【読み方の新常識】英語は「音読」、国語は「深読」
「国語の成績を上げたいなら、とにかく毎日教科書を音読させなさい!」
昔からよく耳にするアドバイスですし、小学校の宿題でも音読は定番ですよね。
私自身、TOEIC900点以上を保持し、実際に英語の指導も行っています。そして英語学習において「音読」は文句なしに良いトレーニングだと確信しています。
……ですが! 国語の指導となると、「とにかく音読!」とは言いません。
「えっ、英語で効くなら国語でも効くんじゃないの?」と思われるかもしれません。しかし、この2つでは音読が果たす役割がまったく違うのです。
なぜ、英語では「音読」がよいトレーニングになるのか?
まず、私が英語の指導で音読を激推しする理由からお話しします。
英語において音読をする最大の目的は、「知っている知識(単語や文法)」を、「無意識に使える(処理スピード向上)」の状態に引き上げるためです。
日本語を母語とする人にとって、英語の文章を読むときは「文字を見る→頭の中で日本語に訳す→意味を理解する」という遠回りなステップを踏みがちです。
ここで声に出して何度も音読を繰り返すと、脳内で「音」と「意味」がダイレクトに結びつきます。文字を見た瞬間に「訳さなくても意味が意味のまま飛び込んでくる」状態が作れるわけです。
つまり、英語の音読は「脳の処理回路を鍛え、読書スピードと理解回路を爆速にするためのトレーニング」として効果を発揮します。
スラスラ読める子に「国語の音読」をやらせるとどうなるか?
では、普段から日本語をスムーズに話し、文字も問題なく追える子に「いいから音読しなさい!」と強制するとどうなるか。
高い確率で、「口はアナウンサー並みに滑らかだが、頭は完全に停止している」という謎現象が発生します。
理由はシンプルで、「声に出してきれいに読むこと」に脳のメモリをほぼ全集中させてしまうからです。
「咬まずにスラスラ読まないと怒られる……!」「待って、次の難しい漢字なんて読むんだっけ?」「ちゃんと感情込めて読めてる感を演出せねば!」
この「発声と朗読のパフォーマンス」だけで脳のメモリは容量オーバー。その結果、肝心の「文章の構造を読み解く」「行間を想像する」といった『思考のための脳のスペース』がほぼ残らないのです。
これが「スラスラ滑り読み」の罠です。声に出す作業に気を取られるがゆえに、文章の意味は脳の表面をすーっと滑り落ちていっているのです。
本当に伸ばすべきは、声を出さずに深く潜る「深読(しんどく)」の力
英語に必要なのが「処理を速くするための音読」なら、国語に必要なのは「思考を深めるための深読(しんどく)」です。
深読とは、声を出さずに、文章の途中で何度も「ん?」と立ち止まりながら、頭の中で深く深く潜っていく読み方のこと。
「ん? なんでここで急に『しかし』って言ったんだ? 筆者、情緒不安定か?」
「この登場人物、口では『大丈夫』って笑ってるけど、絶対に大丈夫じゃないよね?」
「あ、さっき出てきたあの話と、この話って対比になってるのか!」
このように、ページをめくる手を止めて「頭の中でツッコミを入れる時間」を作ることこそが、読解力を劇的に引き上げます。
音読と深読を使い分けた先にある「真の言語運用力」
もしご家庭で「うちの子、音読を嫌がるのよね」「毎日音読カードにサインしているのに、国語の成績がサッパリ……」とお悩みなら、今日から「音読=国語力を伸ばす絶対の正義」というプレッシャーを少し手放してみてください。
(もちろん、学校の宿題の音読はサクッと終わらせて平和を保ちましょう!)
「ちゃんと声に出して読んでいるか」を監視する代わりに、静かに黙読しているお子さんにこんな問いかけをしてみる方が、よっぽど国語力のトレーニングになります。
「今、どのへん読んでる? 一番怪しいキャラ誰?」「この文章で、筆者が一番フガフガ熱弁してるのどこだと思う?」
英語は「音読」で脳の回路を鍛えて圧倒的なスピードを手に入れ、国語は「深読」でじっくりと思考を巡らせ、思考の深さと論理力を鍛える。
目的ごとに正しい「読み方」のツールを使い分けること。これこそが、単なる試験の点数稼ぎにとどまらない、一生モノの「高い言語運用能力」へとつながっていきます。
英語と国語、それぞれの特質を正しく理解したアプローチで、未来に活きる真の「言葉の力」を育んでいきましょう。
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