大学教員をしていた立場からみなさんに伝えたいこと5(間違ったことを無かったことにしてはいけないという話)
前回の話の続きです。
前回は
「間違いを怖がってはいけません!」
というお話をしましたが、それに関連したことで前回お話しきれなかったことがありますので、今回はそのお話をします。それは
「数学が苦手なひとは、間違いをあまりに怖がってしまうために、間違いを無かったことにしたがる傾向がある」
ということです。
つまり、前回お話ししたように、数学を苦手だと思ってしまう人の多くが、間違うことを極端に怖がる傾向があります。そして、それらの人のほとんどが計算途中でなにか計算間違いをしたときに、その間違ったという事実をすべて消しゴムで消して、なにもなかったことにしようとする傾向があるということです。
前回、学生から何か質問が出た場合、いきなり正解を示すのではなく自分で正解を導き出せるようにヒントを出しながら自力で計算させるようにしているとお話しましたよね。なかなか計算を始めないわけですが、それでもなんとか説得して計算を始めさせます。
しかし、案の定、もともと数学が苦手なわけですから途中で計算を間違えたりします。基本的な考え方で何かを勘違いしている場合もあれば、単純な計算ミス(例えば、符号を間違えるとか)をする場合もあります。いずれにせよ、それをみて「どうしてそうなると思ったの?」とか「あ、そこミスしてるよ。」と指摘すると「エッ!?あっ・・・」と言って何をどう間違えたのかを確認することもなく、いきなりそこまでの計算のすべて(計算のすべてではなくても、間違えたと指摘された式のすべて)を急いで消しゴムで消し去ってしまうのです。
例えば単純な計算ミスだったので「いやいや、符号を間違えただけだからそこは間違っていなかったのに・・・。なんで消しちゃったの?」と言っても時既に遅し、です。
自分が「どこで、何を、どうして」間違えたのか、確認してから消すということならまだしも、それを確認することもなくいきなり全部消してしまったら、そこからは何も進歩できません。
数学が苦手だという人は、間違いを怖がる、間違いを恥ずかしいことだと思うという傾向があるのは、学校などでなにか数学の勉強の中で嫌なことがあって、それがトラウマになっているのかもしれませんね。だから、間違ったことは悪いことだと考えて、何はともあれ間違った事実を早いことこの世から抹殺してしまおうとするのかも知れません。
しかし、この間違いをすべて消し去ってしまうという行為は前回のブログでお話しした迷路パズルで例えれば、次のようなことと同じだと思います。
つまり、迷路パズルは入り口からスタートして出口を目指すわけですが、いきなり最短の正解ルートを見つけることができるわけではありませんね。途中で行き止まりに突き当たっては別のルートを探すということを繰り返すわけです。そのとき、多くの人は鉛筆で通った道に薄く線を引きながらルートを探します。それで行き止まりに突き当たったら、そこまでの線を消さずに少し前に戻ってその線の途中から新たな線を引いて別ルートを探し始めます。
そのとき、行き止まりに突き当たったルートに書いた線(あるいは、入り口から書いた線のすべて)を消すかどうかが問題です。
もし、間違ってしまったルートに書いた線を消してしまったら、また同じ過ちを犯してしまうかも知れませんよね。
「あれ?なんかここ、さっき通ったような気がする。」
引いた線はせっかくこのルートは間違っているよという大切な情報だったのに、それを消してしまうなんて考えられません。
数学の問題でミスをすぐに消してしまうということは、この迷路パズルで言えば間違えたルートに引いた線を消してしまうのと同じことだと思います。
間違えた式は、自分の欠点を見つけたり、正解の計算方法を見つけるための大切な情報です!
・なぜそんなミスを犯してしまったのか
・なぜそんな勘違いをしていたのか
・こういうときは、この計算をしても答にたどり着くことができない
などの大切な情報が詰め込まれていると考えるべきです。
試験の答案とか、宿題の提出物はきれいに整理して書いたものを提出すべきなので、書き損じたらきれいに書き直す必要があるのは事実です。
でも、とりあえず提出するものではない自分の計算用紙で計算しているのであれば、いきなり消してしまうことは必要ありません。できれば、その後もしばらくはその計算用紙は捨てずにとっておいた方がいい場合もあると思います。
間違えることはいけないことではありません。間違えたことを無かったことにすることがいけないことなのだと考えてください。
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