オンライン家庭教師マナリンク
算数

場合の数で樹形図を使うのは負けじゃない。難関校ほど計算では出せない理由

2026/6/19

場合の数の問題で、お子さんはいつも計算で答えを出そうとしていないか。樹形図を書こうとしない、あるいは「樹形図は時間がかかる」と思い込んでいるなら、それが偏差値60の壁を作っている原因かもしれない。

先日の授業でこんな場面があった。場合の数の問題を出すたびに、生徒が樹形図を書かずに計算だけで突き進む。何度か指摘しても自己流を貫く。僕はその場で「場合の数はもう教えない」と言った。本気だった。

なぜそこまで言うか。計算だけで場合の数を解こうとする姿勢は、ある水準を超えた瞬間に完全に機能しなくなるからだ。

「計算で出せる問題」は難関校に出ない

場合の数の問題には、大きく分けて2種類がある。

計算だけで答えが出る問題と、整理しながら数えなければ答えが出ない問題だ。

偏差値50以下の学校の問題は、前者が多い。ポップコーンがS・M・Lの3種類、ドリンクが4種類、組み合わせは何通りか、という問題なら 3 × 4 = 12 で終わる。計算が速い子は当然これを暗算で片付ける。そのやり方で点数が取れてしまうから、樹形図を書く習慣がつかない。

問題は偏差値60超えを狙い始めた時に起きる。

難関校の場合の数は、条件が複雑に絡み合っている。「A・B・Cの3人が円形に並ぶとき、AとBが隣り合う並び方は何通りか」といった問題では、単純な掛け算で出そうとすると条件の数え漏れや重複が起きる。計算式を立てることよりも、場合を漏れなく、かつ重複なく整理することが問題の核心になっているからだ。

つまり難関校ほど、計算力より整理力を問う問題が出る。計算だけで場合の数を解こうとする子は、この壁に正面からぶつかることになる。

樹形図は「計算できない子の逃げ道」ではない

樹形図=計算が苦手な子が仕方なく使う方法、という誤解が根強い。この誤解が非常に厄介だ。

実態は逆だ。

偏差値70を超えるような子ほど、場合の数では図や表を使って整理してから計算する。計算に頼り切ることの危うさを知っているからだ。難しい問題になればなるほど、最初に構造を整理しないと答えにたどり着けないことを経験から学んでいる。

樹形図は思考の外部化だ。頭の中で「えーと、Aが1番目の時は、Bが2番目で...」と処理しようとすると、作業記憶がすぐに限界に達する。紙に書き出すことで、頭のリソースを「整理する作業」ではなく「条件を読む作業」に集中させることができる。速く解くためのツールとして樹形図を使う、というのが本来の位置づけだ。

樹形図を書く子を「丁寧だね」と褒めておしまいにしてはいけない。「その整理の仕方が正しい」と評価することが重要だ。

計算に固執する子に何が起きているか

算数の得意な子ほど、計算で解こうとする傾向がある。これは皮肉ではなく、そうなる理由がある。

計算が速い子は、これまで計算で突破してきた成功体験を積んでいる。4年生・5年生の段階では、計算力が高い子が場合の数でも正解を出せてしまう問題が多い。だから「自分は計算で解ける」という自信がつく。

その自信が6年生以降に邪魔をする。

条件が複雑になり、整理しなければ解けない問題が出た時に、計算で突き進もうとする。当然詰まる。詰まっても整理に切り替えられない。計算でいけるはずだ、という思い込みが強いほど、方針転換が遅れる。

親が「計算が速いのに場合の数だけ苦手」と感じているなら、この構造が起きている可能性が高い。計算力の問題ではなく、整理する訓練をしてこなかった問題だ。

親が今すぐできること

まず、お子さんが場合の数の問題を解く様子を一度観察してほしい。樹形図や表を書かずにいきなり式を立てようとしているなら、その問題の正解不正解に関わらず「まず整理してから」と一言だけ添える。

答えが合っていても、整理せずに出した答えは偶然に近い。本番では同じことが再現できない。

次に、樹形図を書くこと自体を速くさせる必要はない。最初は時間がかかっていい。整理する習慣が先で、速度は後からついてくる。ここを焦って「時間がかかるから計算で」と戻してしまうと振り出しに戻る。

最後に、指導者に「樹形図を書くよう言われているか」を確認してほしい。言われているのに書かないのと、そもそも指示されていないのとでは対応が変わる。言われているのに自己流を貫くなら、それは指導の問題ではなく本人の習慣の問題で、親からも同じ方向で声をかける必要がある。

場合の数は、整理の訓練をすれば確実に伸びる単元だ。計算力がそのままでも、整理の精度が上がるだけで正答率が変わる。やり直しがきく、数少ない領域の一つだ。

このブログを書いた先生

この先生のおすすめコース

算数月額コース
【塾併用・先取り】中学受験新演習シリーズで徹底サポート
三者面談あり
タイプ別
無料体験あり
【塾併用・先取り】中学受験新演習シリーズで徹底サポート
20,000/月
1回60(月4回(週1回目安))
小学4〜6年生
  • 塾の進度が速く、授業が「わからない」まま進んでしまう子
  • 新学年(特に新4年・新5年)で良いスタートを切りたい子
  • 塾の授業を「わかる!」に変え、自信を持ってほしいご家庭
コースの詳細を見る

このブログに関連するオンライン家庭教師はこちら

算数対策におすすめの指導コース

算数月額コース
【中学受験】算数が苦手だった先生の算数
タイプ別
無料体験あり
【中学受験】算数が苦手だった先生の算数
27,000/月
1回60(月4回(週1回目安))
小学1〜6年生
  • 塾のフォローが欲しい
  • これから中学受験を始めるけどどうしたいいかわからない
  • 塾なしでマイペースに受験したい
コースの詳細を見る
算数単発/短期コース
【ギフテッド才能開花】 脳科学で「算数」の力が一気に伸びる!
タイプ別
無料体験あり
【ギフテッド才能開花】 脳科学で「算数」の力が一気に伸びる!
19,800
45(全4回)
小学1〜6年生
  • ギフテッド(高度で特別な才能を持つお子さん)の可能性があるので、経験豊富な先生に見てほしい。
  • ギフテッドに合った勉強方法や進路選択、直面する課題についていろいろ教えてほしい。
  • ギフテッドかもしれないが、どう伸ばしたらいいか、どう才能や潜在能力を開花させたらよいか相談したい。
コースの詳細を見る
算数月額コース
【元早稲アカ講師が指導!】算数徹底対策コース【残り1枠】
三者面談あり
無料体験あり
【元早稲アカ講師が指導!】算数徹底対策コース【残り1枠】
19,600/月
1回60(月4回(週1回目安))
小学4〜6年生
  • 「四谷大塚やSAPIXに通っているけれど、なかなか成績が伸びなくて心配…」
  • 「偏差値がなかなか上がらない。このままでは第一志望に間に合わないかも…」
  • 中学受験を経験したことのある先生に教えてもらいたい!
コースの詳細を見る
算数月額コース
【中学受験 特殊算】通塾でも伸び悩む算数を立て直す個別対策
三者面談あり
タイプ別
無料体験あり
【中学受験 特殊算】通塾でも伸び悩む算数を立て直す個別対策
24,000/月
1回60(月4回(週1回目安))
小学4〜6年生
  • 小学5年生くらいから塾の算数の授業についていけなくなってきた
  • 特殊算のような文章題・発展問題になると急に点数が下がる
  • 「なんとなく解いている」状態が続いている
コースの詳細を見る
算数月額コース
偏差値30歓迎!管理表付<ベストチェック>で算数基礎固め講座
三者面談あり
タイプ別
無料体験あり
偏差値30歓迎!管理表付<ベストチェック>で算数基礎固め講座
24,000/月
1回60(月4回(週1回目安))
小学5・6年生
  • 首都圏模試(ONETES)で偏差値30、40台の生徒さん
  • 日能研、四谷大塚、早稲田アカデミー、SAPIX通塾中の小5、小6の生徒さん
  • 1つの単元をやっている間に前の単元を忘れてしまう、定着に難しさを感じる生徒さん
コースの詳細を見る

算数のブログ

塾の計算問題集では足りない。出る順計算問題集を僕が毎年全受験生に買わせる理由

執筆します。塾の計算問題集では足りない。出る順計算問題集を僕が毎年全受験生に買わせる理由旺文社の「出る順」計算問題集を、中学受験の算数指導で僕が毎年全受験生に購入させている理由を話す。理由は単純で、塾の計算教材だけでは本番で出る計算問題に慣れることができないからだ。塾に通っていれば計算練習はしている。毎週テキストをこなしているし、計算ドリルだって一応ある。それでも受験本番の算数で計算ミスが止まらない子、最後まで解ききれない子が後を絶たない。その理由を「うちの子は計算が弱いから」で片付けてしまうと、根本的な対処ができないまま本番を迎えることになる。塾の計算問題集が「ぬるい」理由塾が配布する計算教...続きを見る
ヒロユキの写真
ヒロユキオンライン家庭教師
2026/6/19

中学受験の算数は「全部」やらなくていい。塾の分厚いテキストに潜む嘘

「毎週のように新しい単元が進み、宿題の山が終わらない」 「塾のテストで点数が取れず、子どもが算数に対して完全にアレルギーを起こしている」中学受験を控えるご家庭から、このような悲痛なお悩みをよく耳にします。塾から配られる辞書のように分厚いテキストを前に、「これを全部完璧にしないと合格できないのではないか」とプレッシャーを感じ、親子で疲弊してしまうケースは非常に多いです。しかし、客観的なデータや受験の構造を分析すると、ある一つの明確な事実が浮かび上がります。それは、「中学受験の算数において、塾で習う膨大な知識を『全部』マスターする必要は全くない」ということです。今回は、算数が超苦手なお子様を持つご...続きを見る
木村の写真
木村オンライン家庭教師
2026/6/18

計算速度を2〜3ヶ月で上げる方法——最下位クラスでも実証済み

中学受験算数で計算速度が上がると、成績が上がる。これは当然に聞こえるが、実際に計算速度を上げるための指導を受けている子は少ない。計算速度が上がると何が変わるかまず構造の話をする。中学受験のテストには制限時間がある。その時間内に、問題を読んで、解き方を判断して、計算して、答えを出さなければならない。このプロセスのどこかが遅ければ、解ける問題数が減る。計算が遅い子は、解き方がわかっていても点数が取れない。試験の後半で時間が足りなくなり、最後の大問に手をつけられないまま終わる。逆に計算が速くなると、同じ問題数をより短い時間で処理できる。浮いた時間を、難しい問題の思考に使える。テスト全体の点数が変わる...続きを見る
ヒロユキの写真
ヒロユキオンライン家庭教師
2026/6/16

「考える問題」を考えすぎてはいけない——算数にも「覚えていい解法」がある

親も教師も、子供にこう言う。算数は考える力を育てる教科だ、と。その言葉が、子供の学習を遅らせている場合がある。「考える教科」だと思っているから、子供は問題の前で止まる。考え続ける。答えが出なくても、答えを見ることに罪悪感を持つ。その結果、1問に2時間使って、その週の学習が前に進まない。「算数は考える教科」という言葉は、半分は本当で、半分は誤解を生む。解の公式を毎回導出する人はいない数学の解の公式を思い出してほしい。中学校の授業で先生が一度、あの公式の導出を教えてくれる。なぜあの形になるのかを、丁寧に説明してくれる。でも大半の生徒は翌週には忘れる。そして誰も困らない。なぜか。公式を使えれば問題が...続きを見る
ヒロユキの写真
ヒロユキオンライン家庭教師
2026/6/16

2時間考えても解けない問題は、考えても解けない

まず事実を言う。中学受験の教材に載っている問題の大半は、解き方が確立された典型問題だ。「考える問題」という顔をしているが、実際には解法パターンが決まっている。だから教材に載っている。解法が定まっていない問題は、教材には載せられない。ということは、2時間かけても解けない問題は、解き方を知らないから解けないのであって、もっと考えれば解けるようになるわけではない。それでも子供は考え続ける。親が「算数は考える教科だ」と教えるから。学校でも塾でもそう言うから。その結果、解き方を知れば5分で終わる問題に2時間使って、1週間の学習量が壊滅する。見切りとは何か僕が「見切り」と呼んでいるのは、この判断だ。「この...続きを見る
ヒロユキの写真
ヒロユキオンライン家庭教師
2026/6/16

この先生の他のブログ

ヒロユキの写真

塾の計算問題集では足りない。出る順計算問題集を僕が毎年全受験生に買わせる理由

2026/6/19
執筆します。塾の計算問題集では足りない。出る順計算問題集を僕が毎年全受験生に買わせる理由旺文社の「出る順」計算問題集を、中学受験の算数指導で僕が毎年全受験生に購入させている理由を話す。理由は単純で、塾の計算教材だけでは本番で出る計算問題に慣れることができないからだ。塾に通っていれば計算練習はしている...
続きを読む
ヒロユキの写真

計算速度を2〜3ヶ月で上げる方法——最下位クラスでも実証済み

2026/6/16
中学受験算数で計算速度が上がると、成績が上がる。これは当然に聞こえるが、実際に計算速度を上げるための指導を受けている子は少ない。計算速度が上がると何が変わるかまず構造の話をする。中学受験のテストには制限時間がある。その時間内に、問題を読んで、解き方を判断して、計算して、答えを出さなければならない。こ...
続きを読む
ヒロユキの写真

「考える問題」を考えすぎてはいけない——算数にも「覚えていい解法」がある

2026/6/16
親も教師も、子供にこう言う。算数は考える力を育てる教科だ、と。その言葉が、子供の学習を遅らせている場合がある。「考える教科」だと思っているから、子供は問題の前で止まる。考え続ける。答えが出なくても、答えを見ることに罪悪感を持つ。その結果、1問に2時間使って、その週の学習が前に進まない。「算数は考える...
続きを読む
ヒロユキの写真

2時間考えても解けない問題は、考えても解けない

2026/6/16
まず事実を言う。中学受験の教材に載っている問題の大半は、解き方が確立された典型問題だ。「考える問題」という顔をしているが、実際には解法パターンが決まっている。だから教材に載っている。解法が定まっていない問題は、教材には載せられない。ということは、2時間かけても解けない問題は、解き方を知らないから解け...
続きを読む