接頭語 sub は、~の下に、と解釈して良いのか? (その2)
2021/12/8
(前回からの続き)
では、afterwards (<後に、後ほど>、米国 spelling は afterward) を意味する副詞 subsequently (第一音節 sub にアクセントがありますので注意して下さい)の sub はどう解釈したら良いのでしょうか?この単語の形容詞形は subsequent 、また名詞形は subsequency です。sequence は遺伝学などで日常的に登場する用語シーケンス(遺伝子分子の連続)から生物学を囓った者には<連続>を意味することは推測可能でしょう。実際、形容詞 sequential は一連の、引き続きの、の意味があります。では、<ははぁん、オレは合点した、名詞 subsequency は何か連続するものの下にある何かを意味するんだろう>と言うと実はそれは全くの見当違いになります。
時間関連用語としての subsequently であることから気づかれた方も居るかも知れませんが、この場合の sub は<時間的に後の>の意味になります。
In 1982 he was arrested and subsequently convicted on drug trafficking charges..
(Cambridge dictionary の用例)
1982年に彼は逮捕されたが、その後違法薬物取引の罪に関して有罪となった。
https://www.etymonline.com/word/subsequent
ここの記述に拠れば、実は、subsequent はラテン語の subsequi = sub "closely, up to" + sequi "follow" = "come after in time, follow closely," 時間的に後に来る、時間的にすぐ後に従う、の意味になります。subsequi の現在分詞型 subsequentem に直に由来する古フランス語 subsequent をそのまま英語に移入した言葉になります。
sub 自体は印欧祖語の upo = under, up from under の1変異型 s(up) に由来すると考えられていますが、ラテン語に於いては、既に多義に派生しており、
1.~の下の、~の足下の、(の位置関係を)表す "under, below, beneath, at the foot of,"、
2.~に近い、~に向けて、(の時間を)表す "close to, up to, towards;" of time、
3.~の内に、~している間に、(の位置時間関係を)表す "within, during; の意味から、比喩的に、勢力に取り込まれた、勢力の内にある、 figuratively "subject to, in the power of;"
4.ちょっと小さい "a little, somewhat",
の多様な意味を持ちます。
英文法用語の main clause 主節に対する subordinate clause 従(属)節、の subordinate (= having a lower or less important position) の意味も、これで鮮明に理解出来るのではと思いますが如何でしょうか?まぁ、文部省唱歌の <運転手は君だ、車掌は僕だ> の関係ですね。
位置関係を示す前置詞が時間の意味を兼ね備えるのは、英語の after, before, in, on, at, overなど幅広く見られますし、日本語でも同様です。sub も然りであり、~の下、だけでは無い派生の意味を併せ持つ接頭語と言う訳です。実はおなじみの、just, close, immediate などの語も時間と空間の両方の意味を持つ言葉です。どの様な意味で使われているのか正確に見極めることが大切です。
この様な訳で、前置詞起源の接頭語を持つ単語に関しては、<場所、時間、またそれらに発する比喩的表現>の3通りの意味を探る様にすると、<より正しくスッキリと理解出来るだろう>、いや、より正確には<スッキリと理解出来る場合もあるかも>、とのお話でした。
この先生の他のブログ
意味不明のタイトルと思われた方も多いかと思います。英語の主語とは動作の主体であって、常に、誰々が~をする、~の状態である、と主語、意思主体を強く意識するのが英語の特徴であり、日本語の様に主語を頻繁に省略して曖昧性に生きるケシカラン言語とは全く異なるのだ、と、我々は英語学習の最初から強調されて来ました...
条件節を導く接続詞の用法として if + were to do の表現があります。これは、ひょっとして起こるかもしれないが実際には起こりそうに無いと話し手が考える場合に formal な表現として使われるものです。いわゆる仮定法の表現の1つですが仮定の状態を強調する表現になります。もし仮に~だとした...
前々回、前回の繰り返しにもなりますが、これまでの内容を纏めると、 A is to do sth. (sth = something) で、① Aは~する約束になっている、~する手筈となっている、することになっている、未来がそれに向けられている、手配されている、定まっている-これらは皆広義の未来表現で...
(前回からの続き)<本家の> Oxford English Dictionary, 2nd edition の be の項の解説では、------------------------------------be16. With the dative infinitive, making a futu...