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#112 『ジーニアス英和辞典』最新版をのぞいてみよう④~語源から単語の意味に迫る~

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2023/5/4

ブログ#109110111の3回にわたって、最新版ジーニアス英和辞典の目玉の一つである「英語史Q&A」についてご紹介しました。

今回は、もう一つの目玉である「語のしくみ」を見ていきます。これは、語源から単語の意味に迫るもので、共通要素からいろいろな単語の意味を横断的に説明しています。

capital「首都・大文字・資本、主要な」 cap「帽子」 cape「岬」 captain「キャプテン」 kneecap「膝の皿(膝蓋骨)」

一見すると意味がバラバラなこれらの単語を、capという共通要素から説明しようというのが「語のしくみ」です。

 

国のに当たる最重要都市・文字・金がcapital「首都・大文字・資本」、に被るものがcap「帽子」、人間のが胴体から細長く突き出ているように、海に細長く突き出ている陸地がcape「岬」、チームのcaptain「キャプテン」、膝に位置する骨がkneecap「膝の皿」ということで、実はcapを含むこれらの語には「頭」という共通イメージがあることが分かります。

ちなみに、瓶などの蓋のことを「キャップ」と言いますが、これは「帽子」のcapと同じ語から来ています。人のの上に載せるのがcap「帽子」、瓶のに載せるのがcap「キャップ、蓋」というわけです。

また、capitalの形容詞としての意味に「主要な」と「死刑に値する」があります。

Their decision is of capital importance.「彼らの下した決定は極めて重要だ」

人間のは、言うまでもなく最も重要な体の部位ですね。そこから、形容詞capitalは「重要な」の意味として使われることがあります。

capital punishment「死刑」

なぜ「死刑」にcapitalが使われるのでしょうか?これは、昔の死刑では犯罪者のを切り落とす斬首刑があったことの名残です😱

多義語capitalの意味がなかなか覚えられない人にとっては、こうした語源知識は暗記を手助けしてくれるでしょう。

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今見たように、単語の語源や要素の意味を知ることで、覚えにくい単語の意味が覚えやすくなることがあるのは確かなのですが、いつでもそうだとは限りません。

consist「~から成る」 assistant「助手」 circumstance「状況」 contrast「対比」 exist「存在する」

これらの単語に共通する要素は何でしょうか?

 

「立つ」を意味するst(a)/sistを含む例は他にもたくさんあります。

stand「立つ」 station「駅」 stay「とどまる」 stable「安定した」 state「状態」 statue「像」 substance「物質」 persist「持続する」 resist「抵抗する」

では受験生(あるいは一般に日本人の英語学習者)は共通要素st(a)/sistに着目してこれらの語を覚えるべきかと言うと、答えは「ノー」でしょう。

existを

➀ex「外で」+sist「立つ」→➁「出てくる」→③「存在する」

のようにとらえて覚えようとするのはそもそも迂遠ですし、何より➀→➁、➁→③の間には若干の飛躍(つまり必然性の乏しさ)があるため、結局は

「➀→➁を正確に覚える」

「➁→③を正確に覚える」

という二重の暗記の負担が学習者にのしかかってくることになります。

だったら最初から、語源的な分析はせずに

exist=「存在する」

とシンプルに覚えてしまった方がはるかに楽でしょう。

もちろん、どうしても覚えられない単語を語源に遡って覚えるのは有効な学習法です。もしexistを何回覚えても忘れてしまうなら、上の語源的分析によって覚えるのも一つの手です。

しかし、語源に頼らずに単語の意味を覚えられるのなら、それに越したことはありません。私自身、circumstance; contrast; stay; statue; substance; consist; persist; resistなどの太字の要素が「立つ」という意味だということを知らなかったくらいです!


私たちが「漢字」を覚える時も、上と同じようなことが言えるのではないでしょうか?つまり、私たち日本人が漢字を覚える時も、いつも分解して覚えているわけではないということです。

たとえば「生徒」という漢字二字を使った表現があります。「学校などで教育を受ける人」という意味であることは誰でも知っています。

では、私たちはこの二字熟語の意味を、「生」と「徒」の二つの字に分解して、それぞれの漢字の意味を合成した上で「学校などで教育を受ける人」という意味を覚えたのでしょうか?もちろんそうではありません。ここでの「生」と「徒」のそれぞれの意味は分からなくても、「生徒」という全体の表現の意味は分かっているというのが、99%以上の日本人の実態であるはずです。

さて、日本語を勉強し始めたアメリカ人が「生徒」を覚えるという場合を考えてみます。この基本的な二字熟語を覚えるために、アメリカ人が漢和辞典を引いて、

「生」=勉学中の人

「徒」=弟子

という具合に、それぞれの漢字の意味を突き止め、それから「生徒」の意味を覚えていたとしたら、「ずいぶんと無駄なことをしているな」と思うのではないでしょうか。

むしろ、日本人と同じように、「生」「徒」それぞれの意味は知らなくても、「生徒」全体の意味をまずは覚えるべきです。もし「生徒」の意味がどうしても覚えられないという場合に限り、「生」「徒」それぞれの意味を押さえることは有効かもしれませんが、最初から全ての熟語を一字一字の漢字に分解して覚えていこうとしたら、ましてや漢字の偏や旁といった構成要素にまで分け入って覚えようとしたら、一生かかっても日本語はできるようにならないでしょう・・・

もちろん、熟語を構成する一字一字の漢字の意味を知ることで、全体の意味が直ちに分かるという場合もたくさんあると思います。たとえば「初見」という熟語なら、「初」「見」それぞれの意味を知り、それらを足せば意味が分かる仕組みになっています。

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趣味で語源を研究するならともかく、単語学習の一環として語源を学習するなら、「その語源知識を知ることで自分が単語を覚えやすくなるかどうか」を基準にするといいのではないかと思います。

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