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英語

#62 伊東先生の英文解釈教室➀

2022/3/10

今日扱う英文は2つの文で9行という、1文かかなり長いのが特徴だね。かと言って、長かろうが短かろうが、英文を読む基本姿勢は何も変わらない。文頭から文法的に正しく構造を読み解いていくだけのことだ。もちろん1文がこれだけ長いと、SVなどの記号を振ったり、僕が授業でよくやるように括弧を使って文法的なカタマリを捉えるという作業も欠かせない。ではまず①から。

Inで始まっているということは、この英文は文頭にSが来ていないということになる。なので「文頭に来ていないSは一体どこに出てくるのか」という大きな課題をいきなり私たちは抱え込みながら英文を読んでいくことになる。

In Europeは「前置詞+名詞」なので修飾語。だから( )で括ってしまおう。

次のin earlier centuriesもまた「前置詞+名詞」なので( )で括る。このearlier centuriesの意味を正しくとるのは意外に難しいんだけど、後で詳しく説明します。

さてそろそろSが来るかと思いきや、whenが目に入る。whenの品詞は「疑問詞」「接続詞」「関係副詞」の3つ。whenが疑問詞で間接疑問文を作っている可能性はかなり低いがゼロではない。もしそうなら、その間接疑問文全体がSということになる。次に接続詞の可能性だけど、後ろにchildren were ~ foundとS’ V'のつながりが見えるので、その可能性はかなり高いと判断していい。最後に関係副詞の可能性だけど、非制限用法になるのは原則として先行詞が「特定化された名詞」だ。だけどearlier centuriesには定冠詞theが付いていないので、特定化されているとは言えない。よって、whenが非制限用法の関係副詞の可能性はまずないと考えていい。ということで一応「when=接続詞」と考えながら読み進めることになる。

occasionallyはsometimesの意味だ。

whoの品詞の可能性は「疑問詞」「関係代名詞」の2つ。疑問詞と考えて間接疑問文を構成しているというのは構造的にあり得ないので関係代名詞と判断する。では先行詞は?少し離れたところにchildrenがあるから、これが先行詞のはず。ヨーロッパで、過去の世紀において、どういう子供が発見されることがあったかがwho以下で説明されていくと考えながら読み進める。

abandonは「見捨てる」の意味。

andを見たら、何と何を対等に結んでいるかを考える癖が付いているのが、本当に英語力のある人の特徴というのは、僕がいつも言っていることだね。今回は分かり易い。andの後ろに過去完了形が来ていて、andの前にも過去完了形があったから、その2つの過去完了をandが結んでいると考える。

maintain oneselfはいきなり辞書を引くのではなく、まず「自分自身を維持する」と直訳する。直前の文脈も参照して「親に捨てられて、自分自身を維持する」と考えれば、maintain oneselfが「自活する」といったことを意味しているはずだと考えられるはずだ。

辞書を引く時に注意してほしいのは、載っている語義を片っ端から全部読んでいくのではなく、「目的語が人」の語義を探すことだ。このクラスのみんなの学力を考えると、中級の英和辞典を使ってほしいと思うけど、たとえば「コアレックス英和辞典」では

❶〔…の状態・水準など〕を維持する

❷〔建物・機械など〕を使えるようにしておく、整備しておく

❸〔家族など〕を養う

❹~を主張する

と4つの語義を載せている。〔 〕の中に、その語義で使われる場合の目的語の意味内容が示されている。この中で「人」と言えるのは❸の〔家族など〕しかないね。ということで、本文のmaintained themselvesは「自分自身を養った」→「自活した」と考えていいことになる。

apart from ~はここでは文字通りに「~から離れて」。

3行目のコンマのところまで来て、接続詞と考えておいたwhenの後ろの文が構造的に完結していることになるね。

さて、私たちにはまだ未解決の課題があったはずだ。そう、「文全体のSを探す」という、①の最初を読んだ時に抱え込んでしまったあの課題だ。3行目のコンマのところまでは、まだ➀の文のSは出てきていないんだ。そうすると、3行目のコンマの後ろで、いよいよSが出るのではないかという希望を胸に読んでいこう。they。英語ができる人かできない人かの違いは、このtheyを見て「やっと求めるSが出てきた!」と思えるかどうかの違いだと言っていい。このtheyこそ、①全体のSなんだ。やっとスタートラインに立った感じかな。まだまだ先は長いぞ。

wereはもちろん➀全体のV。

all so much alike thatと続いていくけど、今の僕たちの課題は、Cを探して、この文が第2文型であることを確認することだ。Cになれるのは原則として名詞か形容詞。allをCと考えると、

they (S) were (V) all (C)「彼らは全てだ」

ということになって、何が言いたいのか分からない文になる。英語ができる人なら、「このallはtheyと同格で、Cはさらに後ろに来るはず」と考えることができる。それはすでにそうした文例にいくつも接しているから、直感的にそう正しく判断できるんだね。

さてCは果たしてどれだろう。soは副詞だからCになれない、muchはalikeを修飾している副詞。alikeには「形容詞」と「副詞」の2つの品詞があるけど、ここでは形容詞と考える、つまりalikeがCであると考えることになる。alikeの形容詞の意味はsimilarと一緒。副詞の用法も重要だから辞書で調べておいてほしい。

ここには受験生が絶対に意識しないといけない超重要単語soがある。「soがあったらその後ろにthatが来てso ~ that構文になる可能性が高い」わけだ。今回も案の定そうなっている。

classify A as B「AをBに分類する」の受け身形がある。

a distinct species, Homo ferusのコンマが「同格」を表すことはちゃんと見抜けただろうか?(☞ブログ#10の③)

親に捨てられ、森の中で自力で生き抜いている子供が一体何に分類されたのかというと、「人類とは別の生物種」、すなわち「ホモ・フェルス」に分類されたとのことだ。語注にもあったけど、これは我々現生人類を表す「ホモ・サピエンス」に対立する語で、Homoは「人間(human being)」、ferusは「野蛮な(wild)」という意味のラテン語だ。ちなみにsapiensは「賢い(wise)」という意味のラテン語だから、「ホモ・サピエンス」と「ホモ・フェルス」が正反対の意味だということがよく分かると思う。

そうだ、speciesは単複同形の名詞である点に注意しておこう。もちろんここではaが付いているから単数形だ。

さて先を読んでいくと、and were thoughtという「and+過去形のV」が目に入る。私たちがすべきなのは、やはり「andが何と何を結んでいるか」を考えることだ。andの後ろがVということから、「VとVを結んでいる」はずだと見当を付けて前に戻ると、1行上にwere classifiedという「過去形のV」が見つかる。よってwere thoughtの主語はwere classifiedの主語と同じtheyだと分かる。

think of A as B「AをBとみなす」は重要熟語だけど、詳しくは後で説明するね。

beingは「生き物」という意味の名詞。3行目のhuman beings「人間」で使われているbeingもそうだ。

➀の英文にはthatが2回登場している。3行目のthatは「so ~ that構文」のthatなので接続詞。ではこの5行目のthatの品詞は何だろうか?thatには全部で「指示代名詞」「接続詞」「関係代名詞」「副詞」という4つの品詞がある。細かいことを言うと「指示形容詞」や「関係副詞」もあるけど、まあ大きく言うと4つと考えていい。特に受験生が識別できなくてはいけないのが「接続詞のthat」と「関係代名詞のthat」だ。見分け方は簡単で、

・thatの後ろが完全文→接続詞

・thatの後ろが不完全文→関係代名詞

3行目のthatは、後ろが「完全文」だから「接続詞」。では今見ている5行目のthatの後ろは?熟語動詞run acrossは後ろに目的語が必要だけど、ここでは目的語が欠けている。つまりthatの後ろは「不完全文」。だからこのthatは「関係代名詞」と判断できる。先行詞はa different kind of being。

theyつまり例の「野蛮人」と呼ばれた子供たちは、人間が出会うことの滅多にない、人間とは違った種類の生き物だと思われていたということだ。

いや~、長かったね。これで1文だよ!長くて難しいけど、決してみんなが知らない特殊な文法項目が出てきていたわけではないということを強調しておきたい。この1文を正しく読み解くために必要だった主な文法知識は、

・「前置詞+名詞」はSになれず、ただの修飾語

・接続詞when/thatの後ろは完全文

・関係代名詞who/thatの働き

・andの働き

・so ~ that構文

・A, Bの同格関係

1つ1つは英文法の時間に習っている項目なんだ。ただし、1つ1つは基本的な文法事項でも、それが1つの文の中で次々に出て文が長くなるから、処理が大変になるんだね。それが「難解な英文」の実態だと言っていい。単語集に載っていないような難しい単語が立て続けに出てきたり、学校で習わない難しい文法事項が出てきているから難しいわけではないということだ。こういう英文を正しく読み解ける文法的思考能力こそが、難関大学が受験生に求めているものなんだ。

さて、単語についてちょっと補足しておこう。

1行目のearlier centuriesはなかなか訳しにくい。というよりも、そもそもここのearlyの意味を正しく捉えるのが結構難しいんだ。ふつうなら「early=早い」という大雑把な(?)捉え方でOKだけど、ここはもっと精密に考えないとearlier centuriesが一体何を言っているのかを理解することはできない。「より早い世紀」と機械的に訳したところで意味不明だからね。形容詞earlyには大きく3つの意味があって、

ⓐある決まった時間帯の中で最初に近い時間帯

ⓑある出来事を歴史的に捉えた時に、最初に近い期間

ⓒ予定(いつも)より早い時間

ⓐは、たとえばmorningを朝5時からお昼の12時までとすると、その時間帯の最初(5時)に近い時間帯(5~7時頃)がthe early morning「朝早い時間」の指している時間帯ということになる。

ⓑは、earlyの直後の名詞の歴史を考えた時に、その発祥の時期に近い期間を表す用法だ。たとえばearly civilizationsと言えば、人類のcivilization「文明」の歴史を考え、その「初期の文明」を言っていることになる。

ⓒは、いつもは朝8時に朝食を取っている人が、もし1時間早い朝7時に朝食を食べたとすれば、それはan early breakfast「いつもより早い朝食、早めの朝食」を取ったということになる。

さて、本文のearlier centuriesのearlyはどの意味かを考えていこう。たとえばthe early twentieth centuryなら、earlyはⓐの用法ということになる。「20世紀の最初の頃」ということだ。ⓐの意味になる時は、問題となっている時間帯は特定されていなくてはならない。the twentieth centuryは特定された時間帯だから、その中の最初の頃をearlyで示すことができる。そりゃそうだよね。そもそも時間の長さが特定されていなければ、early「最初の頃」なんて言えるはずがないんだからね。

さて、そうした観点から本文のin earlier centuriesを考えてみよう。注目すべきは、ここでは定冠詞theのような、「名詞の特定化」を示す表現はないということだ。つまりearlier centuriesは「不特定」ということになる。なので、このearlyはⓐの用法ではないということになる。

ではearlyはⓑとⓒのどっちかということになるんだけど、もちろんⓒのはずはないから、ⓑの用法ということになる。

次に考えたいのは、earlierという比較級が使われることで、何が比較対象になっているのかという点だ。これについては文脈上「現在」あるいは「今世紀」を比較対象と考えていい。ⓑの用法であることも考え合わせてearlier centuriesを直訳すると「centuryを歴史的に捉えた時に、今世紀よりも最初に近い世紀」ということになる。「centuryを歴史的に捉える」とは、一連のcentury、つまり1世紀(the first century)から21世紀(the twenty-first century)までの21個の一連のcenturyを考えるということだ。この21個のcenturyの中で、earlier centuriesつまり「今世紀よりも最初に近い複数の世紀」はどれかというと、もちろん1世紀から20世紀(the twentieth century)までの20個の世紀の中の複数個のどれかということになる。具体的に何世紀のことを言っているのかまでは分からないんだけど、たとえば21世紀から見て直近の「18~20世紀」を指しているかというと、それは考えにくいんだ。なぜかというと、もし直近の世紀ならin the last centuriesと表現しているはずだから。in earlier centuriesと言っているので、今世紀の直近ではないと判断できる。じゃあいつぐらいのことかと言うと、たとえばだけど「16~19世紀」あたりのことを言っている可能性は十分にある。

あと重要熟語のthink of A as B「AをBとみなす」については、asを含む同じ意味の他の熟語と一緒に覚えておこう。

regard A as B

see A as B

view A as B

treat A as B

look on A as B

これでようやく➀がおしまい!後半戦に行くよ!

ここのcouldは仮定法ではないふつうの過去形。

conceive that ~は「~だと考える(think)、~だと想像する(imagine)」。

thatは接続詞だから、後ろに「完全文」が来ることを予想しながら読み進めていく。

these half-witted brutesは、たとえhalf-wittedやbrutesの意味が分からなくても、全体として➀に出てきた「親に捨てられ、森で自分一人の力で生き抜き、ホモ・フェルスと呼ばれて人間とは違う生物とみなされていた子供たち」を指していることは分からないといけない。theseが「複数の名詞を指す指示語」であることを利用すれば、①のchildrenを指していることは簡単に分かるはずだし、もし分からなかったとしたら、根本的に文章の基本的な読み方を知らないということになる。

half-wittedは分かりにくいけど、名詞のwitは知ってるかな?日本語でも「ウイットに富んだ会話」のように言うことがある。外来語の「ウイット」は「頭の回転が速くてユーモアがある」ことを言う。英語のwitにもその意味はあるけど、もう1つ「理解力」という意味もある。half-wittedは「理解力がhalf」、ただしこのhalfは「半分」というよりも「部分的(partly)」という意味なので、「理解力が部分的(不十分)」といったような意味を表すんだ。まあ身も蓋も無い言い方をすればstupidと同じ意味だと考えていい。

bruteは「野蛮人」のこと。

were bornはいいとして、その後のhumanを文法的に正確に読めた人は天晴れだ。

She was born rich.

この英文で考えてみよう。richは形容詞だね。形容詞の働きは原則として「名詞を修飾する」か「Cになる」かだ。名詞を修飾しているとは考えられないから、自動的にこのrichはCとして使われていることになる。つまり

She (S)=rich (C)

という関係が成り立っている。

この文は、

She was born.+She was rich.

という2つの文が合体したものと思えば分かり易い。「彼女は生まれた」、そしてその時の彼女は「金持ち」だったということを言っている。まとめて言うと「彼女は金持ちの家に生まれた」ということ。本文のthese half-witted brutes were born humanも同じように考えればいい。まずは

these half-witted brutes were born+these half-witted brutes were human

という2つの文が合体したと考える。左は「これらの愚かな野蛮人は生まれた」、右は「これらの愚かな野蛮人は人間だった」と訳せる。そして最後にまとめると「これらの愚かな野蛮人は人間に(人間として)生まれた」と訳すことになる。

この英文でとりわけ難しいのは、6行目のコンマの後ろのthese creaturesかもしれない。難しいのは意味ではなく、この名詞の文中での働きの方だ。一般に名詞は「主語(S)」「目的語(O)」「補語(C)」として働く。でもこのthese creaturesはそのどれでもない。名詞には他にも「同格」の使い方がある。同じく「these+複数名詞」という構成を頼りに、these half-witted brutesと同格の関係を結んでいると考えるべきところだ。

whoはもちろん関係代名詞。whatは関係代名詞と考えてもいいし、疑問詞と考えてもいい。

rockingから1行下のzooまでが分詞構文だと分かった人は一定の英語力があると言える。rockは「前後または左右に揺らす」という意味の動詞。

back and forthは「前後に」という副詞表現。

likeはもちろん前置詞だね。

またand。考えるべきことはいつも同じ。「何と何を結んでいるか」を考える。andの後ろにwhoがある。2行上にも関係代名詞whoがあったね。だからandの後ろのwhoも関係代名詞で、who以下が先行詞these creaturesを修飾していると考える。

freezingは「凍えるような、とても寒い」。

ragは単数形なら「ぼろ切れ」。ここは複数形で「ぼろ服、古着」の意味です。ちょうど単数形clothが「布」、複数形clothesが「衣服」を表すのに似ています。

in ragsのinは「着用」を表すよ。She was in red.と言えば、「彼女は赤の中にいた」から「彼女は赤い服をていた」という意味を表す。

pluckは難しいけど、「沸騰しているお湯からジャガイモをpluckする」ということから「取り出す」くらいの意味は推測してほしい(☞ブログ#53)。

discomfortは「ちょっとした苦痛、不快感」。

いやー、それにしても大変な英文だったね!

もちろんみんなには今回みたいな「1文が息の長い英文」の和訳にチャレンジしてほしいけど、流石にきれいな日本語に訳せる必要は必ずしもない。多少ごてごてした日本語でも、文法的には正しく読み解けていればOKだ。重要なのは上手く訳せるかどうかよりも、英文を読んで何を言っているのかを正確に掴めること復習の時は、ゆっくりでいいので何回も音読することを勧めるよ。英文の言っていることが日本語を介さずに直接読み取れるようになれば申し分ない

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