#42 誤解されている英語③~on「上に」~
2021/10/11
①There’s a magazine on the table.「テーブルの上に雑誌がある」
中学校で学ぶ英文に出てくるonはこのように「上に」と訳して通じる場合が多いので、多くの人は「on=上に」と考えています。
しかし、「on=上に」が通用しない英文もあります。
②There are some pictures on the wall.
これを「壁の上に絵がある」と訳すと奇妙に聞こえないでしょうか?人によっては「壁の上の方(高いところ)に絵がある」と誤解してしまうかもしれません。この英文の自然な訳は「壁に絵が掛かっている」です。(こうしたsomeは訳さなくてもいいことについては☞ブログ#41)
ではこれはどうでしょうか。
③Look! There is a fly on the ceiling.
これを「ほら見て!天井の上にハエがいるよ」と訳すと誤訳です。これでは「天井裏にハエがいる」ことになってしまいます。そうではなくて、これは「天井にハエが止まっている」様子を言っているのです。
①では雑誌がテーブルの上に、②では絵が壁の横に、③ではハエが天井の下に位置しています。「上」も「横」も「下」も全部on?一体どういうことでしょうか。
onの本質的な意味は、「上」「横」「下」といった位置関係にはありません。onは「接触」を表すことばなのです。何かと何かが接触していれば、上でも横でも下でもonが使えるのです。
* * *
さて、onはこの「接触」の意味を原義として、実に様々な意味を派生させています。代表的なものをいくつか見てみましょう。
・着用のon
④She put a dress on.「彼女はワンピースを着た」
熟語put on「身に付ける」のonは「着用」を意味します。人の体と「接触(on)」するように衣服を「置く(put)」というわけです。
ちなみに、日本語では身に付ける物に応じて「服を着る」「靴・スカートを履く」「帽子をかぶる」「指輪をはめる」のように動詞を使い分けますが、英語では全部put onでOKです!
⑤She put a skirt on.「彼女はスカートを履いた」
⑥I put on a hat before going out.「出かける前に帽子をかぶった」
⑦She forgot to put a ring on.「彼女は指輪をはめるのを忘れた」
さらに英語ではこういう場合にもput onが使えます。
⑧It took her two hours to put on makeup.「彼女は化粧をするのに2時間かかった」
顔の上に「接触(on)」するようにお化粧を「置く(put)」というイメージですね。
これはどういう意味か分かりますか?
⑨I’m afraid I’m putting on weight these days!
最近自分の体に「接触(on)」するように「体重(weight)」を「置く(put)」ということは…そう、これは「体重が増える」ことを言っているのです。「最近太ってきちゃったみたい!」とでも訳せばOKです。
⑩That blue shirt looks good on you!「その青いシャツ君に似合ってるよ!」
主語に来ているthat blue shirtがyouの体に「接触(on)」しているわけです。ちなみにこの英文を書き換えると、
⑩’ You look good in that blue shirt!
となります。前置詞がinに変わったことに注意してください。今度は、主語になったyouがthat blue shirtの中に含まれている位置関係になるので、前置詞はinを使っているのです。
・基盤のon
AとBが「接触」している時、どちらかがどちらかを「基盤」としていることがありえます。
⑪Japanese people live on rice.「日本人は米を主食としています」
日本人がお米と「接触」して生活しているということは、日本人はお米を「基盤」として生活しているということです。
⑫They refused to act on my advice.「彼らは私のアドバイスに従って行動することを拒否した」
my adviceを「基盤」として、つまりmy adviceに「従って」行動することを拒否したのです。
いわゆる「手段」を表すonも、この「基盤のon」の延長線上にあります。
⑬We talked on the phone for nearly an hour.「私たちは1時間近く電話で話した」
会話の「基盤」が電話というイメージです。on television / the radio / the Internet「テレビ/ラジオ/インターネットで」は類例です。
・負担のon
さて、AがBを「基盤」としていると、時にAがBにとっては「負担」に感じられることがあります。
⑭Lunch is on me!
ここでは、lunchがmeを「経済的基盤」としているというイメージが成り立っています。つまり、lunchの代金という「経済的負担」が全てmeに降りかかってくるということです。日本語では「お昼ご飯は私のおごりです」と訳すことになります。
⑮The government imposed heavy tax on us.「政府は私たちに重税を課した」
まさに「負担のon」がしっくりくる例文ですね。
⑯They blamed the accident on me.「彼らはその事故を私のせいにした」
熟語の「blame 事 on 人」ですが、丸暗記するのではなく、なぜonが使われているのかを考えることも大切です。この例文では、事故の責任という「精神的負担」をmeに押し付けているわけですね。ちなみにこの例文を書き換えると、
⑯’ They blamed me for the accident.
のように、前置詞はforに変わります。このforは「理由」を表しています。
* * *
onにはまだまだ他にも意味がありますが、その多くは今見てきたように「on=接触」から派生したものと捉えることができます。このように捉えることで、「onの1つ1つの意味をブツ切りにして丸暗記する」という無味乾燥な学習から解放されるのではないでしょうか。最近の辞書はこうした点についても実に配慮が行き届いていますので、一度自分の持っている辞書で気になる前置詞を調べてみてください☆彡
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