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#44 ハロウィン~ごちそうくれなきゃいたずらするぞ!~

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2021/10/31

最近では日本でも「ハロウィン」がすっかり定着した感がありますが、日本のハロウィンはただの「仮装大会」になっていて、元々あった宗教的意味合いは消えてしまっています。

英米の人たちにとってのハロウィンとはどういうものなのかを見ていきましょう。

Halloween (also Hallowe’en) is the evening of October 31 when it was believed in the past that dead people appeared from their graves, and which is now celebrated in the US, Canada and Britain by children who dress as ghosts, witches, princesses, cowboys, etc. Children go from house to house, knocking on doors and saying “trick or treat!” The people in the houses must then give the children a “treat” (usually sweets) or the children will play a trick on them.

whenは関係副詞(先行詞はthe evening of October 31)。itは仮主語で、that ~ gravesが真主語。andの後ろのwhichは関係代名詞(先行詞は関係副詞whenのそれと同じ)。

from house to houseのように、from A to BのAとBが同じ名詞の場合は、可算名詞であっても無冠詞で用いられる(冠詞を省いた方が口調がよいからと考えられている)。

I saw butterflies flying from flower to flower.「蝶々が花から花へと飛んでいるのが見えた」

以下は類例です。

It’s getting colder and colder day by day.「日を追うごとに寒くなっています」

We walked side by side.「私たちは並んで歩いた」

They sang hand in hand.「彼らは手をつないで歌った」

He tends to translate word for word.「彼には逐語訳をする癖がある」

I found myself face to face with a stranger.「気が付くと見知らぬ人と面と向かっていた」

knocking ~ and saying ~は分詞構文。

treatについては☞ブログ#32。ここのorを正しく解釈できた人は相当の英語力の持ち主。

Hurry up, or you’ll be late for school.「急ぎなさい。さもないと学校に遅れるよ」

こうした「命令文+or ~」で「~しなさい。さもないと~」は有名ですが、命令文の代わりに

You must hurry up, or you’ll be late for school.「急がないといけません。さもないと学校に遅れるよ」

のように、義務の助動詞を含んだ文が来ることもあります。本文のThe people ~ must ~ orもそのように解釈します。the children willのwillは「未来」の意味ではなく「習性・習慣」を表しています。

My dog will growl if you get close to him.「私の飼っている犬は、人が近づくとよく唸る」

willではなくただの現在形でも似た意味を表します。

My dog growls if you get close to him.

ただし、現在形の方は「犬が唸る」という客観的な事実を述べているのに対して、習性・習慣のwillの方は「犬の特徴・性格」を表しているという違いがあります。

She will wait until the last minute to finish her homework.「彼女は土壇場になって宿題を終わらせることがよくある」

これも現在形を使って、

She waits until the last minute to finish her homework.

としても文意は大体同じですが、will waitの方が「彼女は計画性のないずぼらな性格だ」という彼女の人間性にスポットライトが当てられた感じになります。

Oil will float on water.「油には水に浮く性質がある」

これも主語のoil「油」の性質に焦点を当てた言い方です。

Oil floats on water.

と現在形で言うと、「油は水に浮く」という出来事自体を表現していて、「油の性質」を強調している感じはwill floatに比べて弱くなります。

Accidents will happen.「事故とはどうしても起こるものだ(=事故が起こるのを防ぐことはできない)」

Boys will be boys.「男の子はどうしたって男の子(=男の子がやんちゃなのは仕方がない)」

特に次のような例文では「非難」のニュアンスが加味されます。

He will leave his coat on the chair instead of hanging it up.「彼はコートを掛けずにイスに置きっぱなしにすることがよくある」

本文に話を戻すと、「お菓子がもらえないと、子供たちはいたずらをするのがハロウィンでの習わしである」ことを、「習性・習慣のwill」は表しています。

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October 31 is Halloween and November 1 is All Saints’ Day. These are both Christian festivals but in pre-Christian times October 31 was the end of the old year and November 1 was the beginning of the new. People thought that the souls of the dead and other supernatural beings visited on New Year’s Eve.

④⑤Halloweenの語源はAll Hallow Eveです。Hallowはsaint「聖人」の意味です(holy「聖なる」と関係があります)。EveはChristmas EveのEveと同じで、「特別な日の前日・前夜」を意味します(New Year’s Eveなら、New Year「元日(1月1日)」の前日である「大晦日(12月31日)」のこと)。つまりHalloweenとは、11月1日のAll Saints’ Day「万聖節」の前夜祭という位置付けなのです。pre-は「時間的に前」という意味。「プリペイド」はprepaid「前払いした」から。predictは「pre前に+dict言う」→「予言する」(dictionaryは「言葉を集めたもの」)。prehistory「有史以前、先史時代」、pre-war「戦前の」など、pre-で始まる単語は多い。the newは「the+形容詞」だから「新しい人たち(new people)」という意味だなどと考えて平気な人は、意味や英文の構造を考えながら英文を読んでいるとは到底言えない。andを挟んで、

October 31 was the end of the old year

November 1 was the beginning of the new (year)

に見られる3組の対句に気付いて、the newの後ろにyearが省略されていると考えられるのが、頭を働かせて英文を読んでいるということ。pre-Christian timesとは、イギリスにキリスト教がもたらされた6世紀後半よりも前の時代、もっと言えばアングロサクソン人(☞ブログ#39)が来る前からイギリスにいた先住民族のケルト人の時代を指しています。

ここのthe deadは「死者(dead people)」。⑤の内容を踏まえると、ここのNew Year’s Eveは「12月31日」ではなく「10月31日」すなわちHalloweenを指していると考えるべきところ。先住民族のケルト人は、11月1日を「冬の始まりの日」であり「新年の始まりの日」と考え、その日に宗教的儀式を行なっていました。その前夜、つまり10月31日(古代ケルト人にとってのNew Year’s Eve「大晦日」)の夜には死者の霊や超自然的な存在が地上を徘徊すると信じられていたようです。ハロウィンとはそうした古代ケルト人の宗教的時間観念にまで行き着くお祭りなのですね。

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ハロウィンと言えば「カボチャ提灯(ジャックオーランタン)」を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。

jack-o’-lanternのo’はofの省略形です。o’clockのo’と同じですね(☞ブログ#13)。元々jack-o’-lanternは「鬼火、狐火」を意味していました。「鬼火、狐火」とは何かと言うと、夜間の沼地や墓地などで青白く燃え上がる不気味な火(人骨などのリンが自然発火したもの)のことです。19世紀からは、ハロウィンで飾られるくりぬかれた人面のカボチャ(内部でロウソクが揺らめいて光っている)のことを指すようになりました。

ところで、なぜここでjack(もちろんこれは人名のJackから)が使われているのでしょう?

JackはJohnの愛称で、英語圏ではよくある男の名です(日本語の「太郎」のような感じでしょうか)。そのありふれた名前のJackが、カボチャ提灯の名前の一部に取り入れられたのです。(他にも、ふたを開けると人形などが飛び出てくる「びっくり箱」のことを英語でjack-in-the-boxと言います。)

また、Jackは一般的な「若い男」を指すこともありました。トランプの「ジャック」はこの意味のJackが語源で、「召使」「兵士」を意味しています。

Jackという名前がどれほどありふれているかは、イギリスの民話「ジャックと豆の木(Jack and the Beanstalk)」や、次の諺を見ても分かります。

All work and no play makes Jack a dull boy.「勉強ばかりで遊ばないと利口なジャックもバカになる」=「よく学びよく遊べ」

Every Jack has his Jill.「どんなジャックにもお似合いのジルがいる」=「破(わ)れ鍋に綴(と)じ蓋(どんな人にもその人にふさわしい配偶者がいる)」 ※Jillはよくある女の名(日本語の「花子」みたいな感じでしょうか?)。

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