英語の二重構造 - 句動詞 phrasal verb の話 (その1)
2021/11/17
英語には句動詞 phrasal verb フレイザルバーブと呼称される、<頻用される易しい他動詞+副詞、自動詞(+副詞)+前置詞等>の組み合わせから成る語句があります。これはしばしば本来の字義そのままの意味を離れ、その言葉の組み合わせ、字面からは想像しにくい意味を併せ持ちます。
例えば、look after は、~の後ろを見る、が文字通りの意味ですが、~の面倒を見る、世話をする to take care of, be in charge of or nurture の意味に使われるのは皆さん良くご存知でしょう。同じ様に、look into は、~の中を覗き見る、が、調査する、to investigate, examine の意味にも使われます。
だいぶ以前の話になりますが、私が高校生の頃に一橋大教授の岩田一男先生が数多くの英語受験参考書を世に出されていました。- 余談ですが、岩田先生は作家の中島敦と嘗ては某女学校時代に同僚教員だったとのことです。その中の1冊に、易しい幾つかの動詞を使えば英語が話せるとの趣旨のものがあり私も早速買い求めました。要は、句動詞を使えば意思表示は出来て英語も気構えずに話せるよ、との主張でしょう。
実は句動詞とは、子供でも知っている動詞を用いて、より高度な或いは別の特定概念を表す為の便宜的利用法であり、その多義性に加え日常口語的且つぞんざいな英語表現ゆえに、硬い文書やスピーチには使う事は避けられます(極く一部例外があります)。しかしながら岩田先生のその本には、それに関する注意、即ち、句動詞は informal である旨は述べられて居なかったと記憶しています。また、当時私が在籍していた高校の英語授業に於いても、英語の formal, informal 表現の区別について特に注意されたこともありませんでした。web などをざっと眺めても phrasal verb が単なる英熟語として一括りに扱われ informal であるとの記述も見当たらない様に感じます。
歴史の話になりますが、英語とは、主にユトランド半島周辺を根城にする文化的に高度ではない北方ゲルマン系が、先にブリテン島に進出していたケルト系をローマ撤退後の空白に乗じ、駆逐ながら植民し、その様な者達の話す言葉から派生した言語ゆえ、高度な概念を表す単語を持たない田舎言葉でした。これが、11世紀以降のノルマンコンクエスト(大陸のノルマンディー地方に領土を構えていたフランス語化した北方ゲルマン系に拠る英国支配)を通じ、高度な哲学、学問、法律関連の用語-多くはフランス語の祖語であるラテン語起源-が大量に英語にもたらされました。その数は1万語程度になるとも言われています。或る意味、この経緯は大和言葉しか持たなかった島国日本語に、高度な概念を表記出来る漢語を中国大陸から取り入れハイブリッド化が進められたのと良く似ています。
ここに、<上流階級が使用する、すべき英語>と、<下の者が話す、限られた単語から工夫され派生した英語>の二重構造が起源すると考えてもあながち間違いでは無いでしょう。今では階級による違いは特に米国では薄れ、違いがあるとすれば教養レベルの差に拠るものとなっては来ましたが。
(次回に続く)
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