英語

#154 伊東先生の英単語教室➁

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2025/4/15

今日の授業では、多義語term, orderの例文を訳していこう。

 

termについては、単数形と複数形で分けて意味を押さえておくといい。複数形termsは熟語の形で使われるのがふつうなので、この機会に熟語として覚えてしまおう。

⑴は「専門用語」の意味のterm。myocardial infarctionは覚えなくていい難しい表現だけど、これは医系用語で、医者などの専門家が使う表現だ。これを日常的な、つまり僕たちみたいな医学の専門家ではない素人でも分かる表現に言い直したのが、最後のheart attack「心臓発作」なんだ。「心筋梗塞」も「心臓発作」も意味は一緒で、心筋、つまり心臓の筋肉が壊死(えし)することを指している。


⑵はみんなにとっても身近な意味のtermだよ。これは「学期」の意味になる。end-of-termだから「学期末、期末」ということだね。end-of-term examで「期末試験」、ついでにmidterm examなら「中間試験」になる。あと、一応言っておくと、この「学期」の意味のtermは3学期制の場合に使われます。大学とかだと2学期制がふつうだと思うんだけど、その場合はsemesterという別の単語を使います。

また、一般的に「期間」という意味をtermが表すこともあります。

We’re making both a short-term and a long-term plan.「私たちは短計画と長計画の両方を作成しています」


⑶から⑸で複数形termsを含む熟語が出てくる。

⑸はちょっと難しい表現がいくつかある。まずbe liable to doは「好ましくないことをする傾向がある」という意味の熟語だ。reckonは「計算する」、そして最後のin terms of ~は「~の観点から」という意味の熟語になります。全体で、「彼は幸せをお金という観点から計算する癖がある」のように訳せればOK。moneyが少なければhappinessも少ないと考え、moneyが多ければhappinessも多いと考えるということを言っているわけだ。


⑷は、「on 形容詞 terms with ~」という熟語がポイント。この時のtermsは「関係」という意味で、熟語全体としては「~と・・・な間柄で」といったような意味になるよ。形容詞のところはgoodをまずは押さえておけば、他の形容詞が来ても対応できるはず。with以下の人物とどういう人間関係であるかを形容詞が表すことになるんだけど、

Tony is on bad terms with Bob.

ならもちろん「仲が悪い」ということ。

Tony is on first-name terms with Bob.

は分かるかな?first nameは日本人にとっての「下の名前」だよね。つまりこれは「下の名前で呼び合う間柄」と言っているんだ。もちろんそれだけ親しい関係だと言っていることになるよね。

Tony is on nodding terms with Bob.

nodは「うなずく」という動詞だけど、人と人があった時のうなずく行為は「会釈する」と言うよね。この例文は、「会えば会釈する間柄」を言っていることになる。近所の人とか、それほど親しいわけじゃないけど、顔見知りだから、道で会った時にお互いに会釈する、そんな関係性のことだ。


⑸は、come to terms with ~という難しめの熟語が問われている。これは、「不快なことを認める・受け入れる」という意味を表します。親にとって、自分の子供が死んだことを認めるのはもちろん難しいことだ。⑸は子供の死をまだ受け入れることができない親のことを言ってるわけだ。

あと、この熟語のtermsは、さっきの⑷のtermsに似た意味を表していると考えられます。つまり「関係」ということだったね。⑸の例文で言うと、「自分たちの息子の死に対して(with their son’s death)関係を結ぶ状態に至る(come to terms)」ということ。with以下の、認めがたい事実と関係を結ぶということは、その事実を認める・受け入れるということになるんだ。


最初に言ったように、termは単数形と複数形に分けて、整理して覚えよう。

単数形のterm・・・「専門用語」「学期」「期間」

複数形のterms・・・「観点」「関係、間柄」

さて、ここまではまさに単語集的に、多義語のいろいろな意味をただひたすら紹介してきたにすぎないんだけど、こんなバラバラな意味を丸暗記する気はあるかな(笑)。僕ならそんな苦行みたいな勉強はしたくないね。単語集・熟語集を見ているだけだと、みんなはそんな苦行に自分を追い込むことになる。

もう何を言いたいか分かるよね。辞書を引くのだ!

前回に続いて、また「ライトハウス英和辞典」に登場してもらった。他の辞書にも語源は載っているんだけど、ライトハウスは図解で特に分かりやすく書かれていたので、いっしょに見ていこう。

まず、この単語は「限界」という意味を表していた。時間的な限界・区切りということから、「期間」「学期」の意味が生まれた。

また、使用範囲・使用する人に限界・限定があるのが「専門用語」というものだよね。legal term「法律用語」なら、それが使われる範囲や人は当然限られてくるはず。

熟語のin terms of ~のtermsは「観点」という意味なんだけど、これはつまり限定された物事の見方のことだろ。

on ~ terms with ...のtermsは「間柄人間関係」という意味だったけど、これは人と人を限定するものと言える。

また、ここでは扱わなかったけど、termには「条件」の意味もある。これは、人の行動を限定するものと考えられる。

These are the terms and conditions of your employment.「ここに書かれているのがあなたの雇用条件です」

termsもconditionsもほぼ同じ意味なんだけど、「ジーニアス英和辞典」によると、termsは支払い条件、conditionsはその他の条件を表すらしい。もちろんそんな細かいことは覚えなくていい。というか、ネイティブスピーカーでもそんなことは知らないだろう。とにかく、雇用条件の話の場面では、terms and conditionsとセットで使うみたいだ。

このように、termの複数の意味の間には、「限界・限定」という共通要素があることを知ることで、丸暗記という苦行から解放され、しかも意味を覚えやすくなるんじゃないかと思うよ。


ついでに、termと語源が同じ単語のterminalについても勉強しておこうか。

The patient had terminal cancer.

癌には、初期から末期まで様々な段階があると思うけど、terminalはtermと同じで「限界」というニュアンスが含まれる。癌の時期の限界ということは、つまり「末期の」癌ということになる。

We left Shinjuku Expressway Bus Terminal for Osaka.

※Shinjuku Expressway Bus Terminal「新宿高速バスターミナル(通称:バスタ新宿)」

terminalには、もちろん僕たち日本人におなじみの「交通機関のターミナル」の意味もある。鉄道のターミナル駅とか、バスターミナル、あと空港のターミナルビル(英語ではair terminal)なんかもあるね。

なぜterminalなのか?それは、そこが「路線の限界点」だからなんだね。日本語では「発着駅」とも言える。


では、次の多義語のorderに行ってみよう。

⑹のorderは「命令」の意味で、ここでは後ろに同格のthat節が続いている。しかも、そのthat節の中の動詞は原形だ!これは文法の時間で勉強した、「仮定法現在」というもので、demandやinsistなどの要求系の動詞の後ろのthat節では「動詞の原形」か「should+動詞の原形」が使われるんだったよね。⑹では、要求系の動詞ではないけど、やっぱり要求的な意味の名詞orderの後ろのthat節なので、動詞の原形(=仮定法現在)が使われています。


⑺はto orderで軽く熟語にはなっているけど、このorderは「注文」の意味だよ。日本語でも、飲食店で「当店は20時がラストオーダー(L.O.)です」と言ったりするね。「注文できるのは20時まで」ということだね。

まず、「have+O+p.p.」という重要表現の確認から。これは「利益」か「被害」かによって日本語訳が変わるけど、ここは「利益」的な内容なので、「Oを~してもらう」と訳します。「ワンピースを作ってもらう」ということ。

で、どういうふうに作ってもらうかを言っているのがto order「注文に応じて」のところなんだ。これはいわゆる「オーダーメード」のことを言っている。ただ「オーダーメイド」は和製英語なので、たとえば英語で「オーダーメードのスーツ」と言いたい時は、a made-to-order suitか、a custom-made suitとしないといけない。

ちなみに、to orderのtoは、dance to music「音楽に合わせて踊る」のtoといっしょで、「一致」というニュアンスになっているよ。「客からの注文(order)に合わせて(to)」ということだね。

あと、dressはもちろん「ドレス」と訳していいんだけど、これは「女性用のワンピース」を意味する単語だということも知っておこう。カタカナ英語の「ドレス」は、ふつうはウエディングドレスのような「フォーマルな婦人服」を意味するので、日常的に着るイメージは無いと思う。だけど英語のdressは必ずしもフォーマルなドレスだけではなくて、ふだん女性が着て街を歩くようなカジュアルなワンピース型の服も指すみたいだ。gownという単語は、パーティーなどで女性が着る「ドレス」を意味するよ。

 

formal dress

 

casual dress

 

wedding gown [dress]

⑻は動詞のorderで、「注文する」という意味。気を付けてほしいのは、日本語では「ドレスを店注文する」と言うけど、英語ではorder a dress to a shopとは言わないということ。toじゃなくfromを使わないといけないことを覚えておこう。というのも、動詞のorderは「注文して取り寄せる」ということなので、どこから取り寄せるかを表すにはtoではなくてfromが使われるからなんだ。


⑼は、校庭に生徒が並ぶ時によくある話。僕の通っていた小中高では、「背の順」に並ばされた。ここのorderは「順番」という意味だ。

Arrange these cards in alphabetical order.「これらのカードをアルファベットに並べなさい」


⑽のorderは「秩序」の意味。social orderで「社会秩序」ということだね。先頭のoccasionalは「時々起こる」という意味。副詞形のoccasionallyの方が馴染みがあるかな。


いよいよ最後の⑾だ。これはout of orderという熟語で押さえておこう。

⑼と⑽のorderは「順序」「秩序」という意味だった。どちらも、物事があるべき状態に収まっている、といったニュアンスが感じられるよね。

out of orderのorderもそんな感じのニュアンスなんだけど、out ofが付くことで、あるべき状態(=調子)から逸脱している、ということになる。エスカレーターがあるべき状態から外れているということは、つまり「故障している」ということなんだ。一部の英和辞典には、この熟語は「不特定多数の人が使う機械が故障している場合に使われ、たとえば個人が使っている腕時計が故障していることを言う時はbrokenなどの表現を使う」といった細かい情報が載っている。でも、複数の英英辞典を調べても、特にそういう情報は載っていなかった。ただ、brokenよりもout of orderの方が堅い表現のようなので、その意味では公共性の高い機械の故障の方にout of orderが使われやすいということは言えそうだ。

「私の腕時計は故障している」

〇My watch is broken.

〇My watch is not working.

△My watch is out of order.

「この自動販売機は故障している」

〇This vending machine is broken.

〇This vending machine is not working.

〇This vending machine is out of order.


いやー、orderもいろんな意味があって大変だったね。

order=「命令」「注文」「順番」「秩序」「調子

どのようなプロセスを経て、こんなにいろいろな意味を表すようになったのか?「ライトハウス英和辞典」を見てみよう。

まずは「順序」の意味が出発点で、そこから順序が維持されている状態である「秩序」の意味が生まれ、さらに秩序を求めるための「命令」、客が店に行なう命令である「注文」の意味へと派生していったことが分かる。

でもね、僕が英語を教える時は、むしろorderはもともと「命令」の意味で、そこから色々な意味に広がったと説明することにしている。その方が分かりやすいからね。客からの命令が「注文」、命令をすると、そこには「順序」や「秩序」が生まれる・・・という具合にね。

語源の情報なんてのはね、その道の専門家でもない限り、自分の覚えやすいようにアレンジしてしまっていいと思うんだ。自分がイメージしやすいように、意味の派生関係を自由に組み替えてしまっても、何も問題はないよ。たとえ学問的には不正確でも、一般の受験生を相手にする英語教育では、そうしたアレンジを英語教師がすることは許されるというのが、僕の個人的な意見だけどね。

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