#9 授業では習わない「記号」のお話~コンマ編①~
2021/5/1
今回は「コンマ(カンマ)」の使い方を見ていきましょう。
その前に、前回のブログで出しておいた問題の答えから!
英文の適切な場所にピリオドを付けるという問題でした。
(1) I visited the town Jessica was born in
×I visited the town. Jessica was born in. このようにピリオドを打ってしまうと、1文目は問題ないのですが、2文目は前置詞inの後ろに名詞が無く、文法的におかしなことになってしまうのでダメです。
○I visited the town Jessica was born in.「ジェシカが生まれた町を私は訪れた」 これが正解です。高校英文法の話になってしまいますが、前置詞の後ろに来るべき名詞は関係代名詞whichになって、先行詞the townの直後に移動しています。さらに、「目的格の関係代名詞は省略できる」というルールが適用されて、whichは消えてしまっています。I visited the town (which) Jessica was born in.
(2) I visited the town Jessica was born there
I visited the town. Jessica was born there.「私はその町を訪れた。ジェシカはそこで生まれた」 これが正解です。さっきの(1)のように関係代名詞の省略と考えると逆におかしなことになります。
(3) He said to us, “If we start now, we’ll get there in time”
×He said to us, “If we start now, we’ll get there in time”. このように考えた人もいるのではないでしょうか?一見正しそうに見えますが、間違いです。「引用符の直後にピリオドを置いてはならない」という特別な決まりごとがあるため、ピリオドは引用符の直前に置きます。
○He said to us, “If we start now, we’ll get there in time.”「彼は私たちに「今出発すれば、そこに時間内に着くだろう」と言った」
皆さんが持っている教科書などの長文でも、会話のところはこのように書かれているはずなので、今度注意して見てみてください。
ちなみに、この文のHe said to usを後半に回すとこのような書き方になります。
“If we start now, we’ll get there in time,” he said to us.
注目してほしいのは、timeの後ろのピリオドが今度はコンマに変わっているという点です。引用符の直前のピリオド(.”)は、そこで1文全体が完結したことを表します。なので、もし“If we start now, we’ll get there in time.” he said to us.と書いてしまうと、”If ~ time.”までが1つの独立した文であり、続くhe said to us.はもう1つ別の文、ということになってしまうのです。そうならないために、引用符の直前のピリオドをコンマにして、”If ~ us.全体で1つの文ですよ、ということを示しているわけですね。
* * *
さて、本題の「コンマ(カンマ)」を見ていきましょう。(いちいち「コンマ(カンマ)」と表記するのは煩わしいので、ここからは「コンマ」という表記だけを使います。)
皆さんの中には、日本語の読点「、」と英語のコンマ「,」は同じもの、と思っている人もいるかもしれません。たしかに、「文中に切れ目を入れる」という意味では似ていると言えますが、ただ日本語の読点を使う感覚で英語のコンマを使ってはいけません。というのも、日本語の読点は比較的自由に使うことができますが、英語のコンマにはかなり厳格な使い方の決まりがあり、日本語の読点とは違って自分の好き勝手に使えるものではないからです。
コンマの使い方の中でも特に重要なものを1つずつ見ていきましょう。
①文のかたまりを示す
よく見るコンマの使い方です。
If you meet her at the station, can you tell her to email me?「もし駅で彼女に会ったら、私にメールをするように言っておいてくれませんか?」
もしコンマを使わなかったら、文と文の境目が分かりづらくなってしまいます。
×If you meet her at the station can you tell her to email me?
ただし、前後を入れ替えるとコンマは不要になります。
○Can you tell her to email me if you meet her at the station?
なぜコンマが要らなくなるかというと、「接続詞のif」が2つの文の区切れ目を示しているからです。接続詞が出てくる文ではコンマが使われているかいないかという点にも、これからは注意してみてください。
Jack was tired, but his father told him to study.「ジャックは疲れていたが、父親は彼に勉強するように言った」
接続詞butの直前にコンマを置くことで、Jack was tiredまでが文のかたまり(専門的には「節」と言います)であることが示されています。
これに関連して注意しておきたいことがあります。日本語では
彼女は行かないと言った。しかし、彼は行くことにした。
のように、「しかし」の後ろに読点を打つことは珍しくありません。その感覚でこれを英訳すると、
×She said she wouldn’t go. But, he decided to go.
のように、接続詞butの後ろにコンマを打ってしまいがちです。(実際に受験生の英作文を添削しているとそうした書き方を見かけます。)ですがこれは間違った英語ですので、英作文では注意しましょう。コンマを消して
○She said she wouldn’t go. But he decided to go.
と書くか、あるいは2つの文を1つにつなげて
○She said she wouldn’t go, but he decided to go.
のようにして、butの右ではなく左にコンマを打つなら問題ありません。She said she wouldn’t goまでが文のかたまりなので、コンマを打つならその直後に打つべきなのです。つまりbutの右にコンマを打つべき合理的な理由は何も無いということです。
②挿入を示す
これもよく見るコンマの使い方です。「挿入」とは分かりやすく言うと「横入り」ということです。文の中に、別の要素が「割り込んでくる」イメージです。その時に、横入りしてきた表現を2つのコンマで挟みます。
He is, I think, an optimist.「彼は楽天家だと思うよ」
この英文は元々He is an optimist.だったのですが、そこにI thinkが「横入り」してきたんですね。2つのコンマがあることによって、どの範囲が横入りした表現なのかが分かりやすくなっています。もしコンマが無かったら、
×He is I think an optimist.
というわけの分からない英文になってしまいます。
また、I thinkが文末に回ることもあります。この場合は、1つのコンマで区切れ目が示されます。
He is an optimist, I think.
もちろんI thinkを文頭に置くこともできます。その場合は「挿入」ではなくふつうの表現ということになりますので、もちろんコンマは打ちません。
I think (that) he is an optimist.
コンマの使い方はまだありますが、今回はここまでです。この続きは次回のブログで!
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