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#132 健康寿命100年を目指して(後半)

2024/3/30

Senescent cells

Makoto Nakanishi, professor at the University of Tokyo’s Institute of Medical Science, leads one of the eight moonshot projects. He wants to make people stop aging by eliminating what are called “senescent cells,” or cells that have stopped multiplying but have not died off.

Makoto Nakanishi「中西真」は、the University of Tokyo’s Institute of Medical Science「東京大学医科学研究所」の教授。

動名詞に付くbyは「手段」を表す。senescent cells☞ブログ#131。”senescent cells,orブログ#48

Nakanishi, who has studied cellular aging for 30 years, achieved a milestone in 2021 when he showed that removing such cells could reverse the aging process.

milestone「画期的な出来事」は、元は「特定の地点までの距離をマイルで示す道標」のこと。

Senescent cells remain in the body and are believed to release chemicals that trigger inflammation. “I basically think senescent cells should be removed,” he says, citing the example of naked mole-rats, the sub-Saharan African animal known to be the longest-living rodent, with a maximum life span of over 30 years.

citing以下は分詞構文。naked mole-rats「ハダカデバネズミ」。sub-Saharan「サハラ砂漠以南の」。rodent「齧歯(げっし)類」。

 “Animals that are long-living and resistant to aging, such as naked mole-rats, are programmed not to accumulate senescent cells. They don’t exhibit signs of aging before they die.”

「それらは死ぬ前に老化の徴候を示すことはない」→「それらは老化の徴候を示すことなく死ぬ」。

Nakanishi explains how senescent cells manage to survive: The cells have a habit of producing “bad proteins,” which are normally destroyed in lysosomes — organelles in a cell that help break down or digest certain materials inside the cell. But when there are too many of these problem proteins, they break through the walls of the lysosomes.

manage to doは、特に困難なことをやり遂げることを示す。She managed to smile.「彼女は何とかして笑顔を作った」(とても笑うことのできる心境ではなかったが、無理をして笑顔になったというニュアンス)。lysosome「リソソーム、水解小体(消化分解を営む細胞小器官)」は大辞典にしか載っていない専門用語。直後のダッシュ記号(☞ブログ#15)の後ろで分かりやすく説明されているはずだ、と安心して読むところ。とは言ってもorganelle「細胞小器官」(☞ブログ#131)も難しい単語・・・。organelles in a cellという書きぶりから、「organelles=細胞の一部」というイメージさえつかめれば十分。関係代名詞thatの先行詞がa cellではなくorganellesであることを教えてくれるのが、helpに3単現の-sが付いていないという事実(3単現の-sというルールのありがたさを感じるのはこういう時)。

Since lysosomes are acidic, acids start leaking out from holes created by the proteins, making the entire cell acidic. Normally, acidic cells die off, but senescent cells manage to survive by activating an enzyme called glutaminase-1 (GLS-1). GLS-1 produces ammonia, and this alkaline base thereby helps neutralize the acidified cells and allows the cell to continue to produce bad proteins uninhibited.

Sinceは「理由」。acidicはacid「酸性」の形容詞形。making以下は分詞構文。making (V) the entire cell (O) acidic (C)の第5文型。

enzyme「酵素」。glutaminase「グルタミナーゼ」(グルタミンをグルタミン酸とアンモニアに分解する酵素)について予備知識ゼロでもお構いなく読み進める姿勢が大事。

base「塩基」。uninhibitedは、inhibit「妨げる」の過去分詞inhibitedに否定のun-が付いたもの。過去分詞と形容詞のどちらと捉えてもいいが、ここでの働きは?形容詞(分詞)が単独で直前の名詞を修飾することは原則としては無い。よって、uninhibitedはここでは補語として使われていると考えることになる。

to produce (V) bad proteins (O) uninhibited (C)

ただし第5文型(SVOC)ではなく、第3文型(SVO)にCが付加されたと考えるのが正しい解釈。つまり、このCはOではなくS(ここではto produce ~の意味上の主語であるthe cell)を説明していると考える。

ⓐHe visited her mansion unasked.

これもSVOCだが、第5文型ではない。第3文型にSを説明するCが付け足されたものと考える。

ⓑHe visited her mansion.(SVO)「彼は彼女の邸宅を訪れた」

He was unasked.(SVC)「彼は招待されていなかった」※Heunaskedの関係

この2つの文を合体させたのがⓐだと考えると分かりやすい。

He visited her mansion unasked.(SVOC)「彼は招待されていないのに彼女の邸宅を訪れた」※Heunaskedの関係

本文に戻ると、

the cell to continue to produce bad proteins uninhibited「細胞が妨げられることなく悪性たんぱく質を作り続ける」※the cell=uninhibitedの関係

ここまではいろいろな専門用語が出てきて難しい印象を受けるかもしれないが、それらの専門用語について何も知らなくても(私がそうです・・・)、英語そのものを正しく読む力があれば、

⒜lysosomeによって細胞全体が酸性になる

⒝glutaminase-1 (GLS-1)によってammoniaが作られる

⒞アルカリ性のammoniaが、酸性になった細胞を中和する

⒟細胞は死ぬことなく(これがsenescent cell「老化細胞」)悪性たんぱく質を作り続ける

という話の流れを捉えることは難しくないはず。

Nakanishi came up with the idea of destroying senescent cells with a substance that inhibits the activity of GLS-1 and thus blocks them from neutralizing, meaning functional lysosomes can clear out the buildup of bad proteins. In his experiments, old mice given GLS-1 inhibitors had rejuvenated, with their ability to hold on to a bar being significantly extended from 30 seconds to 100 seconds.

come up with ~「~を思い付く」。themの指すものをGLS-1と考えるのは注意力の問題だし、もちろんそうした注意力不足は基本的な英語力の不足を露呈してしまっているとも言える。「themの指せるものは複数形」という中1レベルの知識を正しく使えば、

them=senescent cells

と正しく考えられるはず。英語力と言うと、勢い「どれだけたくさんの単語を知っているか」という話になりがちだが、どれだけたくさんの単語を知っていても、

them=GLS-1

という誤読をしているようでは、基本的な英語力があるとは言い難い。上のから、GLS-1が無ければも成立しなくなる。つまりGLS-1の活動を抑えることができれば、酸性になった細胞が中和されて老化細胞になって悪性たんぱく質を作ることはなくなり、その細胞はそのまま死滅することになるということ。meaning以下は分詞構文。

miceはmouseの複数形。GLS-1 inhibitors「GLS-1を抑制するもの」は、⑬のa substance that inhibits the activity of GLS-1のこと。rejuvenate「若返らせる」Cf. juvenile「未成年の」。with their ability ~ being ~は「付帯状況」。

A young mouse can keep holding a bar for about 200 seconds, according to the researcher, who noted that, in human terms, this had the same effect as a septuagenarian’s physical function improving to the equivalent of a 40-something.

note「述べる」。in human terms「人間の観点から」とは、「人間に置き換えて言うと」ということ。septuagenarian「70歳代の人」。sept-はsevenと語源的に関係がある。SeptemberのSept-もやはり「7」を意味しているが、なぜ「7月」ではなく「9月」を意味するようになったのかについては☞ブログ#22。数字の後に付く-somethingは「~歳代の」という意味を表す。老齢のマウスにGLS-1を抑制する薬剤を投与したら、棒にぶら下がっていられる時間が3倍以上に増えたが、これを人間の場合に当てはめて言うと、70歳代の人の身体機能が40歳代の人のそれに匹敵するくらい向上したようなものだと言っている。the same ~ as ...「・・・と同じ~」は基本熟語。asの後ろはimproving ~が中心。つまりここではimprovingは現在分詞ではなく動名詞と考える。a septuagenarian’s physical functionは動名詞の意味上の主語。that節の中だけ訳すと、「これを人間に当てはめて言うと、70歳代の人の身体機能が40歳代の人のそれに匹敵するくらい向上する効果があった」。

The team at the Institute of Medical Science is looking into substances that might one day be used in anti-aging drugs.

Another substance Nakanishi is pinning his hopes on is PD-L1, a protein expressed on the surface of cells. When PD-L1 binds to another protein called PD-1 on the surface of T-cells, which are immune cells, it suppresses their function, thus preventing them from attacking harmful cells.

pin one’s hopes on ~「~に希望をピン留めする」→「~に希望を託す」。expressはここでは生物学の用語で「発現する」。

thus=in this way。

Immunologist Tasuku Honjo won the 2018 Nobel Prize in Physiology and Medicine for his discovery of PD-1 and its function as a T-cell brake, and therapies based on his discovery — which uses anti-PD-1 antibodies — have proved to be effective in the fight against cancer.

Tasuku Honjo「本庶佑」は、京都大学高等研究院副院長・ 同医学研究科附属がん免疫総合研究センター長。wonはoneと同音。physiology「生理学」。forは「理由」。brakeは日本語の「ブレーキ」の語源。ここでは「抑制するもの」。コンマの後ろのandは、Immunologist ~brakeとtherapies ~ cancerという2つの文を結んでいる。関係代名詞whichの先行詞がtherapiesではなくhis discoveryであることを教えてくれるのが、usesの3単現-s。・・・のはずだが、ここは文意から考えてwhichの先行詞は複数形therapiesのはず・・・。つまりusesは誤記でuseと書くべきところ。PD-1をターゲットにした抗体(antibody)を利用(use)するのは、his discoveryではなくtherapiesのはずだから。haveの主語はtherapies。

Nakanishi theorized that the T-cell activation may be hindered in senescent cells as well and applied the same approach to them. The study showed that mice given anti-PD-1 antibodies saw their senescent cell count decrease.

activationは化学用語で「活性化」。as well=too「~も」。

mice (S) ~ saw (V) ~ count (O) decrease (C)。count「総数」。このseeは「目で見る」ではなく「経験する」。「PD-1をターゲットにした抗体を投与されたマウスでは老化細胞の総数が減少したことが、研究によって示された」。

He says his research is progressing. For anti-PD-1 antibodies, he hopes to launch a clinical trial in the next fiscal year; for GLS-1 inhibitors, within the next three or four years.

For ~「~については」は「関連」を表す。For further information, click here.「さらに詳しいことについては、こちらをクリックしてください」。clinical trial「臨床試験(治験)」。

for ~はやはり「関連」の用法。within以下にSとVが見当たらないことから「省略」が起こっていると考える。

For anti-PD-1 antibodies, he hopes to launch a clinical trial in the next fiscal year

for GLS-1 inhibitors, _ within the next three or four years.

赤字のfor ~の類似性、in ~とwithin ~という「前置詞+名詞」(しかも名詞はどちらも時間表現)の類似性から、

for GLS-1 inhibitors, he hopes to launch a clinical trial within the next three or four years.

と復元できればOK。ちなみに、この「同一表現の省略」を可能にしているのがセミコロン(;)の使用。セミコロンは原則として2つの文を結ぶが、その2つの文は対照的な内容を表すことが多い(☞ブログ#11#116)。ここでは、

For anti-PD-1 antibodies↔for GLS-1 inhibitors

in the next fiscal year↔within the next three or four years

の2つのペアで対比があることになる。「中西氏は、PD-1をターゲットにした抗体については来年度中に、そしてGLS-1を抑制する物質については今後3・4年以内に治験を始めたいと考えている」。

There are hurdles in developing anti-aging drugs using these substances, however. Since aging is not considered an illness, he says it’s impossible to do clinical trials on healthy individuals. For starters, he plans to target diseases that arise from aging but that currently have no drugs to treat them, such as chronic kidney diseases and lung damage.

hurdle「ハードル」は日本語の「ハードル」と同じように「障害・困難」の意味もある。using these substancesは分詞構文でdeveloping ~を修飾。

Sinceは「理由」。

For starters「まず手始めに(to start with)」。ariseとriseは、見た目が似ていて紛らわしいが訳し分けが必要。arise=happen。butの後ろのthatは関係代名詞で、先行詞はdiseases。つまりdiseasesという名詞は、that arise from agingとthat currently have no drugs to treat themという2つの関係詞節によって修飾されている。to treat themは、直前の名詞drugsを修飾する形容詞用法。chronic☞ブログ#131。kidney「腎臓」。

“At present, in drug development, we must target diseases,” he says. “But if we create drugs and use them clinically, we may see improvements in diseases where aging is expressed. In the long run, we may see a day when such drugs can be used to prevent aging.”

at present=now。現在の医学では、薬剤を開発するには病気がターゲットとして存在している必要があると述べられている。なぜこんな当たり前のことを言っているかといえば、㉕に書かれていたように、老化(aging)そのものは病気(illness)ではないので、老化自体を抑制する薬剤を開発することは難しく、現在のところは「老化によって引き起こされる病気をターゲットにした薬剤を開発せざるを得ない」からである。

clinically「臨床的に」とは、「実際の患者に対して」ということ。whereは関係副詞。express☞⑯。

in the long run「長い目で見ると、結局は」。see「目で見る→経験する(experience)」。I never thought I would see this day.「こんな日を迎えようとは思いもしなかった」。whenは関係副詞。今はまだ「老化そのものを抑制する薬」は開発できないかもしれないが、「老化に伴う病気を治す薬」の開発が進めば、いつかは老化そのものを抑制できる日が来るかもしれないと述べられている。

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