#88 八面六臂の英単語
2022/5/28
英単語の中でも、butほど様々な品詞で使われるものも他に無いでしょう。有名な使い方から意外な品詞まで見ていきます。
①They are poor but honest.
最も普通のbutの用法ですね。専門的には「等位接続詞」と呼ばれ、基本的には同じ資格の表現同士を結びます。ここでは2つの形容詞(poorとhonest)を結んでいますね。「彼らは貧しいが正直者だ」。
②It never rains but it pours.
このbutはかなり難しく、今では古風な使い方。品詞としてはifやbecauseなどと同じ「従位接続詞」に分類されます。意味は「~せずに」という否定的な意味を含み、副詞節を作ります。pourは「土砂降りの雨が降る」。直訳すると、「土砂降りにならずに雨が降ることは絶対にない」。いわゆる「二重否定構文」なので分かりにくいですが、簡単に言うと「雨が降ると必ず土砂降りになる」という内容です。(この辺の訳の処理は、I never hear the song without remembering my school days.「この歌を聞くと必ず学生時代を思い出す」という、大学受験生必須の熟語構文「never ~ without ...」の場合と同じ。)ただしこれは諺で、日本語の「二度あることは三度ある」に当たる内容を述べていて、特に悪い出来事が重なることを言います。
類例として
I never meet her but it rains.
何を言っているか分かるでしょうか?まずは「雨が降らずに彼女に会うことは絶対にない」と直訳します。それから意訳すると、「彼女に会う時は必ず雨が降る」。(どちらかが雨男or雨女?)
③There is no rule but has some exception.
これもかなり難しいbutの使い方。品詞としては「関係代名詞」に分類されます。先ほどの従位接続詞butと同じで、否定的な意味を含んでいます。つまり、
There is no rule that does not have some exception.
と書き換えができます。先行詞にも否定語noがあり、関係詞節にも否定が含まれていて、こちらも全体で二重否定構文となっていて分かりづらいですね。直訳すると「例外が無い規則は無い」となります。これは日本語でも聞く諺ですね。簡単に言うと「全ての規則には例外がある」ということ。英語でも、
Every rule has some exception.
と簡単に言うこともあります。
④Everyone came but Roy.
「前置詞」のbutで、exceptと同じく「~を除いて」という意味を表します。「ロイを除いてみんな来た」。
⑤She was but a five-year-old girl then.
「副詞」のbut。意味はonlyと同じです。「彼女はその時5歳の少女に過ぎなかった」。
⑥I don’t want any buts about it.
なんと、butに-sが付いています。これはbutの「名詞」用法。よく言い訳をしたりする時に、前置きとしてbut「でも」が使われますが、そこから名詞のbutは「言い訳」という意味を表します。「そのことについて言い訳は聞きたくない」。
また、ブログ#72で見た「名詞のif」と組み合わせたifs and butsという言い方もあって、
No ifs and buts. Make sure that the work is done by tomorrow!
何かしなくてはいけないことがある時、人によってはif「もし~だとしたら」とかbut「でも」と言って何かと言い訳をすることがありますが、そうした言い訳は許さないぞとNo ifs and buts.は言っているのです。「言い訳は結構だ。その仕事を明日までに必ず終わらせるんだ!」。
⑦But me no buts.
butsは⑥と同じで名詞ですが、はて、文頭のButは何者?後ろに目的格のmeがあるから、④と同じ「前置詞」のbutでしょうか?でもそうすると、この文には動詞が一切無いことになります。なんと文頭のButは「動詞」で、meはその目的語。no butsも目的語です。つまりこの文はSVO1O2の第4文型。文頭のButは原形で主語が無い、つまり⑦は命令文なのです。
動詞のbutは「『しかし』と言う」という意味です。⑦全体は、「私に向かってbutと言うな」→「言い訳をするな」という意味になります。悪いことをして言い訳をしようとしている子供に対してお母さんが言いそうなセリフですね。
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