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理科

【中学受験・理科】 計算問題が苦手な原因と対処法

2025/5/21

中学受験で「理科が苦手」という受験生は多いです。理科を苦手とする受験生には様々なケースがありますが、まじめにコツコツ勉強して、覚えるべき知識もしっかり覚えているはずなのに、どうしても理科の成績が上がらない理由の一つに「計算問題が入ってくる問題が解けない・分からない」というものがあります。こちらの記事では、理科の計算問題が苦手である原因と、それに対する対処としてどのようなものがあるかについてご紹介したいと思います。


【1、化学分野】

:化学分野の計算問題で特に苦手と感じることが多いのは「水溶液の濃度計算」や「中和の計算」などです。これらの躓きの原因としては、以下のようなものがあります。


① 「濃度」や「中和」が何を意味しているかをはっきりととらえていない

:濃度が何を意味していて、どのような計算で求めればよいか把握できていない、など


② なんとなく見よう見まねで数だけ当てはめる計算をしている

:数字を適当に当てはめると答えが合うので、それで良しとしてしまっている


③ 割合や比の概念があいまい(百分率[%]や濃度などを「割合」としてとらえていない)

:「ある部分 ÷ 全体」という関係性が理解できていない


④ 複数の条件を文章から読み取ってきちんと整理できない


【2、物理分野】

:物理分野の計算問題で特に苦手を感じることが多いのは「てこ」、「滑車・輪軸」、「ばね」、「浮力」などの力のつり合いや、「電気回路」などの単元です。これらについては、以下が原因となっています。


① 公式を丸暗記しただけで内容を理解していない

:「仕組み」が分かっていないので、公式の記憶が安定せず、活用できない


② 基本となる公式があてはめられる条件を把握していない

:「公式」を万能だと勘違いして、どのような条件下でも同じだと思ってしまう


③ ②のため、追加の条件が加わると混乱して対処できない

:「棒の太さが一様」と「一様でない」場合など、条件の変化が把握できない


④ 単位の変換が苦手

:単位換算で間違えてしまう


⑤ 比例・反比例の関係についての理解が不足している

:グラフや関数的な関係を把握できず、必要な情報を読み取れない


⑥ 「てこ」については、「重心」とそのはたらきを理解できていない

:重心の意味は理解できても、そこに棒の全ての重さがかかるイメージを持つことができない


【3. 地学分野】

:地学分野の計算問題で特に苦手を感じることが多いのは「天体(位置や動き)」などです。これについては、以下が原因となっています。


① 空間認識の弱さ

:地球の自転・公転、太陽や月の見え方をイメージできない


② 日周運動の方向・時間の感覚がない

:時刻ごとの太陽の位置を理解できず、図を描いても混乱してしまう


③ そもそも「東西南北」の方位を理解していな

:意外に多いです。北が上の場合は把握できても、回転させるとわからないなど


④ 角度や時刻の換算が苦手

:「24時間で1周する→15度=1時間として考える」などの換算が苦手

(算数で言うと、単位換算や時計算などが理解できていない)


【4. 生物分野】

:生物分野で特に苦手を感じることが多いのは「植物の光合成・蒸散量(グラフの読み取り)」や「食物連鎖」などですが、化学・物理・地学分野と比べると、知識問題とあわせて出題されることが多く、また計算問題が主体となる出題はそこまで頻度の高いものではありませんので、知識だけでも一定の点数が確保できます。また、グラフの読み取りなども比較的読み取りやすいものが多いため、化学・物理・地学の内容が解ける受験生にとって生物分野の計算問題だけが苦手となることはまれです。生物分野の計算問題を苦手とする場合については、以下が原因となっています。


① グラフや表の読み取り不足

:データ処理能力が低いため、読み取りから答えに至る論理の構築ができない


② 視覚的情報(グラフ・図)を活用せずに自分の記憶だけで解こうとする

:「前はこうしてできた」、「公式はこう書いてあった」を優先し、データを読まない


③ グラフからデータを抽出して作表するなど、自分なりのデータ整理ができない


【各分野に共通する原因と対処】

理科の計算問題を苦手とする場合、上記のように原因は様々なのですが、それでも多くの場合に共通する原因というものがあります。それらについてまとめたうえで、対処法を考えてみたいと思います。


① 基礎計算力の不足【重要】

:九九、小数、分数、単位換算などの計算力が不足している


(①への対処法)

:意外に思うかもしれませんが、そもそも九九が怪しい小学生は少なくありません。たしかに、自分が小学生の頃を思い出すと、普段は計算できていても、ふとした拍子に「あれ?七九…あれ?」と急に変な数字を出してしまうということはありました。当時の私は、比較的算数ができる方だったと記憶しています。そうした場合でも迷うことが出るということは、九九をはじめ計算問題は相当な分量を徹底してやらないと本当の意味では身につかないというこを示しています。そして、「計算力の不足」は中学受験に限らず、中学・高校の数学分野や理科分野に決定的に響きます。ですから、まずは基本となる計算問題を継続的・徹底的に行い、確実な計算力をつけるべきです。これは受験理科に限らず、いろいろなところで必須となる条件です。


② 基本的な数的処理能力の不足

:文章やグラフから必要な情報を読み取ることができない


(②への対処法)

:文章やグラフから必要情報を読み取ることができない場合、そもそも「問題を解くのに必要な情報は何か」を把握していないことが多いです。「読み取れるものは全部読み取ろうね」と教わって、とりあえずグラフに書いてある数字を無目的に抜き出してメモはするのですが、それらの数字が何を表しているのか理解していません。

こうした場合、それぞれのケースにおいて、問題を解くのに必要な「要素」をしっかりと確認し、理解させることが必要です。例えば、濃度の計算であれば「全体量・溶けているものの量・濃度」など、てこの計算であれば「支点からの距離・重さ」(基本的条件の場合)などが必要となる要素・数字です。

そして、必要な要素が確認できたら、それらの情報を作表によってまとめる作業を徹底させていきましょう。上記の濃度の話であれば、「全体量(食塩水)」、「溶けているものの量(食塩)」、「濃度」を表にすることを徹底します。その上で、「グラフから読み取れない部分は、読み取れた部分をもとにするとわかる」ということを理解させ、何がヒントとなるかをつかみ取らせることが重要となります。

ですから、グラフの読み取りを強化する前に、まずは濃度計算などの基本となる計算を、作表をもとに計算することができる基礎能力を身に着けることを徹底させるべきです。むやみにグラフの読み取り問題に取り掛かってこれを繰り返しても、解けるようにはなりません。作表の例は、以下のようなイメージです。


(例) 300g、5%の食塩水に、ある濃度の食塩水を加えたら500g、7%の食塩水ができた。加えた食塩水の重さと濃度はそれぞれいくつか。


作表例は以下の通り(□の中は、ヒントをもとにわかるもの。また、作表の際には受験生が表を書きやすくなるポイントなどが単元別にあります。濃度計算の場合の基本的なポイントもこちらで示しておきます。)


③ 国語的な読解力不足

:問題文の意図を正確に読み取れず、どの数値を使えばいいのかわからなくなる。


(③への対処法)

:③にもいろいろ原因があります。たとえば、説明文のような文章を読むことが苦痛で、そもそも落ち着いて問題文を最後まで読み通すことができないという場合には、まずはごく基礎的な説明文の読解訓練が必要となります。ただし、理科の問題文程度の文章であれば、国語の説明文よりははるかに簡単な文章なので、ごく基礎的な読み取りができれば十分です。たとえば、理科の問題文をもとに、本人が読み取ったことを箇条書きにしてまとめさせ、誤りや不足があれば訂正するといった訓練を積むなどでもよいと思います。この際、理科の問題を解くのはとりあえず放置しておいて、問題の読解を正確にこなす訓練に集中しましょう。

また、問題を国語的に読むことができても、「意図が把握できない(何を求めろと言われているか理解できない)」、または「用いる数値が何か」や「数値をどう活用するか」が分からない場合は、②でも書いたように必要な要素は何かという仕組みの理解ができていないことがほとんどです。算数の速さで「速さ・道のり・時間」という3つの要素が必要なのと同様に、理科の各単元の計算にはどんな要素が必要となるのかを、まずはしっかりと把握させることが大切です。


④ 基本の「仕組み」の理解があいまい

:公式や仕組みについて丸暗記するだけで「なぜそうなるのか」まで理解していない


(④への対処法)

:④は、②や③の原因となるものです。これについては仕組みの理解が必要となります。ただし、仕組みをかみ砕いて分かりやすく理解するには、本質を理解して分かりやすく教えてくれる人がそばにいないと難しいです。受験生が「自分一人で教科書を読んで」で理解するのは、相当よくできる生徒さんの場合でないとまず無理です。それを学校や塾や家庭教師の先生がしてくれるわけですね。優れた先生のタイプは色々ですが、そのうちの一つは「一見すると複雑な仕組みをできる限り単純化して、受験生に分かりやすくおろしてくれるタイプの先生」ですね。そうした先生に教わっているのであれば、その先生に仕組みの理解から再度確認してもらえるように頼んでみると良いと思います。


【最後に】

理科の計算問題が苦手な原因と対処法についていろいろとお話してきましたが、すべての場合に共通していて、かつ非常に重要なものは以下の2点です。


① 基礎計算力の向上(理科の場合は特に小数・分数・単位換算・割合・比)

② ごく基礎的な「仕組み」の理解と基本問題の解法理解の徹底


この2つの不足は、勉強を進めるほどに内容理解に混乱を深める原因につながりかねません。もし、この2点に不足があると感じる場合には、まずはここを固めることから始めるべきだと思います。

計算力については地道につけていくしかありませんが、小数・分数・単位換算・割合・比の計算ができないケースでは単なる計算力不足ではなく、これらの「仕組み」が理解できていない場合もあるので注意が必要です。

また、理科の基礎的な仕組みの理解についてですが、たとえば「てこ」で言えば、棒に重さがある場合よりも、まずは太さが一様で棒に重さがないごく基本的な状況でモーメント計算ができるかどうかとか、「天体」であれば「南の空の見方」や「地球の公転の様子」、「月の動き」などすべての計算のもととなる位置関係や動きがしっかり把握できているかどうかなど、ごく基本的なものから見直すのがよいでしょう。また、全ての苦手をいっぺんにどうにかしようとするのではなく、「あと少しでできそう」、「この分野なら理解しやすそう」、「この分野は志望校に出るので」など、まずは克服したい分野に狙いを定めて、少しずつ克服していくのがよいと思います。そうやって一つ一つを確実なものにしていくことは、理解が深まっていく分、徐々に計算力や読解力も高まってくるという相乗効果を生むことがあります。

ここまでのお話が理科の計算問題を苦手にしている方のヒントや助けに少しでもつながればと思います。ぜひ、頑張って苦手を克服してくださいね!

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