#66 伊東先生の英文解釈教室③
2022/3/30
今日扱う問題はそれぞれ1文と短いけど、なかなかの難問だ。
前にも言ったけど、この授業の予習では、まずは自力で和訳を作り、その後で分からなかったところを辞書や文法書で調べてほしい。それでも分からないところには印を付けておいて、授業ではそこを特に集中して聞くようにする。予習にどれくらい真剣に取り組んだかで、授業から得られるものが大きく左右されるということは確実に言えるよ。
では⒈から。
No evidenceは名詞表現なのでこれをSと考える。
直後のwhateverがこの問題の1つの関門だ。文法で学ぶwhateverは「複合関係代名詞」と呼ばれるものだけど、はたしてここのwhateverもそうだろうか?複合関係代名詞は、文中に「節」と呼ばれる小さな文のカタマリを作るよね。後ろに動詞existsがあって、whatever existsが節ということになる。「存在するどんなものでも(anything that exists)」と訳せるなら、この節は文中で名詞的に働く、つまりS・O・Cのどれかとして働くことになる。でもNo evidenceがSなので、その直後にはS・O・Cが来るのはおかしい。ということでこの解釈はダメだということになる。もう1つの解釈は、この節を「何が存在したとしても(no matter what exists)」と訳して、副詞的な修飾表現と考えるというもの。でもこの解釈も相当無理がある。というのも、ふつうこの解釈の複合関係詞の節は、文の初めか文の終わりに置かれるから。文中に置かれる可能性も無いわけじゃないけど、もしそうなら「挿入を示すコンマ」(☞ブログ#9②)がwhatever existsの前後に置かれているはずだ。だからこの第2の解釈も不適切ということになる。
そうすると、実に困ったね。whateverを複合関係代名詞とするならば、「存在するどんなものでも(anything that exists)」という名詞的な解釈か、「何が存在したとしても(no matter what exists)」という副詞的な解釈のどちらかでうまくいくはずなんだけど、どちらもうまくいかないということが分かった。
そこでこう考えることになる。もしかしたら、whateverには複合関係代名詞以外の別の品詞もあるのではないかと。
そう考えて辞書を引くからこそ、whateverに「疑問代名詞」「複合関係形容詞」「副詞」という別の品詞があることが、特別な意味を持って私たちの目に飛び込んでくるんだ。
もちろん「複合関係形容詞」の可能性も無い。その理由は、さっき詳しく説明したような、ここのwhateverが複合関係代名詞である可能性が無い理由と全く一緒。こういう時に、文法で複合関係詞を正しく理解したことが活きてくるんだね。
というわけで、問題文のwhateverの品詞の可能性は「疑問代名詞」と「副詞」の2つになった。
辞書の例文と、問題文のwhateverの置かれている場所を見れば、「疑問代名詞」の可能性もすぐに消える。
whateverの「副詞」のところには、
[通例否定文で;any, noを伴う名詞のあとで]
という注意書きがあって、副詞のwhateverが使われやすい条件が最初に示されている。例文を見ると
I have no doubt whatever that she is innocent.
とあるね。noの付いた名詞の直後にwhateverが置かれていて、no doubt whateverで「何の(少しの)疑いもない」という意味であることが分かる。
さて、問題文を見てみると、まさにこれと同じようにnoの付いた名詞の直後にwhateverが置かれているね。ということで、問題文のwhateverは「副詞」用法であると結論付けることができるわけだ。まあ簡単に言うと、この副詞のwhateverは単に否定を強調しているだけなので、あってもなくても文意はほぼ一緒と考えていい。なので問題文を
No evidence exists that such an incident took place.
と書き直しても、意味はほとんど一緒なんだ。
これでやっとwhateverを攻略して、先を読むとexistsがあるね。これがこの文のVだね。三単現の-sが付いているのは、もちろん主語のNo evidenceが三人称単数形だからだ。
ここまでのところで、「証拠は何も存在しない」と言っていることになる。
続きを見るとthatがある。とにかくthatを見たら、品詞を正しく考えようとしないといけない。前にも言ったと思うけど(☞ブログ#62)、特に受験生に求められるのが「接続詞のthat」と「関係代名詞のthat」の識別だったよね。改めて見分け方を確認しておくと、
・thatの後ろが完全文→接続詞
・thatの後ろが不完全文→関係代名詞
さて今回のthatはどっちだろう。such an incidentは名詞でS、took placeは熟語のV。take placeは全体で自動詞扱いなので目的語は不要。ということで、thatの後ろは第1文型の完全文ということが分かり、thatは「接続詞」ということになります。
接続詞のthatが導く節は原則として名詞的な働きをするので、ふつうはS・O・Cのどれかの働きをする。もちろんSではないので、そうするとOかCのどちらかなんだけど、existは自動詞なのでOの可能性は消えるよね。じゃあCと考えていいのかというと、existは第2文型では使えない動詞なので、Cでもないんだ。SでもOでもCでもない、ではこのthat節は一体どういう働きをしているのか?
前に「名詞」にはS・O・Cの働き以外にも、「同格」という働きをすることがあると言ったことを覚えているかな(☞ブログ#62)? that節にも「同格」としての使い方があるんだ。
We are all surprised at the news that she lives in France.
この例文のthat節は、S・O・Cのどれでもないね。直前のthe newsと「同格」の関係を結んでいると考える。つまり、
the news=that she lives in France
という関係があると考える。「知らせ」の内容が「彼女がフランスに住んでいる」ということだ。こうしたいわゆる「同格のthat」については文法の授業でも習っているよね。
では問題文のthat節はどの名詞と同格の関係になっているんだろうか?that節の左にある名詞と言えばevidenceしかないね。というわけで、
evidence=that such an incident took place
と考える。「そうした出来事が起こったという証拠」と訳せればOK。
同格のthatと一緒に使われやすい名詞はそんなにたくさんあるわけではないから、一度文法書でどういう名詞の後ろに同格のthatが来るかを調べておくといいよ。
今回は「thatの品詞の特定→that節の文中での働き」と順序を踏んで、厳密に「同格のthat」と特定したけど、かなり英語のできる人であれば、No evidence whatever exists「証拠は何一つ存在しない」までを読んだ段階で、「証拠って、一体何の証拠のことなんだろう?」と頭の片隅で疑問に思い、直後にthatを見た瞬間に、「あっ、きっとこのthatの後ろに証拠の内容が詳しく展開されていくんだな」と直感的にピンとくるんだ。直感的と言っても、別に生まれつきの才能で勘が働くわけじゃない。こういう正しい勘が働くようになるまでには、今僕がここで示したような厳密な文法的検討を経るという経験を何度も積み重ねてきているんだ。そうした訓練をしばらく続けていると、一々文法的検討を経ないでも、いつしか直感的に正しい判断ができるようになるんだね。それこそが英語ができるようになるための正しい筋道だ。最初は頭を捻って徹底的に意識的な文法的検討を英文に施していく。するといずれは、そうした過程を飛ばして正しい結論に直感的に至るようになる。逆に言うと、そうした最初の地道な訓練を飛ばして英語を正しく読めるようには絶対にならないということ。世の中には、地道な努力をすっ飛ばして、まるで魔法のような特別な方法で英語ができるようになると主張する詐欺まがいの宣伝も聞かれたりするから、注意しないといけない。そんな楽でうまい方法があるんなら、英語で苦労する受験生や日本人がいるはずがないし、英語教師はみんな御役御免になりそうだけどね。実際はそうなっていないという現実こそが、そうした「英語は特別な方法で簡単にできるようになる!」という宣伝が真っ赤な嘘であることの証明になっているんじゃないかな。
では次の⒉に行こう。
有名な熟語take ~ into account「~を考慮に入れる」が見えるけど、takeは目的語が必要な「他動詞」であるという意識があるかどうかが、この英文を正しく読めるかどうかを左右する。問題文では、takeの直後に目的語は見当たらない。じゃあ目的語は消えてしまったのかというとそんなことはなくて、もっと後ろの方に移動したはずだと考えなくてはいけない。そういう意識があれば、accountの後ろにあるthe freedomがtakeの目的語だとすぐに気付ける。
次のポイントは、not just of someのところ。
まずnot just ~はnot only ~と同じで「~だけではなく」という意味。
その後ろのof someを文法的に正しく考えられた人はかなり英語力があると言っていいと思う。「前置詞+名詞」は基本的に左側にある名詞や動詞を修飾する。今回の場合、not justを修飾しているとは考えられない。なぜなら、逆にnot justの方がof someを修飾しているから。ではof someはどの単語を修飾しているのだろうと思ってもう少し左を見ると、of all peopleという、of someと同じ「of+名詞」のカタマリがある。このof all peopleは直前のthe freedomを修飾しているので、of someも同じようにthe freedomを修飾しているのではないかと考えられればOK。同じ「of+名詞」というカタマリというのが最大のヒントだけど、もう1つ補助的なヒントとして「all↔some」の対比にも着目できた人は天晴れだ。するとsomeの後ろにpeopleが省略されていることにも気付けることになるよ。
ここは
the freedom of all people「全ての人たちの自由」
the freedom of some people「一部の人たちの自由」
という2つの表現を合体させていると考えてもいい。下線部は重複しているので省略されたと考えるわけだ。
2つの「of+名詞」を結び付けるための接続詞が見当たらないというのが最後の問題だ。
He is not a doctor but a nurse.「彼は医者ではなく看護師だ」
熟語表現「not A but B」では、AとBを結ぶために接続詞butが使われている。このAをBを入れ替えて
B, not A「Bであって、Aではない」
という、接続詞の無い言い方もできるんだ。
He is a nurse, not a doctor.「彼は看護師であって、医者ではない」
問題文は
not just A but B→B, not just A「AだけでなくBも」
のように、justが付け加わっただけのことだ。
the freedom not just of some people but of all (people)「一部の人たちだけでなく全ての人たちの自由」
赤字がA、青字がBだよ。この2つを入れ替えたのが問題文の
the freedom of all people, not just of some (people)
最後に単語の説明をしよう。
lawについては、low; raw; rowという見た目の紛らわしい単語との混同に要注意!この4つの単語が怪しい人はちゃんと辞書で調べておいてね。
orderについて説明します。これは多義語でちょっと厄介なんだけど、ある英和辞典には主な意味として、
❶順序
❷整頓
❸秩序
❹命令
❺注文
が載っている。
問題文のorderは、law「法律」と並んで書かれていることをヒントに意味を確定することになる。日本語で
「法律と○○」
という表現を考えた時、○○に入るのにふさわしいのは❶から❺のどれかを考えるということだ。それぞれを当てはめると
➀法律と順序
②法律と整頓
③法律と秩序
④法律と命令
➄法律と注文
③が一番しっくりくるけど、④ももしかしたらあり得ると感じる人もいるかもしれない。そこで辞書の例文を見ると、❸の方にはずばりlaw and order「法と秩序」が載っているので、やはり❸の意味でよかったんだと安心することになる。私は6冊の英和辞典を調べてみたけど、全部に例としてlaw and orderが挙げられていたよ。だから多分みんなの持っている辞書にもlaw and orderが例として挙がっているはずだ。
では最後の⒊を見ていこう。
最大のポイントは、as much as an hour and a halfという名詞表現が、直後の比較級の副詞lessを修飾していることに気付けたかどうかだ。
ⓐShe is five years old.「彼女は5歳です」
この文のfive yearsという名詞表現は、直後の形容詞の原級oldを修飾している。「彼女がどれほどoldか」ということをfive yearsが示しているわけだ。
ⓑShe is older than me.「彼女は私よりも年上です」
この文では、「彼女」が「私」より年上ということが言われているだけで、「年齢差」までは表現されていない。もし年齢差が「5歳」なら、
ⓑ’ She is five years older than me
のように、比較級の直前に、差を表す名詞表現を書くことになるね。これは文法で勉強しているはずの事項だ。「比較級の直前の数字を伴う名詞表現は、比較されている2つの物の差を表す」ということを改めて確認しておこう。
ⓒI sleep less than him.
この文では、副詞littleの比較級lessが使われている。「私」と「彼」の睡眠時間を比べた時、「私」の睡眠時間の方がless、つまり「より少ない」と言っている。
ただしこの文では、「私」と「彼」の睡眠時間の「差」がどれくらいかまでは書かれていない。もし2人の睡眠時間の差が「1時間」なら、
ⓒ’ I sleep an hour less than him.「私は彼よりも睡眠時間が1時間少ない」
と書けばいい。さっきのⓑ’と同じで、比較級の直前に差を表す名詞を置けばいいんだね。ちなみに睡眠時間の差が「1時間半」なら
ⓒ’’ I sleep an hour and a half less than him.
となるよ。
これで問題文の一番難しいところの説明は終わったんだけど、あとは熟語as much asだね。
She has as much as one million yen in her bank.「彼女は銀行に100万円も貯金している」
as much asは数字を含む名詞表現の直前に来て、その数字がとても大きいことを意味します。日本語の「昨日は10時間も勉強した」の「も」に相当するよ。
問題文のas much asも一緒で、数字を含む名詞表現an hour and a halfが長い時間であることを示しています。「1時間半も」という意味になる。
per nightのper ~は「~につき」という意味の前置詞。
the turn of the twentieth centuryは「20世紀の変わり目」。つまり「19世紀から20世紀に変わるあたりの時期(1900年前後)」を言っています。
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