大学教員をしていた立場からみなさんに伝えたいこと1(忘れちゃいけない括弧の話)
2025/4/17
こんにちは
はじめまして、新米オンライン家庭教師の佐藤と申します。
長いこと大学で様々な分野の学生たちに数学、物理学などを教えてきましたが、これからはマナリンクでも中学生や高校生のみなさんと一緒に勉強していこうと思いますので、よろしくお願いします。
ところで、大学で学生たちの試験の答案や宿題の採点をしていると気になることがたくさん出てきます。「高校では一体どんな数学の勉強をしてきたのだろうか?」と思うような、数学の本質に関わる重要な問題点です。それらは、私が教えている学生たちの多くがたまたまそのような答案を書く学生たちだらけだったというものではなく、他大学で学生の指導をしている知り合いの先生方も同じような経験をしていて、みんなが共通して感じている問題点です。
それらの問題点は、いままでずっと気になって仕方がなかったのですが、残念ながら為すすべもなく、イライラしながらもその事実を受け入れて、大学教育に携わるしかありませんでした。
でも、ここマナリンクのブログを通じて中学・高校で、今まさに大学に入るための数学や物理を学んでいる生徒のみなさんに、直接その問題点をお伝えすることができる機会に恵まれましたので、思いっきり話をさせてもらおうと考えています。
これから話すことは、もちろん大学生の話です。ブログを書かれているほとんどの先生方は、ブログを通じて効率の良い受験勉強の仕方や、心構えなどをお話されていると思いますが、ここではちょっと違う話をしようと思います。しかし、中学・高校で学んでいる生徒の皆さんにも大いに役に立つ情報だと思いますし、受験勉強をする際にも絶対に役に立つ情報だと思いますので、是非これからのみなさんの勉強に参考にしてみてください。
なお、一度に全部をお話しすることはできませんから、ちょっとずつ分けてお話をしていこうと思います。
今回はまず手始めに括弧についての気になるお話をしましょう。
みなさんは、たとえば変数xの2次関数が与えられていて、x→0の極限値を求めなさいと言われたらどのような式を書きますか?(まだ極限の勉強をしていない人もいるかも知れませんね。ごめんなさい。)もちろん
と書きますよね。でも、
のように答案に書く大学生のなんと多いことか。(みなさんの中にも「どっちでもいいんじゃないの?」って思った人はいませんか。ダメですよ。)下の式を書く学生は、要するに面倒臭がり屋で、括弧を書くのが面倒臭いのだろうと思います。でも上の式と下の式を比べると、答が違ってしまうということが分かりますか?
上の式の答はもちろんcで、本来これが正解です。しかし、下の式の場合、この式をそのまま受けとめると答はbx+cになってしまいます。つまり、素直に式をみれば極限をとるのは、はじめの二次の項の部分だけということになってしまうからです。当然ですよね。
よく言われることですが、数学は世界共通の言語です。かなり厳密な文法に基づく言語です。普通の言葉は多少文法から外れた言い方をしても相手に通じることがありますが、数学はそうはいきません。文法は厳密に守ってください。文法を無視すると、全く異なる意味になってしまうことがあります。気を付けましょう。括弧が必要なところでは、絶対に面倒臭がらずに書く癖をつけてください。入試の記述式問題の答案に、つけるべき括弧がついていなかったら、たとえ答が正しくても減点、或は不正解とされてしまうかもしれません。
さて、次回は今回せっかく極限の式を使って括弧の大切さについてのお話をしたので、極限の記号「lim」の記号の意味について、多くの学生たちが勘違いしているというお話をしようと思います。乞うご期待!