the high cost of legal representation, a person can decide to abandon a claim.
= It's possible that a person decides to abandon a claim because the cost of legal representation is expensive
弁護士費用が高額なので、人は法的申し立てを中止しようとする場合もありえる。
これでスッキリした英文並びに日本語になりました。
*名詞化された動詞が羅列する様な文章が英語らしい表現だなどと考える者も居ますが、必ずしもそれが優れた英語表現であるとも言えず、元々の明確な意味、言いたいことを、名詞化された動詞を用いることで意味が却って不明確化される場合もあります。勿体を付けた表現に私には見えることが多いですね。
*一例として influence 等の意味の曖昧さを含む語を削除して考えるのも文意を得るのに有効です。
最初の用例の様な含みを持たせた英文に触れるがゆえに、英語に対する苦手意識、嫌悪感を抱かれる生徒さんもいるのではと推測しますが、influence を使った様な文章に接したら、ははぁ~ん、また出て来やがったぜ、とばっさり切り捨てて、文章の真意-本当はコイツは何が言いたいのか-をさっと把握するなどの場数を(大学入学以降に)踏むと良いと思います。
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